神をも恐れぬ粗暴なる者~人を嫌うヒトの子~
~諏訪子 Side~
「早苗~。お茶まだ~?」
「はいは~い。今お持ちしますよ~」
「早苗~。お煎餅切れちゃった~」
「一緒にもって行きますね~」
「早苗~。そろそろ傷薬用意してあげて~」
「もう用意してあります」
「うわっ、なんかここだけ急に態度が変わったんだけど」
「気のせいですよ~」
今は家の縁側でゆっくりお茶とお煎餅をいただきながら、神奈子ともう一人、半年ほど前から我が家に来た居候君の修行を眺めてる。とは言っても、彼の能力の関係上、あんまり修行にもならないって気もするんだけどねぇ。ちなみに早苗はさっきから薬箱持ってスタンバイしてる。よっぽど気に入ったんだなぁとか思ってる内に、どうやら一区切り付きそうだ。
「はっ!」
「ちっ……せぇい!」
「そんなんじゃ甘い……よっ!」
「うがっ!!」
「ふぅ……よし、今日はここまでにしとこうか」
「ここまでにしとこうか……じゃねぇよ!!ちったぁ加減しやがれ!」
「稽古つけてやってんだ。こんくらい我慢しな」
「おめぇらみてぇな人外と一緒にすんじゃねぇ!!大体!こっちのルールは弾幕ゴッコってやつじゃねぇのかよ!」
「基本はそうだが、そんなのお構いなしの奴らだっているさ。そんなやつから身を守るには、ちゃんと強くないとだろ?」
「だとしても、だ!俺の能力なら組み手を自分でするより、外から見てる方が効率がいいんだよ!なんで俺が実際にやらされてんだ!!」
「こういうのは実際に動いてなんぼだよ。いざって時動けませんなんて言われたって困るしな」
「納っっっ得いかねぇ!!ぜってぇおめぇのウサ晴らしだろうが!!」
「そう思いたきゃ思ってな。早苗~あたしの分のお茶~」
「そこにありますからご自由にどうぞ。ミディットさん、大丈夫ですか?今お薬つけますから」
「あぁ、わりぃな。ったく、ここの神様ってのは、人間を大事にしねぇんだな。嬢ちゃんばっかり働かせてよぉ」
「それが私のお仕事ですから。神様にお仕えさせていただける。これはとても素晴らしいことです」
「その分返してもらえる恩恵ってのがあってこそ、だろ?あの二人が何か返してるのなんざ見たことねぇぞ?」
「ちゃ、ちゃんとやる時はやってくれますから!多分……」
「早苗~聞こえてるよ~」
「ひゃっ!ご、ごめんなさい!」
「いいんだよ。事実なんだから」
ったく、信仰心も何もあったもんじゃないんだから。あの口が悪いのがさっき言ってた居候のミディット。高めの身長に口の悪さも合間ってかなり年を食ってるように見えるけど、あれで20代前半だって言うんだからわかんない。そんなあいつの能力は『真似る程度の能力』。文字通り、誰かの真似をする能力だ。だから見てる方がいいってのは確かなんだけど、神奈子がどうしても直接やるって言ってね。
「あんたはもう少し神様を敬うってことが出来ないかねぇ。この家の家主でもあるんだよ?」
「それなら敬われるようなことをやってから言え。家主っつっても名義だけみたいなもんじゃねぇか。大体のことやってるの嬢ちゃんだろ」
「その早苗があたし達に従ってるなら、それは疑うべくもなく家主と名乗っていいわけだろう?」
「かっ!年を食ってるだけあって発想が豊富だなぁ。はいはい、そういうことにしといてやりますよ。か・み・さ・ま」
「よぉし表に出な。その曲がった根性たたきなおしてやる」
「お生憎、元から根性の入ってないやつに治せるほど俺の根性は軟じゃないんでね。真っ直ぐ一本根性入れてから言ってくれや」
「あ~りゃりゃ、言われちゃったね~神奈子」
「神様に根性を説くたぁ、本当にいい神経してるよあんたは。お陰でもう怒る気も失せたよ」
「そりゃ結構。んで、嬢ちゃんはこの後また人里に出て信仰集めだっけか?」
「はい。少しでも信仰を集めておかないと。いざという時大変ですからね」
「大変だな。こんなのの信仰を集めないとだなんて。ほんとよく頑張ってるよ」
「やっぱりケンカ売りたいんだね?そうならそうと言っておくれよ」
「はいはい。神奈子どうどう」
