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東方交鏡録  作者: シン
2/10

天と地の絆~その答えは誰の心に?~


~さとり Side~


「はぁ、最近退屈ねぇ」

「いいじゃないですか。平和は素敵なことですよ」

「そりゃそうだけど、これじゃ上にいる時と何にも変わんないわね」

「それでも定期的に遊びに来るんだものな」

「物好きなやつよねほんと」

「いや、あんた達もお邪魔してる側だからね?」

「固いこと言うなよ~。アタシたちの仲だろ?」


 今日も地底は賑やかですね。今は地霊殿の応接間に集まり、皆で団欒中です。いるのは私とお燐、この1年で仲良くなった天子さんに、彼女が来たのを聞きつけて来た勇儀とパルスィ、そしてもう一人。3ヶ月前に異世界から来て、今はうちで一緒に過ごしている……


「そうそう。それとも、お燐は嫌だったりするわけ?」

「あっ!ちょ、それずるい!」

「な~んだ。やっぱり嫌じゃないんじゃんか~。むしろ嬉しいくらいなんて、ツンデレなんだから~」

「お~?なんだなんだ~?来て欲しいなら言ってくれたらいいのによ。なぁ?」

「ほんと、あんたのその能力も酷いわよね……」

「褒め言葉と思っとくぜ~」

「ふふ、アンスさん、あんまりお燐をからかったら、後が怖いですよ?」

「おっと、気をつけますよ~」


 彼の名前はアンスさん。少しお調子者な性格で、どことなく遊び人なイメージのある男性です。彼も特殊な能力を持っており、この世界の言い方で言えば『答えを知る程度の能力』だそうです。内容としてはさっきの通り、誰かに何かを問いかけると、その答えが分かるという能力。私の悟り妖怪としての能力と少し似ているので、ここに来てもらったというわけです。


「私が言うのもなんだけど、あんたもここに馴染んできたもんね」

「そりゃあ3ヶ月も住んでるんだもの。それに、ここだとこういう能力もそこまで珍しくないから、何か言われたりもしないしな」

「そうですね。どちらかと言えば、私の能力の方が他人からすれば嫌な分類でしょうし」

「あんたはまたそうやって……」

「あら、そんな能力なのに仲良くしてくれる人がいて嬉しいって言いたいんですよ?」

「なっ!?」

「ハハッ!こりゃあ一本取られたなぁ天子!」

「ほんと、あんたらのその仲の良さ、妬ましいわね」


 ……アンスさんのせいで、ちょっと私もイジワルになってしまったのかもしれませんね?アンスさんの能力の詳細としては、いくつか条件があります。①質問を口に出す必要があること。②相手がその質問を聞き取り、意味を理解する必要があること。③複数人に質問する場合、はいかいいえで答えられる質問しか意味を成さないこと。④答えは「相手の声」で脳内に直接解答されるので、一度でも声を聞いたことが無いと解答が聞こえないこと。⑤相手が記憶していないことは分からない。(認識できないことへの解答は出来ない)この5つです。ただ、1日に3回だけ、本気で能力を使用すると、これ以上のことが出来るんだとか。まだそんなに使ってないようですけど。


「まぁでも、天子が言うように暇なのも事実なんだよな。ここだと客も全然来ないし」

「まぁ、地の底、地獄の入り口のような場所ですからね」

「よっぽどの物好き以外来やしないよ」

「で、その一人がこいつってわけね」

「パルスィ、あんたケンカ売ってるわけ?」

「お?ケンカならアタシも混ぜろよな!」

「まーた始まったよ。いいんですか?さとりさん」

「答え、聞こえました?」

「へいへい。こういうのは俺の仕事ですもんね~。はいはいお三方ストップストップ。ドンパチならお外でお願いしますよ~」

「誰がこんなやつとやりあうもんですか!」

「一回くらい良いじゃねぇかよ~。減るもんじゃなし」

「「減るわよ!」」

「わーお仲良し」


 心を読む系統の能力を自分も持ってるだけあって、お互いにある程度言わなくても察して動けるのは楽でいいですね。アンスさんも、渋々みたいな言い方でしたけど、最初から分かってらっしゃいましたし。おちゃらけた雰囲気のせいで軽い人に見えるけど、根は凄くしっかりした人なんですよね。お酒が入るとちょっとあれな所が出ちゃうみたいですけど……。


