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東方交鏡録  作者: シン
6/10

記憶を辿る白き者~心の内を知る者達~


~アンス Side~


「てゐ?うどんげ?何か言い残すことはあるかしら?」

「「本当にすみませんでした!!」」

「まぁ、客人を10分近くほったらかしてどったんばったん走り回ってたらこうもなるよね」

「ほったらかされた当人は私たちでしょうが」

「ほんとごめんなさいね。このバカ二人は後できつくお仕置きしておくから」

「別にいいわよ。用事が早く終わっても、もう一組のどたばたが終わらない限り帰れないんだから」

「あの二人もよく飽きないもんね~。俺だったら途中でだれちゃう自信があるわ」

「あなたのその気楽さを分けてあげてほしいものね」

「こいつは気楽っていうより能天気って言うのよ」

「わ~ひっどい。さとりさんに告げ口してやろ」

「はいはい痴話喧嘩は後で」

「誰がこんなやつと!」

「や~ん恥ずかしい。ご近所さんに噂されちゃうわ~」

「あんたもあんたで変な乗り方しない!」

「で、結局今回の目的はなんなわけ?」

「地霊殿のお薬のストックを貰いに来ました~」

「分かったわ。じゃあ用意するから少し待っててちょうだい」

「はいは~い」


 先ほどの入り口のどたばたから数分。予想通りというかなんというか、そこそこ待たされた俺たちは二人は結局永琳さんに出迎えられ、現在に至るというわけだ。ちなみに現在そのどたばたを起こしたウサギ2名は泣きそうな顔で正座している。まぁこのくらいは自業自得ということで甘んじて受けていただきましょうかね。


「あぁ、なんだ……騒がしいと思ったら、ずいぶん珍しいのが来てたみたいだな」

「その言い方失礼だって思わない?うわ、思ってないんだ」

「まぁあんただもの、仕方ないわね。久しぶりね、ローディ」

「本当に久しぶりだ。前回の宴会以来だからな……まぁ、こちらとしてはそれくらいの方がちょうどいい。静かな方が身体に良い」

「相変わらずお身体はよろしくないのね~。大変ですこと」

「そういうのと無縁のあんたが言うと一層憎たらしいわね」

「永琳さ~ん。ついでに天子の性格が丸くなる薬って無いですか~?」

「無いに決まってんでしょ!ケンカ売ってるわけ!?」

「あぁもうやかましい……待ってる間くらい静かに出来ないのか……」

「ほ~ら怒られたぞ天子。静かにしないとダメだろ?」

「~~っ!……ふぅ……後でさとりに報告しとくわよ」

「そんなことしたら俺が怒られちゃうかもしれないじゃ~ん」

「そのために決まってるでしょ」

「まったく……こっちは昨日の今日で疲れてるってんだ、静かにしておいてくれ……」

「ん?もしかしてまたローディが必要な事件でもあったの?」

「そこの正座ウサギ2号がまたやらかしてくれたからな」

「なるほど。こういういたずらするのがいると大変ですなぁ」

「その言葉ソックリそのままあんたに返ってるの分かってて言ってるのよね?」


 天子から言われたひっどい言葉はさておき、今話に入って来たのはローディ。俺みたいに別の世界から来た人間で、かなり細身……というか、もはや栄養失調を疑うくらいだけど、本人としてもこれ以上は体質で太ったり出来ないので悩んでいるそうだ。その虚弱性もあり、いつでも対応できるようにと永琳さんの計らいでここに住んでるらしい。まぁ、もう一つの理由として、ローディの能力も関係してるわけだけど。