なーんでこんなすぐに険悪になっちゃうかな~ここ二人は。多分同属嫌悪に近いものだと思うけどさ。そういえば、ミディットの能力について少し補足すると、①実際に見た動きしか真似できない。②弾幕やスペカ、能力なんかは真似出来ない。③自分の身体能力を超える動きは真似出来ない。④記憶することを意識していないと能力として記憶されない。⑤一度記憶された動きは、能力開放中は本人の意思に関係なく適材適所で勝手に動く。とのことらしい。要は覚えようとして実際に見たやれる範囲での動きを、能力を使う事を意識してたら勝手に動く。そんな感じ。出来る範囲は決まってるとはいえ、一度動きを覚えちゃったら勝手に動くってのはすごいよね。
「っし、俺も久々に里に下りてみるか」
「え?一緒に来られるんですか?」
「なんだ?嫌か?」
「い、いえ!そういうわけじゃないんですけど、なんというか、意外だなぁと」
「確かに、ミディットってあんまり人のいるとことか行ったりしないもんね」
「まぁ、そうだな」
「なんだい?対人恐怖症かなんかかい?」
「そんなんじゃねぇよ。ただ、俺はおめぇらみてぇな人外は好きじゃねぇけど、それ以上に人間ってやつが嫌い、ってだけだ」
「で、でも、それじゃあやっぱり……」
「うっせぇな。嫌いなやつがいるところに行っちゃいけねぇルールでもあんのか!?ねぇだろ!だったらうだうだ言ってんじゃねぇ!」
「ちょ、ちょっと!早苗はミディットのこと心配して言ってるんだよ!?そういう言い方は無いんじゃない?」
「いらねぇお世話ってやつだよ。おら、さっさと準備しろよ。別におめぇが来なくても俺は一人で行くからな」
「あ、ま、待ってください!すぐ行きますから!」
そう言っていそいそと準備を始める早苗。そしてイライラとしながらも律儀に待ってるミディット。半年一緒にいるとはいえ、まだよく分かってないけど、悪い奴じゃないことは確かだ。それに、紫が言ってた『こっちに来た理由』ってのもまだ分かってないし……。まぁ、さっきの反応を見れば十中八九人間が関係してるんだろうけど……。こればっかりは、もっと心を開いてくれてから、だよね。
「すみません!お待たせしました!」
「いいよ。そんじゃ行くか」
「あんた。早苗を危険な目にあわせたら承知しないからね」
「俺が合わせるつもりがなくても、嬢ちゃんが勝手に合ったらそれは知らねぇからな」
「屁理屈言ってないで男ならビシっと守りな!!それでも腰に物は付いてんのかい!!」
「か、神奈子様!あ、あんまりそういう言葉は……その……」
「いいんだよ!こういうやつにはこのくらい言ったって!」
「なぁ、神様ってのはみんなこうなのか?」
「神奈子がぶっ飛んでるだけだよ」
「だろうな。じゃなきゃ信仰なんざ集まるわきゃねぇよな」
「み、ミディットさん!そ、そろそろ行きましょう!?ね?」
「そうだな。どっかの誰かさんのせいで余計な時間を食っちまったし、帰りは夜になっちまいそうだな」
「朝帰りとかしちゃダメだからね~?」
「へ?そりゃあお金勿体ないですし、野宿も危険ですから帰りますけど……」
「……お前ら、そういう教育くらいはちゃんとしとけよ」
「あ~……あたしらもここまでとは思ってなかったな……」
「うん。帰ったらちゃんと教えるよ……」
「え?な、なんですか!?教えてくださいよ!」
「いいから、さっさと行くぞ」
「あ、ミディットさん!?神奈子様、諏訪子様、行って来ます!ちょ、待ってくださいよ~!」
「「じゃんけん、ぽん!」」
「よっし!じゃあ任せたよ、神奈子」
「言い出したのはそっちの癖に……」
~Side Out~
~ミディット Side~
「おっせーぞ。早くしろ」
「ま、待ってくださいよ!この服、動き辛いんですって」
「ったく、本当に日が暮れちまうんじゃねぇのか?」
「だ、大丈夫ですって。普段から何度も往復してますから、どのくらいかかるか分かってますから」
「どうだかな」
今は嬢ちゃんを連れて山を下りてる所だが、いかんせんこの嬢ちゃんの足が遅い。信仰を集めるのが目的とはいえ、巫女の服ってのは明らかに山の移動には向いてないのなんざ分かるだろうに。そもそも普段から往復してるってんなら、向こうも顔を覚えてるだろうし、服装だってなんでも良いだろ。ま、この方が信仰が集めやすいってんならしらねぇけどな。……ん?
