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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
二章・「アソラルセの剣聖」
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天衣無縫


 そろそろ異能の制度を消しちゃおうっかなって思ったけど、それだと色々と成立しないモノもあるのでややこしいですがこの制度は残っちゃいます。


 無念なり。


 多分この第三部か最悪bパートで理解できると思います。 そう、なんだか忘れられた文字通り奴の片割れのことです。









 猛然と大気を揺らめかせながら、燃え滾る爆炎が襲い掛かってくる。

 さすがは『黄昏の賢者』といったところか、その威力は軽くシステム時代最高の『インヘェルノ

』を超越している。

 俺でも、直撃すれば無傷で済むことは流石に厳しだろう。


 そう、当たれば。


「――【天衣無縫】」


「なっ――」


 迫りくる火炎の渦が、俺の右腕に触れた瞬間、その存在を無情にも否定され、灰となって消え去る。

 俺の『消去』は、字面だけならばかなり物騒な魔術なのだが、このように割と応用も効くのである。


「どうして――」


「おいおい。 まだ分かんないのか? あっ、御免ね? もうババアだから、その貧弱極まりない脳が理解できなかったんだよね? いやー本当に御免ね!」


「――――!」


 花が咲くような曇りなき笑顔で謝罪する俺を何故か憎々し気に睨む。

 なんだろう、また俺なんかやっちゃいましたっていえばいいのだろうか。


「まぁ、流石にこれでそのお飾り同然の頭でも理解できたな? つまること、俺の魔術を使えば核爆弾でも防げるってわけ。 この程度の火炎わけないさ」


「――――」


「それはそうと、名誉棄損罪とか言っている常識人(笑)が理不尽にも暴力を振るって許されるんですかねぇ? 心底疑問だなぁ」


「貴方が挑発したから――」


「勘違いするなよ。 もし俺がからかうことが大好きのどこにでもいる一般ピーポーだったらまず確実に灰になっていたからな? 未遂は未遂でも殺人だ。 刑務所にぶち込まれる楽しみにしていてくださいッ!」


「――――」


「さてさて。 まぁ、ぶっちゃけるとこれは証拠にはならない。 俺の【天衣無縫】は不便利でねー。 存在を否定しちゃうから、映像に残したとしてもそもそも消えちゃうの。 使い勝手悪いでしょ。 しかも燃費もめちゃくちゃ悪いときた。 あんまり使いたくないねー。 まぁ、いたけない少女を消すくらいなら楽々なんだけど」


「――――」


 今まで散々喚いていたメィリが押し黙る。


 俺の言葉から漠然とその真意を理解したのだろう。

 そう――これは紛れもなく脅迫だ。

 現状、メィリが転移でも使ったとしても俺は転移という魔法概念自体を消去すればいいだけのこと。


 必然、逃げられないんだよなー。

 生殺与奪の権は俺が握っており、『賢者』殿を生かすのも殺すのも俺の意思次第っていうことなんだよね。


「――貴方は、私の命と引き換えに何を望みますか?」


「実に簡単なことだ。 ――ただ、座って俺の話を聞いて欲しい。 いやー俺って新設極まりないよねー。 こんな酷いことをしたクソガキを笑って許せるし、エロ同人さながらの展開も要求しないんだから」


 ちなみに、後者の理由は単純な話沙織以外の人間は豚以下と認識しているかたである。 

 我ながら酷い、でも止めない。

 そんな俺に怪訝な眼差しを向けるメィリ。

 

「ほらほーら。 俺だってもうちょっと探偵ごっこをしたいわけよ。 それと、安心していいよ。 少なくとも今ここでお前を消したりするつもりはないから」


「……それは、一体どういう意図で?」


「ヒ☆ミ☆ツ。 教えて欲しいのならば――さっさと座れよ、豚」


 一瞬。

 ほんの一瞬、周囲に莫大な魔力を放出する。

 そして低い声でそう要求した俺の言葉に従い、再びメィリは椅子に座ったのであった。

















 ただ相手を殺すことなんて誰でもできる。


 それこそ会社で憎き上司に長々と説教を喰らっている時とか、幾らでもその無防備な面を携帯電話で血飛沫をぶちまけされることくらい誰でもできる。

 だが、それでもその選択しを選ばないのはそれでは合理的ではないから。

 本当に、ただそれだけなのだ。

 

 だからこそ今回、本来ならば三秒で消せる羽虫を殺さずあえて挑発し泳がせ、交渉の席につかせた。

 

「――――」


「さてはて。 どこまで話したっけ。 あぁ、リィール君のところらへんね」


 俺はつとめてにこやかな笑顔を絶やさないようにしながらも、慎重に言葉を紡ぐ。


「――メィリ・ブランド。 確か【守護者】の中じゃあ、お前は『黄昏』なんて呼ばれていたらしいな。 だったらもうちょっとこの世界の異名凝ろうぜ? それじゃあ飽きちゃうじゃないか」


「――――」


「だんまりか。 じゃあ、続きを話すぞ。 つまることお前は『守護者』の一員、つまりかの『厄龍』に立ち向かう勇敢な英雄だったんだよ。 だから当然――知っているよな、どうして幾つもの世界が存在するのにも関わらず、システムを維持できている理由を」


 俺は目を細めながらそう問う。

 

「――知りませんわ」


「アッハッハ。 面白い冗談をいうね。 もしかしてブラックジョークお上手? さぞかしウケなかっただろうな」


「――――」


「俺がお前のことを疑った最初の起因。 それはこの世界のシステム維持に関する」


「何を――」


「それを答えちゃ道化師失格でしょ。 知ってるかい? 道化師は最後の最後まで観客にトリックを悟られないようにするんだよ」


「――――」


 俺は再び紅茶と悪戦苦闘しながら、言葉を紡ぐ。


「それじゃあ無知で愚昧で愚鈍でどうしようもないお前のために俺が直々に教えてやるよ。 『神威システム』。 確かに凄まじい。 本来ならばなんの力ももたない非力な人間を異能者へと昇華する」


「――――」


「疑問に思わないか? ――そんなシステムを維持するのに、どれだけのエネルギーを必要とするのか、と」


「――――」


「答えは単純明快。 ――死者の魂を併用しているんだよ」


 不敵な笑みを浮かべ、俺はそう宣言した。



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