「にしても、記憶を読み込むだなんて、改めて考えるととんでもない能力よねぇ。相変わらず恐ろしい」

「お前が言うな」

「どっちもどっちでしょうが」

「あ、あのー……そろそろ足が限界なんですけど……」

「く、崩しちゃダメかな~、なんて……」

「まぁ、反省もしてるみたいだしこの辺でいいかな。ただ、俺たちは許しても永琳さんからのお仕置きは覚悟しておいた方がいいよとだけ」

「はい……あの、本当にすみませんでした……」

「鈴仙が悪いんだからねー。あんな風にはしゃぎ回るから~」

「はいはいそうね。私が悪かったわよ」

「ここで言い返して、もっと騒いで怒られた前の教訓を生かしてるみたいだな」

「からかわれて急いで否定してどツボにはまるどこかの橋姫みたいね」

「素直になれば皆ハッピーなのにな~」

「お前は素直すぎる。もう少し言動を考えろ」

「最近俺皆から酷い言われ方してない?」

「「自業自得だ(よ)」」

「悲しくなっちゃう」


 なんだいなんだい。皆して酷い言い方してくれちゃってさぁ。そりゃまぁ確かに思ったこと口から出してるってのは否定しないけどもさ……。まぁそんな脳内反省会は後にして、ローディの能力だけど、こっちの世界風に言えばさっきの通り『記憶を読み込む程度の能力』。ザックリ言うと、相手の記憶を見ることが出来る。条件を指定すればその期間の記憶を見られるし、指定しなければ新しい所から順に早戻しのように記憶を遡っていく。本人が忘れたことでも見ることが出来るある種とんでも能力だ。いくつか制限があって、①相手に直接触れる必要がある。②集中が必要なので能力発動中は無防備になる。③能力を使うととんでもなく疲労が溜まる。④見られるのは1日日合計で1時間まで。翌日への持ち越しなども出来ず、連続した日で使うと疲労はさらに増える。⑤何らかの力で記憶に介入があった場合、内容は分からないが『介入があった』という事実は認識できる。とのことだ。俺の能力と比べると取り回しが難しい代わりに、確実性は大幅に上がってるから、てゐみたいなイタズラが好きなのからしたら天敵のような存在なわけだ。ちなみに俺も一度それでイタズラがばれた。


「あ、そうそう。やっぱりさとりさんの記憶を見てもらうのはダメなわけ?」

「出来ることなら俺もあまり使いたくは無い……。プライバシーにかかわる部分が大きいし、何より疲れる……」

「前もそんな風に言ってたけど、具体的にどんくらい疲れんの?」

「そうだな……5分見たらマラソンを1時間ぶっ通しでやったくらいか……」

「うっわ、きつい。確かにそりゃあやりたくないわな~。でも、そこをなんとか頼めない?」

「あんたがそこまで言うなんて珍しいわね。まぁでも、私としてもさとりが悩んでるのは嬉しくないし、見てもらいたいところではあるのよね」

「まぁ、そこまで言うのなら一応考えておこう。今度の宴会の時にでもな」

「お、サンキュー!」

「ただし、当人がそれを望んだ場合の話だ。そこまでして思い出す事も無いと考えているのなら、俺は何もしない。いいな」

「オッケーオッケー!いや~、やっぱりローディは話が分かるね~」

「っていうか、次の宴会っていつなのよ」

「1週間後よ。今紫の所で新しい子を預かってこの世界の事をいろいろ教えてるらしいわ。はい、これ薬ね」

「ありがとうございま~す。にしても1週間後か~。思ったよりも早いし、帰ったらすぐさとりさんに言っとかないとな」

「どんどん増えてくわね。紫んとこにいるって事はまた変な能力持ってるんでしょうし」

「だろうな……っと、外の音も収まったようだし、そろそろ帰れるんじゃないか?というか帰ってくれ。もう疲れた・・・」

「客に対して帰れなんて、なんて酷い先生なんでしょ!失礼しちゃうわ!!」

「あはは……てゐのせいで今日は疲れちゃってるだけですから。ね、ローディさん?」

「いや、それと別でこいつらは俺と相性が悪い……」

「こいつと一緒にされるのは私としては非常に腹立たしいのだけど?」

「やーい同類~」

「うっさいわね!」

「そういうところよ、天子」

「ほら、分かったらさっさと帰れ。帰らなくても俺はもう寝る」

「はいはい。帰りますよ~だ。あ、さとりさんの件、もしかしたら頼むかもだから、そん時はよろしくな~!」

「まぁ、善処はする」


 そんな風にだるそうにしながらローディは奥へと消えていく。ほんっともやしというかなんというか……。永琳先生も大変だろうなぁとか思うけど、なんだかんだ気に入ってるみたいだし。それに、一度かまかけてみたら、ローディはなんとも無かったけど、鈴仙の方はちょっと反応ありって感じだったんだよなぁ~。これは今後に期待だ。そんな風に思いながらも皆さんに挨拶しながら外に出ると、そこには若干だけ服がボロっとした妹紅がいた。別に鼻の下伸ばしたりしてるわけじゃないけど天子から睨まれた。お前は俺の彼女か。