「風……」
「ふぅ……どうしました?」
「あの一箇所だけ不自然に木々が揺れた。風が吹いた気配もほとんど無い。ってことは、だ」
「……?」
「おい。そこにいんのは天狗だな。さっさと出て来い」
「あややや。ばれてしまいましたか。気配には気を付けていたつもりなんですがね」
「文さん。こんにちは」
「はい。こんにちはです」
「で、天狗が何の用だ。こっちは用事は無いから何も無いならどっか行きな」
「そんなつれないこと言わないでくださいよ~。美男美女のカップルが歩いてるから、写真を1枚いただこうとしただけじゃないですか~」
「か、カップル!?」
「結構だ。そもそもそういうのは本当のカップルに失礼だ」
「そ、そうですよね……」
「それに、明らかに似合ってないだろうが。適当なこと言って盗撮してる暇があったら里の人間事情でもパパラッチしてろ」
「あ、あのー……その辺にしときましょう?横の早苗さんが今にも泣きそうですよ……?」
何にショックを受けてるのか知らんが、俺みたいな人種と嬢ちゃんみたいなのが似合うわけねぇだろうが。神に仕える人間で、自分も半分神様みたいなもんで、人間で言えばまだ二十歳にすらなってない。それに比べて俺は、ただの人間であり、化け物だ……。ちっ、いらねぇこと思い出しちまった。
「知らん。事実を言ったまでだ。それより本当に何も無いならもう行くぞ」
「あああ待ってください!実は今、別の世界から幻想郷に来た方に話を聞いて回ってるんです!」
「今さらか?まぁいい。話すだけなら歩きながらでも出来るだろ。おい、いつまで泣きそうになってんだ。さっさと行くぞ」
「うぅ……はい……」
「鬼ですかあなたは」
「鬼はこんな角も何もねえ姿してんのか?」
「いやそうではなくて……ってそんなことは良いんですよ。聞きたいのは、この世界に来る前後の事です」
「……ちっ、さっさとしろ」
「最後にこの幻想郷に外の世界から人が来たのは約1ヶ月ほど前です。で、その人とつい最近話をしてきたんですけど、ここで少し気になる話を聞いたんです」
「気になる話、ですか?」
「はい。なんでも、この世界に送られる直前、何やら男性の声を聞いたと」
「あ?男の声だと?あのスキマ妖怪の声を聞き間違えたにしちゃあ、ずいぶんじゃねぇか?」
「いえ、紫さんの声はその後聞いて、明らかに違う声だとすぐに気付いたそうです。そして、男性でそんな能力を持ってる人は、今の幻想郷にはいないはずなんですよ」
「空耳だったんじゃねぇか?」
「まさか!世界を渡るなんていう一大事の時に、大事な情報である音を聞き間違えるなんて、普通は無いですよ!」
「じゃあそいつが普通じゃ無かったんだろ。俺はあのスキマ妖怪の声しか聞いてねぇし、こっちに来てからもそんな男の声は聞いちゃいねぇ」
「むむ……そうですか……」
「それにしても、本当に外の世界から来られる方が増えましたよね」
「はい。今までは数年に一回程度で流れ着く人がいて、それも何の力も無い人でしたが、ここ1年で一気に増え、その全員が何かしらの能力を持っています。これは何か大きな事件の前触れかもしれませんよ」
「はっ、ご苦労なこったな。こっちに連れて来られた当人は何も聞かされちゃいねぇ事件の解決、頑張ってくれや。じゃあな」
「あ、はい、それでは~。って待ってください!」
「んだよ。まだ何かあんのか?」
「大アリです!!是非ともお二人が山中デートをしている経緯を……」