「そうだ。せっかくですから、暇だと言うお二人に、少しお使いをおねがいしてもいいですか?」

「いやいや、アンスは分かるけど、私客なんだけど?」

「人の家に来て暇だ暇だと言われるの、あんまり嬉しくありませんよ?」

「同感だね。ちょうどいい暇つぶしじゃないか」

「うっ……仕方ないわね。いいわよ」

「で、お使いって言うとどこに行けばいいんですかね?」

「……」

「永遠亭にお薬のストックを貰いに、ですね」

「ほんと便利なもんよね。私の能力と交換しない?」

「そんな便利な能力、あるんですか?」

「無いに決まってんでしょ。ほら、ボサッとしてないで行くわよ」

「自分から言い出しといて~。そんじゃさとりさん、ちょっと行ってきますね」

「はい。お願いしますね」

「じゃ、アタシらもそろそろお暇するか」

「そうね。ここにいたら仲良しグループに当てられて妬ましいったらないもの」

「その仲良しグループの一人に入ってるって……」

「その質問をしたら妬み殺すわよ!」

「ひゃー怖い。それが答えだって教えてくれたから質問する手間が省けたんで、さっさと行きますね~」

「……殺すーー!!!」

「アッハハハハ!ほんと、あいつがいると飽きないなぁ!」

「こんな騒がしい毎日も、良いものですね」

「だな。少し前じゃあ考えられないくらいだ。世の中ってのは、何があるか分かったもんじゃないな」

「そうですね……」


 そう、少し前……天子さんと仲良くなり始めた頃、ちょうど1年前くらいから、何かが変わり始めた気がする。天子さんと仲良くなったのも、宴会の時がきっかけで、何もおかしなことなんて無い。それなのに、何故かどうしても、違和感のようなものを感じてしまう……。その頃から気になることと言えば、萃香さんの心の中に、何かもやのようなものがかかって、一部心を読めない部分があること……。もしかしたら、何か関係があるのかもしれないけど……。


「さとり様?」

「ごめんなさい、少し考え事をしてただけよ。さぁ、仕事に戻りましょう」

「じゃ、アタシもあいつらに追いつかないとな!じゃあな二人とも!」

「はい。またいつでも来てくださいね」

「今度はなんかお土産の一つでもよろしく頼むよ~」

「おーう!任しとけ!」


 少し、変に考えすぎたかもしれませんね。家族に心配をかけるなんて、私もまだまだです。さぁ、今日も仕事が山積みですし、順番に終わらせていきませんとね。


「あの二人、大丈夫ですかね?」

「大丈夫ですよ。私の信頼してる二人なんですから」


~Side Out~



~アンス Side~


「っひゃ~怖い怖い。ほんとに橋の近くまで追いかけて来るんだもんな」

「どう考えたってあんたが悪いでしょ」

「そうか~?今回のは自爆だと思うんだけどなぁ」

「そうなるように誘導しといてよく言うわよ」

「でも最終的に自爆したのは向こうだもんな~」

「はいはい。その通りね~」

「うっわ、雑な返事。俺泣いちゃいそう」

「うっさいわね。いいからさっさと行くわよ」


 パルスィに追われること数分、しまいには弾幕まで撃たれながらもなんとか逃げて、今は天子と二人で地上に出て永遠亭に行くために竹林を目指している。んだけど、こうやって話を振ってもすーぐぶった切られちゃう。悲しいったらないぜ。まぁ半分はこっちが原因なのは分かってるんだけども。そんなこんなで天子特製要石でふわふわ旅することこれまた数分、竹林が見えてきた。


「いや~相変わらずうっそうとしてるな~。絶対方向わかんなくなる自信があるわ」

「同感ね。まぁ、最悪の場合大地を操って無理やり道を敷いてもいいんだけど」

「勝手にやっちゃうと怒られるかもしれないしな」

「いえ、私の労力を他のやつがただで利用するのが気に食わない」

「あぁそういう」

「当然よ。まぁ最後に元に戻せば大丈夫かしら?」

「んなことしなくたってちゃんと案内してやっから止めろっての」

「あら、不死人じゃない。助かるわ」

「おっす妹紅。頼んだ~」

「人に物を頼む態度かよそれが」

「「オネガイシマース」」

「言った私が悪かったよ」


 入り口で漫才をしながら待ってると、竹林の案内人こと妹紅が来てくれた。というかよく見ると端の方に掘っ立て小屋みたいなのが見えるから、あそこで入る人の確認と案内なんかをしてるんだろう。普段から特にやること無いなら、往復の案内と安全保障としてお金貰って商売にすりゃあいいのに。と、いうことを本人に一度聞いた所、『そういうのに興味ない自給自足の生活をしてる方が性に合ってるし、そんなことしなくても本当に感謝の気持ちを持つ奴は遅れてだろうとお礼をしてくれる』とのことだ。なんともまぁカッコイイ性格ですこと。


