茶会の終幕
読み返してみると一万文字軽々とオーバーしてて目を剥きました
やっちまったぜ(ドヤ顔)
「――その提案、断らせてもらう」
「――――」
まるでこちらを見定めるかのような眼差しで『賢者』は俺を凝視する。
その瞳に宿った感情をあえて言語化するのなら、驚愕五割納得五割っていう塩梅だな。
驚愕は理解を示したのにも関わらずそれを棒に振ったこと。
納得は単純に俺の性格を考慮したのだろうと推測できる。
「――理由を、問おうか」
「理由? そもそもの話、ルインの野郎が俺たちに危害を加えないって一体全体どうやって証明するんだ?」
「――――」
「知ってるか? 魔王の取引を承諾した勇者の行きつく先は紛うことなきバットエンドなんだぜ? 今更騙されるかよ」
もちろん、それだけが理由じゃないんだけどな。
まぁ、今は一々説明するのも面倒臭いので、最低限の情報を、開示するだけに留めておいてあるが。
「理解に苦しむね。 何故、頷かない? それほど主に怨恨でも?」
「いいや。 単純な話だよ」
「――――」
「――沙織が、そう望んでいる。 これ以上説明いるか?」
「……いや。 不毛だね」
「おっ。 やっぱ短気だけど『賢者』なだけあってそれなりに理解力もあるね。 いやー、立派なことだ」
「それは挑発かい? だとすれば今更感は拭えませんが?」
「挑発に決まってるだろ」
いっそ堂々と宣言する俺を一瞬忌々し気に睥睨したあと、メィリは社畜なサラリーマンを彷彿とさせる重苦しい溜息を吐いた。
意外と苦労しているのかもしれない。
「やれやれ。 ならボクがこの交渉に出せるカードはたった一つ――『創造魔術』さ」
「――。 あんたは、何を望む?」
「もちろん、ボクのことの口外を禁じる。 これさえ守れれば十分さ」
「……理解に苦しむな。 例え今この場で俺がイエスと答えたところで、『ルール』に適用されていていない言葉は何の抑止力にもならない。 当然、『賢者』殿がその程度のことを理解できていないわけないよなぁ?」
「当然だよ。 しかしキミのその愚鈍な思考回路にはつくづく呆れさせられる。 忘れたのかい、ボクの魔術を」
「あぁ……」
納得しましたとばかりに両手を宙へ上げる。
「契約魔術。 ボクがゼロから作り出したオリジナルの魔術さ。 なにせこの世界ではほぼ不要なもんでね、ボクが最初で最後の使用者さ」
「それはそれは。 ……いいぜ。 お前のその提案、呑んでやってもいい」
「――。 それはそれは。 ボクとしては事が上手くいって満足だよ」
「そいつは結構。 ほら、さっさとやるぞ。 言っとくが俺の術式で不審な魔術は全部デリートdぇきるから騙してもあんまり意味ないし、無駄に警戒させるだけだからな」
「知っているよ。 キミのような面倒な相手にちょっかいなんて頼まれても御免だね。 まぁ、主の勅命なら話は違うけど」
「さいですか」
「――それで、君は何が欲しい?」
「――――」
躊躇も、遠慮も、その一切合切が不毛。
俺はなんら躊躇うことなく、その魔術の名を口にした。
「――。 キミ、正気?」
「おいおい、いきなりなんなんだよ。 いきなり正気を疑われるとは、俺ってどこまで不憫なんだよ」
「茶化さなでくれるかい? ――君が必要とする二つの魔術。 前者はまだ理解できるけど、二つ目の魔術はちょっと理解できないね。 そもそも魔術ってのは現世に干渉する規模が大きくなればなるほど消費魔力が大きくなるんだよ? ボクが君にそれを与えたところで、それを扱えなければ何の意味もない」
「あんたにわざわざ教える義務がどこにある? ほら、さっさとやれよ」
「……はぁ。 後悔しても知らないよ?」
「――――」
「最後に一つ。 ――この契約が終わり次第、さっさとその扉をわたって帰りたまえ。 これ以上ボクのシロに居座られても困るんだよ」
「同感だ」
そして、次の瞬間システムに抗う異質な魔力が荒れ狂った。
「――『誓約』。 ――『創造』。 ――『付与』」
「――一応、これで誓約も魔術の付与も終わったよ。 試してみたら?」
「お言葉に甘えて」
強引に情報が書き込まれたからか、少し頭痛のする頭を抱え、俺はメィリのお言葉に従って魔力を構築する。
するとそこらに生えていた健康的な草木が淡く発光すると次の瞬間ジャックと豆の木顔負けの成長速度で天へと伸びていった。
「「…………」」
その結果を少し愕然と見つめ、俺はちらっと横目で少し目を泳がせる『賢者』様へジト目を向けた。
「ナニコレ」
「……言っておくが、ボクの魔術はまず間違いなくキミに譲渡された。 つまり、問題は間違いなくキミにある」
「なんか釈然としねぇな」
「おそらく、保有する魔力が高すぎるからこのような惨状になったのだろう。 安心するといい。 一般人が使用すれば丁度いいサイズにまで成長を促すことができるよ」
「さいですか。 というか、あんたルイン陣営なのにそんなペチャクチャ喋ったりして本当にいいわけ?」
「本来なら即斬首さ。 だが、今回は主が許してくれたよ。 ――なにせ、叶わないのだからね」
「――。 どういう意味だ?」
「さてね。 言っておくがキミはボクに危害を加えることはできないよ。 別にやってもいいけど、その代わりキミ絶対死んじゃうぞ」
「……そうかい」
俺は一瞬メィリのしたり顔を見た瞬間殴打の衝動にかられるが、精神を総動員してなんとか抑え込む。
「――それじゃあ、じゃあな。 二度はないことを願いたい」
「安心するといい。 ――ボクもだよ」
互いに不敵な笑みを浮かべ、俺は一切の遠慮躊躇なくその扉を開き――愕然とした。
荒れ果てた大地。
凍てつくようなこの低温。
呑み込まれるような暗闇。
――扉の向こうには、見知らぬ光景が広がっていた
いつか余裕があったら「もしこの誘いをアキラが乗っていたら」というIFルートを執筆してみたいと思っております