ちゃんと聞こうとしてやった人の親切を踏みにじりやがったバカは置いてさっさと行くか。横では嬢ちゃんがまだ何か言ってるが、もうあのバカ天狗に構ってるのはこっちがバカみてぇだ。後ろから何か声が聞こえるがもう知らん。ったく、なんでこの世界の人外どもはこんなんばっかりなんだ。それともこの山の中だけか?……いや、そんなこともねぇな。
「あ、あの、いいんですか?文さん怒っちゃいますよ?」
「良いんだよ。こんな程度で怒るようなやつが新聞作ろうなんてのがおかしな話だ。当たって砕けて、数撃って当たったら儲けもん程度にしか考えちゃいねぇよ」
「そ、そういうものですかねぇ……」
「そんなに気になるなら嬢ちゃんが話してきてやったらどうだ?」
「む、無理ですよ!!そ、そんな、デート……なんて……」
「だったら余計な事は言わないこったな。くだらねぇ天狗の与太話に付き合って、時間も余計に食っちまったんだ。さっさと行くぞ」
「だ、だから歩くの早いですって!」
「そっちが遅いんだっての」
本当にとろいったらねぇな。仕事自体はテキパキとこなしてるが、あの服だとどうにも動きがおせぇ。やっぱり里でなんか新しい服を買えば……って思ったが、そもそもこっちの世界じゃあ動きやすい服なんてのがねぇのか。忘れられたモノが流れ着く世界。動きやすい服なんてのは早々流れ着かねぇよな。男も女も皆着物みてぇな服着てやがる。まぁ何人か例外はいるようだが。あのチビ神とかバカ天狗はスカートだし。ただ、この嬢ちゃんじゃスカートは無理だな。それこそ周りの目が気になって動けなくなるのが目に見えやがる。
「ズボンでもこの世界に流れてくりゃ、動きやすいだろうにな」
「あぁ~確かに思いますね。機能性ありますし、何より暖かいですし」
「ん……?そうか、そういや嬢ちゃん達もそういう世界からこっちに流れ着いたんだっけか」
「はい。元いた世界でお二人への信仰心が足りず、やむを得ずこちらの世界へと来ました。なので、こちらではそんなことが無いよう、こうして信仰を得るためにですね……」
「正しく信仰されてるかは別の話だがな」
「だ、大丈夫ですって!」
「そんなことより、嬢ちゃんがズボンを知ってるなら、自分で作ってみりゃあいいんじゃねぇか?」
「い、いえ。お裁縫は苦手というわけではないですけど、衣服となるとさすがに……」
「そうだな。それ着て外歩いてる最中にほどけて下着姿に、なんて起きたら、恥ずかしすぎて嬢ちゃんが死んじまいかねねぇ」
「うわ……想像しただけで寒気が……」
「だったら、確か人形使いの魔女あたりがそういうの得意だろうし、言ってみたらどうだ。こんなんだって口と絵で説明すりゃあ出来んだろ」
「そうですね。確かにアリスさんなら出来るかもしれません……今度言ってみようかな……」
たしかあの魔女は人形の服まで自分で作ってるって話だし、そのくらいなら訳無いだろうしな。それの見本を里の裁縫屋にでも渡して流通させりゃあ、利益の何割かをもらって、そのいくらかを魔女に礼として渡せばいい商売になるし、便利なもんを布教させたっつって信仰も得られるんだろうが……まぁ、この嬢ちゃんがそこまで考え付くわきゃねぇわな。善人過ぎるっつーのも考えもんだな。
「あ、あれ」
「あ?なんだ?里のガキかなんかか?」
「はい。何度か見た覚えが」
里の近く、山の入り口まで下りてきた所で二人組のガキを見つけた。俺達が通ってきた神社への山道とは別の、完全に森の中を見ながらどうしようかと顔を見合わせてやがる。大方、度胸試しでどっちが森の奥まで行けるかとでもやりたいんだろう。
