閃光の騎士
Bパート一部のプロット考えるの放棄してて今更構成に頭を悩ます作者。
我ながら計画性の欠片もない。
刹那、爆炎が猛威を振るった。
人の体温を遥かに超越する熱量が暴れ狂い、周囲一帯ののどかな景色を一瞬で焼け野原へと変貌させる。
しかし、龍の悪意はそれだけに留まらなかった。
「――――」
龍は猛烈な勢いで翼を巧みに操り、空中を滑走する。
龍の勢いは留まることを知らず、とてもじゃないが人間には目視できない速度で突如として巻き起こった惨劇に呆然とする人々へ肉薄する。
「に、逃げろぉッ!」
「何だよ、何で龍がこんな辺境にいやがるんだよ!?」
「とやかく言うな! さっさと避難しろ!」
「――愚かな」
人間とは、余りに矮小な生物だ。
個としての能力に決定的に欠如しており、故に余りに脆弱。
弱者を捻り潰す優越感は感じない。
例えるなら、近くを飛行していた蚊を潰したような感覚だ。
龍にとって、この惨劇はその程度に過ぎない。
「滅べ。 愚者よ」
「――――」
炎が、舞った。
何とか奇跡的に業火から逃れていた人々があまりに呆気なく灰と化し、黒煙を上げながら消滅していく。
逃げるどころか、息をする暇すらない猛攻。
当然それに矮小な人間が堪えられるはずがなく――、
「――終わりか」
いつのまにやらここら一帯に存在する気配は己一人のみ。
封印され、体が鈍っていないかほんの少しだけ懸念していたのだが、どうやらそれは杞憂だったらしい。
満足げに薄く嗤い、龍は次なる大地を滅ぼそうと――、
「――やれやれ。 世もや世もやだ」
「――――」
刹那、体の中に異物が侵入するような感覚に苛まれる。
久しい苦痛に少し頬を歪めるが、逆を言えばその程度。
「人間。 身の程を弁えろ」
「失礼。 だが私は、あくまで騎士としての義理と責務を果たしたまでだ。 貴様のような下賤の者にとやかく言われる筋合いはない」
「負け犬はよく吠える。 遺言は済んだか?」
「無論っ」
そして、青年――アメリア家騎士・シズ・エクアドルは静かに納刀し身を屈め、音速を超えた速度で龍へと肉薄してきた。
――自分は、運が悪いと思ったがここまでとは考えもしなかった
エクアドルは鋭利な刀を構え、身を屈めながらそう心中で吐露した。
あくまで、エクアドルがこの地に足を踏み入れたのは偶然が幾重にも重なったに過ぎない。
エクアドルは現代の帝王へ、突如としてこ世界に現れた経歴不明の者――〈来訪者〉について聞きに向かっていた。
これはアメリア家当主が秘密裏に決定したこであり、必然他者に知られるわけにはいかないという事情もありエクアドルはたった一人で帝国へと旅をしていたのだった。
こ辺境はあくあで中継地点。
物資の補給と休憩を兼ね、この村に来訪したに過ぎない。
エクアドルという青年は基本的に憶病な性格で、それでいて生物を無闇に切り刻むことを良しとしない男だ。
騎士へとなったのはあくまでなりいきに過ぎない。
故に、エクアドル個人としては別にこの村のために戦う義務は無い筈だ。
そう、エクアドル個人としては。
エクアドルは一人の男であるが、同時に一端の騎士でもある。
逃げるわけには、いかなかった。
「――抜刀術・【椿】」
「――――」
エクアドルは、納刀していた刀の柄を握り、足元の脚力を強化しながら、猛烈な勢いで大地を踏み締め、跳躍する。
ほとんど灰同然となった木の枝を足場にしながら、エクアドルは全身の意識を研ぎ澄ませ龍へと立ち向かう。
だが、当然迎撃が無い訳がない。
「――灰となれ、愚者」
「――――」
龍はエクアドルが跳躍し、空中を飛翔しているその瞬間を狙い、凄まじい熱量を誇る火炎を吐き出す。
本来、生物には空中を歩行する術はない。
その常識を組み込んだ龍の策は間違っていないだろう。
そう、それが三百年程前ならば。
「――感謝する、ルシファルス家」
「なっ――」
エクアドルが、足元へ魔力を込めた寸前、空中に緋色の輝きが灯る
すると足元に透明の足場が形成され、エクアドルが龍が吐き出した爆炎に吞み込まれる寸前、軌道を修正。
龍が有り得ない展開に瞠目する中、そんな彼に構わずエクアドルは更に二点ほどの足場を形成し閃光と化す。
「――――」
「くっ――!」
龍が己の間合いへ侵入するや否や、エクアドルは抜刀する瞬間すらも見せない素早い動きで抜刀する。
空中の足場を踏み込み、万力の膂力で龍の翼を薙ぎ払った。
(『龍を倒すには、まず翼を斬ろ』……まさかこんな形でガバルド団長の言葉が役に立つとは。 まぁ、あんまり役に立って欲しくなかったんだけど)
かつて、ガバルドは龍が空中を自由自在に泳ぎ渡れるのは翼に内臓された特殊な魔力回路が鍵となっていると。
何度も龍を屠った団長がそう宣言するのだ。
まず間違いないのだろう。
だが――、
「なっ――」
「――余り舐めるなよ、小童が」
刀ごしに伝わってきた鋼鉄にでも弾かれたような感触。
――不味い!
魂が警鐘をけたましく鳴らすが、時すでに遅し。
「――――」
次の瞬間、吐き出された爆炎が宣言通り愚者を呑み込んだ。
エクアドル君のイメージは東京なグールReのちょっと気弱バージョンなウリウリです。
あんま似てないけど。