「わりぃな。あのバカが突っかかってきたせいでちょっと遅くなっちまった」

「それに乗るアンタも同類でしょうが」

「こら。機嫌損ねたら案内してもらえないぞ?そういうのは出口まで案内してもらってから言うんだ」

「案内しなくて良いんだな?じゃ、あたしはこれでな」

「冗談だってば妹紅さ~ん。ね?ごめんなさい!このとーり!」

「よくもまぁそこまで白々しく出来るわね」

「はいはい。んな平謝りは良いから、帰るならさっさと行くぞ。また絡まれるとめんどくさいしな」

「わ~い。妹紅のそういう雑ながらも構ってくれるとこだ~い好き」

「ありがとさん」

「良かったわね。眼中に無いらしいわよ」

「そこで良かったわねって言われる俺は一体何を望んでると思われてるのか」

「聞いてみたら?」

「何を望んでると思ってるの?ちょ、一人で寂しい生活なんて望んでないから!!むしろ真逆だから!!」

「ほんと騒がしいなお前らは」

「騒がしいのはこいつだけよ」

「それに雑ながら構ってるお前も大概だってことだよ」

「天子はツンデレだからな~」

「違うし例えそうだったとしてもアンタにデレの部分を見せることは無いから」

「ほんとに~?うわほんとだ。酷い」

「なんで嘘言う必要があんのよ」

「照れ隠しとか?」

「はんっ」

「鼻で笑われた……」

「飽きねぇなお前ら……」


 妹紅が少し……いやかなり呆れた目をこちらに向けて来るけど、そんなことじゃあへこたれない。というかそのくらいで済むんだから驚きだ。普通さ、もっと距離取ろうとしたり、嫌がったりするもんじゃない?ここの人間……いやまぁ人間じゃない方が多いけど、ここに住んでるのって、その辺の感覚がずれてるというか……。嫌ではない、むしろ嬉しいくらいだけど、こんな得体の知れない相手とよくもまぁ普通に接せられるもんだよ。まぁ、だからこそこっちの世界に送られたのかも知れないけども。そんな風に考えながらグダグダと話してる内に、気付けば入り口に到着していた。


「はい、到着と」

「いや~ありがとう妹紅!このお礼は今度の宴会で返すから」

「ま~たそういう考え無しの発言して」

「別にいいよ。前にも言ったとおり、感謝の言葉一つだけで十分だ。まぁ、何かくれるってんならありがたくもらうけどな」

「きゃ~カッコいい。俺が女の子ならファンになってた」

「あんたが女になったら……いや、ダメね。多分イライラが増すわ」

「ひっど~い。失礼しちゃうわね!」

「止めてくれ、命蓮寺のあいつを思い出す」

「そういえばあんた気に入られてたっけね。まぁ……あれはそうね」

「フィリーちゃんも能力とか性格とかめちゃくちゃ良いんだけどなぁ~。あの体格と喋り方で絶対損してる」

「それはそうなんでしょうけど、インパクトの強さは絶大よね」

「お前らは良いよな。割と普通の側だしな」

「妹紅はモテモテだからな~。羨ましい限りだよ」

「よーしそこ動くな?弾幕10発で勘弁してやる」

「天子さんヘールプ」

「自業自得よ」


 その後なんやかんや3発で事なきを得た後、直撃した腕の痛みで泣きそうになりながら妹紅とお別れをして地底への帰路に着く。地底の入り口で天子も今日は帰ると言って帰って行った。というか元々帰る予定ならわざわざ入り口まで来なくても良かったんじゃ?と思った所で、これが天子のツンデレのデレの部分か!!と一人で結論付けて少し気分回復しながら地霊殿へと向かう。途中でキスメちゃんやらヤマメさん、パルスィに変な目で見られたけど俺はくじけない。

 次の宴会で、出来ることならさとりさんの記憶回復の糸口になればって思うけども、はてさて……。まぁ、本当にもしもの時には……うん、その時考えよう。


~Side Out~


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