「こら、あなた達。森に入っちゃいけませんよ?」
「あ、お姉ちゃん!で、でも、このくらい出来なきゃ男じゃないってコイツが!」
「あ!ずりぃぞ!お前だって立派な猟師になるなら山の中くらい分からなきゃ、なんて言ってたくせに!」
「こらこら、ケンカしちゃだめですよ。とにかく、森の中は危ないんですから、入っちゃだめです」
「で、でも……」
「いいじゃねぇか。やりたいようにやらしてやりゃあよ」
「み、ミディットさん!それでこの子達に何かあったら……」
「そりゃあこいつらの責任だ。いいか、ガキ共。度胸試し大いに結構。立派な大人になるために先に見とくのも大事なことだ。やりたいってんなら止めやしねぇ」
「ほ、ほんとに!?」
「あぁ、男に二言はねぇよ」
「よ、よーし……!」
「ただ」
「「?」」
「さっきちょうど下りてくる時に、この山の中に天狗を見かけたっけか」
「て、天狗!?」
「確か天狗は、山に勝手に入った子供をひっ捕まえて連れ去って、そいつを鍋で煮込んで食っちまうって噂だなぁ」
「な、鍋で煮て……」
「食われる……」
「それに、さっきから奥の方でガサガサと音がするし、狼かなんかの妖怪もいるかもしれねぇな。あいつらは大の男でも一発で噛み殺して、そのまま骨も残さずに食っちまうんだったか」
「ひっ……!」
「それに、この山は神の土地だからな。神を信仰してない奴が入っちまうと、出口を隠して二度と出れなくなる。ちゃんと信仰してりゃ、妖怪たちにも出くわさず、無事に帰してもらえるかもしれねぇって話だ」
「か、神様……」
「ま、おめぇらが信じるかどうかは好きにしろ、それでも入りたいってんなら止めやしねぇよ。ほら、どうすんだ?」
「や、止めておきます……」
「ちゃ、ちゃんと神様を信仰して、大人になってから来ます……」
「そうだ。しっかりと自分に出来ることを分かってるやつが、一番男らしいんだよ。分かったらさっさと里に帰れ。両親を悲しませるようなやつが、立派な大人になれると思うんじゃねぇぞ」
「「は、はい!」」
そう言ってガキ共は里に向けて走っていった。ったく、これだから何もしらねぇガキってのはめんどくせぇ。……。
「おい。何笑ってやがる」
「い~え。ミディットさん、子供に対しては優しいんですね」
「そんなんじゃねぇ!あれで死なれちゃ寝覚めがわりぃんだよ!」
「ふふふっ……それに、うちの神様の信仰も一緒に集めてくださいましたもんね?」
「はっ!それこそ知らねぇな!ガキ共を丸め込む口実に使っただけだ。どうせガキなんざ三日もありゃあ忘れるだろうよ」
「そういうことにしておいてあげますね~」
「……あんまり調子に乗ってっと引っ叩くぞ」
「ご、ごめんなさい!」
ちっ、やっぱり放っとくんだったか……まぁ、過ぎたことはもういい。ガキ共がいたってことは、里からはそう離れてねぇだろうし、さっさと行くか。里にはあのヤローがいたはずだし、宴会の一つでもやるようにそそのかすか。
「~~♪」
「なんだ」
「嬉しいことがあったら、鼻歌とか口ずさみたくなりません?」
「……」
「いった!なんで叩くんですか!」
「なんとなくムカついた」
「なんですかなんとなくって!」
「うっせぇ。もうすぐそこなんだからさっさと行くぞ」
「あ、だから早いですってばぁ!」
「知るか」
~Side Out~