「で、永遠亭までで良かったか?」

「そそ、あ、出来れば帰りもお願いね~。すぐに済むだろうし」

「ねぇ、あんた毎回道案内とかするくらいなら、目印でも付けて一人でも行けるようにするとか考えないの?」

「考えないと思うか?どんな目印付けて分かりやすくしても、あっちのイタズラ兎がその目印をめちゃくちゃにしやがるんだよ」

「あぁ~。そういうことだったのか」

「迷惑なもんね」

「……」

「何よ?」

「いや、ずいぶん丸くなったもんだなって思ってな」

「はぁ?」

「傍若無人、唯我独尊、自分こそが全て。1年前のお前はそんなやつだったと覚えてるけど、今は他人の心配ときた。1年でここまで変わるもんかって驚いてんだよ」

「うっさいわね!なんか悪いの!?それに、今でも私が一番であることは何も変わってないわよ!」

「そういうことにしといてやるよ。さ、そろそろ行かねぇと日が暮れちまうぞ」

「はいは~い、案内よろしく~。ほ~ら天子も、いつまでもむくれてないで行くぞ~」

「あんたら後で覚えてなさいよ」


 俺はこんな風になってからの天子しか知らないけど、ここまで言われるってことは本当に相当だったんだろうな。ちょっと見てみたい気もするけど、多分こうなれてるのはさとりさん達のおかげなんだと思うと、見れて無くてもいいかなとも思える。一度宴会の時に、皆の仲良くなった時の事を教えてもらおうと思ったんだけど、皆そん時の記憶があいまいで、しっかり聞けなかったんだよな。今度また教えてもらお。どうしても話してもらえないなら、許可取って能力使うのも考えるか……。

 なんて考えてる内にドンドン進んで行き、雑談もしながら歩くこと(天子はまだ要石に乗ってるけど)数分、パッと見だと何も変わらない景色に見えていたものの、しっかりと道はあっていたようで、今俺達の目の前には大きな日本旅館風の屋敷、永遠亭がある。最初見た時は、なんで病院のはずなのに日本旅館なんだよとか思ったけど、後々理由を聞いたらすごく納得したって話は割愛。


「いや~何度見ても豪華な建物ですこと」

「ほんと、無駄以外のなんでもないな。こんな無駄な建築をするなんて、考えた奴の顔が見てみたい……いや、もはや見たくもないな」

「天界でもここまで大きいのはそんなに見ないわね。まぁ、うちの方が大きいんだけど」

「変なとこで張り合わない。妹紅もそんなん言ってるとまた絡まれるぞ?」

「いいんだよ。絡んできたって返り討ちにしてやんだから」

「神宝『プリリアントドラゴンバレッタ』」

「ちょ、いきなりかよ!天子、たすけ」

「頑張って避けなさいよ~」

「あんのやろ!一人だけ要石で逃げやがった!」

「余所見してていいのか?」

「良くないな!妹紅!このスペカの避け方は!?」

「なるほど、そんな使い方も出来るのか」

「そういうこと!ってか余裕ありすぎだろ!」

「何百回これ見て来たと思ってんだ。目ぇ瞑ったって避けれるっての」

「ひゃ~カッコイイ」


 突如として飛んできた弾幕を、なんとかかんとかかわしきり、収まった所で弾幕の飛んできた方向を見ると、黒髪ロングに着物を着た和風美人……の皮を被ったニートがそこにいた。


「あんた今絶対失礼なこと考えたでしょ」

「いやいやまさかそんな」

「別にいいぞ。私が許す」

「ニートがいるな~って」

「はったおすわよ」

「うわ怖い」

「だからあんたが悪いんだっての」

「え?それ本気で言ってる?うわ、本気なんだ」

「本気に決まってるでしょ」

「で、何しに来たわけ?あとそっちのは案内終わったんなら帰りなさい。今すぐ」

「帰りも案内任されてんだよ。お前みたいに暇じゃねぇんだ」

「ケンカ売ってるのね。よし、買ったわ。裏に来なさい」

「いいぜ。今日こそぶっ殺してやるよ」

「あ~あいっちゃった」

「いいんじゃない?これで静かになるでしょ。ほら、さっさと行くわよ」


 ニートこと輝夜と妹紅のバトルは放っておくとして、こちらはこちらの用事を片付けないとな。永琳さんには一度助けてもらってるから改めてお礼もしたかったし、あいつもまだここにいるだろうから色々近況話したりもしたいしな。


「ごめんくださ~い」

「は~い、今でまーす!ってキャア!!」

「やーい引っかかった~!」

「こら、てゐ!!あんたってばまた!!」

「引っかかる方が悪いんだよ~!」

「あ、待ちなさいっての!」

「これ、どのくらい待たされると思う?」

「5……いや、10分ね」


~Side Out~


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