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まだ苦しいとは感じない

 


 魔女は寿命が長い

 そして成長が遅い


 人間に怪しまれないよう、頻繁に引っ越す


 そこにも春に引っ越してきたばかりだった

 海の見える街だった



 お姉ちゃんは身体が弱かった


 その夏を越せなかった


 もう60年は生きていた

 人間と同じくらいに


 だけど

 私達からしたらまだ若くて

 人間から見ても、20歳にならないくらいに見えた



 お姉ちゃんは、病んでいたわけではなかった

 だけど、身体の何処かが壊れてしまった



 私の作ったぬいぐるみを抱いて

 静かに静かにこの世を去った


 私は始めて魔女が死ぬところを見た

 何も残らない


 さぁっ、と

 風が吹くように灰になり

 その残り香もすぐに消える


 後に残ったのは、クマのぬいぐるみとお姉ちゃんのお気に入りのワンピースだけで


 魔女は墓に入ることすらできない



 ワンピースとぬいぐるみを裏庭の木の下に埋めて

 そのまま私はそこを去った



 ひとりになったことを認めたくなかった


 あまりに何も残らなかったから

 今も隣をお姉ちゃんが歩いているような気がする



 この街をずっと忘れない

 200年でも300年でも




 ーーーまだ苦しいとは感じないーーー











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