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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
二章・「アソラルセの剣聖」
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『創造魔術』と交渉のカード


 ちょび長め。












「『創造魔術』……詳細を教えろ」


「そう急かさないでよ。 ゴミ屑なんだから、ちゃんを分を弁えようね?」


「いっとくが、やろうと思えば一瞬でお前の顔面ザクロさながらのグロ光景に塗り替えることも容易いんだからな」


「それもハッタリ?」


 非常に残念なことにこれはマジだ。

 本気の身体強化を使えば冗談抜きに人類には到底不可能な行為も可能である。

 まぁ、まだしないけど。

 俺は灰同然の紅茶を飲み干しながら視線で続きを促した。


「――聞いてくれるんだね?」


「当然だろ。 知ってるか? 日本人って人としての常識はちゃんと守っちゃう誰かさんとは違う種族なんだぜ?」


「はいはい。 ――『創造魔術』。 これはこの交渉の重要なカードでもあり、なおかつ私尾が有する魔術でもある」


「ふぅーん」


「何だ。 驚かないのかい? ゴミ屑なら少しは目を剥くと思ったが」


「ご期待に添えられなくて残念至極だ。 で、続きは?」


 まぁ、とはいっても字面からしてある程度察しは付く。

 俺が欲しいのはその確信だ。


「ボクが扱う魔術『創造魔術』はその名の通り、ゼロからどのような難解極まりない魔術でも作り出すことができるんだよ。 まぁ、それでもそれを扱うのに莫大な魔力が必要とするからそこまで便利なモノじゃないんだけど」


「ハッ。 なんとなく本題が見えてきたぞ」


「ふむ。 物分かりが良いゴミ屑で助かる」


「だから何度も言うが俺はマゾじゃねぇよ」


「それは残念」


「――で、本題は?」


「やれやれ。 最近のゴミ屑は、冗談すらも真面に解することができなくて、非常に哀れだね。 ――ボクが君に提示するカード、それは『創造魔術』。 つまること、戦力強化に近い内容なのかな?」


「さぁな」


 『創造魔術』。


 こいつの言葉に嘘偽りがなければ、無条件でありとあらゆる魔術を扱うことができ、また創造することが可能となるのだろう。

 だが――それでは納得ができない点も当然ながら存在する。


「理解した、あぁ確かに理解できたさ。 だからこそ言わせてもらう。 ――だから何?」


「――――」


「一体全体、あんたの『創造魔術』とやらは俺にどのような利益をもたらすのか? ゴミ屑な俺にでも分かるようにハッキリと明確に説明して欲しいものだ」


「……はぁ。 まったく、本当に理解力が無くて心底哀れだ。 キミを生んだ母親はさぞかし愚鈍な女性だっただろうね」


「否定はしない」


「否定はしないのかい。 ――ボクの『創造魔術』はさっきも述べた通り、ありとあらゆる魔術を創造することができる。 もちろん、『付与魔術』もね」


「――。 そういうことか」


 理解を示し、俺は紅茶を飲み干した。
















 付与魔術。


 シルファーの肉親であるヴィルストが有する、反則級のチート魔術だ。

 その概要は万象の付与。

 どのような魔法魔術を付与することもできるし、やろうと思えば魔力を有さない現象であっても付与可能らしい。


 そして付与する対象は――生物無機物問わない。


「……なるほどな。 だから戦力強化なんていう言い回しをしたのか」


「そういうことだよ。 その愚かでボクには理解できない愚物さを持ち合わせているとはいえ、やればできるじゃないかい」


「それ素でやってるの? それとも俺みたく挑発?」


「? どうしてゴミ屑相手に挑発なんていう低次元な行為をしなければならないのかい? ボクに分かるように説明してよ」


「さいですか」


 うん、これはまず間違いなく素だよね。


 まぁそれはそれとして、どうしてメィリこと『黄昏の賢者』が『創造魔術』なんていうモノをカードにしたのかを理解した。

 『創造魔術』はありとあらゆる魔術を併用可能なので、それにより『付与魔術』を利用し俺に新たな魔術を授けようと。


 うん、言うまでもなく――、


「――反吐が出るな」


「――――」


「そもそもの話、俺が今更新しい魔術? どうしてそれに食いつくとでも?」


「おや、なら必要ないのかい?」


「――――」


「ほら、必要じゃないですか」


 沈黙を肯定とみなしたのか、したり顔でそう宣言するメィル。

 まぁ、確かにこのちびっこ『賢者』が言っていることは空虚な戯言なんかじゃないだろう。

 

「それもお前の主――ルインの入れ知恵か?」


「さぁ。 ご想像にお任せします」


「知ってる? 俺の国じゃあそれはイエスと同然の意味合いを持っているんだよ?」


「もちろん、ゴミ屑に言うまでも無くご存じだよ」


「あっ。 そこは認めちゃうの」


 流石にルインの動向を探ることはできなかったが、それでもある程度この世界に干渉しつつあることは理解できる。 

 本当に面倒なと重苦しい溜息を吐き出した。


「――それでは、お前は俺に何を要求する?」


「……認め難いが、君は我が主も認め、欲するほど有能な人材だ。 ――主は仰せだよ。 『僕に下れ』と」


「それによって生じる利益は?」


「ほう……」


 即答し詳細を聞く俺を興味深げに見定めるメィリ。


「断らないのかい?」


「あんたの言葉次第だな。 俺は別に正義の味方とかそんな恥ずかしい存在なんかじゃないから、結果を叩き出せるのなら割と手段は選ばんよ。 ――で、答えは?」


「主は、もしキミがこの誘いに乗った場合これ以上キミとその一派に危害を加えないことを約束し、同時に大貴族でさえも羨むような金銀財宝を分け与えてもいい、だろうだよ」


「ふぅん。 じゃあ、俺は何すればいいの?」


「意外と前向きだね。 まぁ、ボクと同じ仕事さ。 世界の均衡を守り、殺し過ぎない程度の戦乱を常に巻き起こす、君風にいうならば『管理者』だよ」


 なるほどな。


 現状俺たちが敵対しても左程利益は生じず、仮にルインを奇跡的に打ち倒すことが叶ったとしてもそれによって生まれる利益は『神威』程度のモノ。

 確かに『神威』は強力極まりないアーティファクトだが、それでもルイン討伐で浪費した戦力とつり合いがとれているのかと問われれば首を傾げざるを得ないだろう。


 しかしこの誘いに乗り、同盟に近い状態となれば無駄に兵力を消費することもなく、誰も悲しまずに沙織たちは平穏な日々を送れるのだろう。

 確かに、思わず寄り縋ってしまうほど魅力的な提案だ。

 だが――、


「――その提案、断らせてもらう」




 

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