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第六章 第一節

今回の話から第六章となり、完結に向けてギアを上げていきます。頑張ります。


◆虎上青葉


「何でお前が、超能力について知ってんだよ!」


 青柳さんが、俺の両肩を掴んで言った。表情には困惑の色が伺える。

 俺はそれに対し、真摯に答える。

「それは、俺が超能力者だからだよ」


「はあっ!? マジで!?」

「マジで。ちなみに青柳さん、さっき似内さんに投げ飛ばされてたけど、投げ飛ばされる前に、似内さんの攻撃に気づけた?」

「いや……。地面に投げ飛ばされてから気づいた。あっそうだ、一年の……似内、だっけ? お前一体何者だよ? お前程強いやつ、正義を除いて、会ったことねえよ」

 青柳さんが似内さんに目を向け問いかけた。


 青柳さんがそう言うのも無理はない。青柳さんは、その辺にいる力自慢の人間よりも、遙かに強いからだ。


 実際、青柳さんは過去に、喧嘩を売ってきた武闘派の不良グループを壊滅させている。


 仮に、もし仮にだが、俺が青柳さんと戦えば、多分瞬殺されるだろう。この辺りの地域で青柳さんに勝てるのは、正義くらいのはずだった。


 しかし先日、この地域の最強ランキングは変動した。


「えっと、すみません。実は私も超能力者でして、自分の身体能力を強化出来るんです。

 それで、ズルになっちゃうんですが、超能力を使って、青柳先輩を止めさせてもらいました」

 似内さんが恐縮して言った。


 あくまで俺が観察した結果だが、超能力を使った場合、似内さんの強さは、正義を超えている。


 数日前、身を持って経験したから分かる。似内さんの身体能力は、明らかに常人を逸脱したものだ。

 そのため、似内さん自身も分かってはいたが、青柳さんへ強襲をかける際は力をセーブしてもらった。


 青柳さんの超能力は、刃物で相手を傷つけた場合、痛みは感じるものの、その傷は時間が経てば、元の傷の無い状態に戻る。つまり、ダメージは最終的にはゼロ。

 しかし、刃物以外の攻撃、殴る蹴るなどの攻撃に関しては、痛みとともにしっかりとダメージを受けるのだ。


「超能力を使った身体能力の強化……。なるほど、それであたしが全く手が出なかった訳だ」

 青柳さんが俺から手を離し、腕を組みつつそう言った。

「あと、虎上。お前の超能力はどんなのなんだ?」

「ああ、俺の超能力は……、」

 俺は自分の超能力、危険情報の可視化について、簡潔に説明した。また、その超能力を利用して、正義の手助けをしていることも説明した。


「ふうん。弱っちいはずのお前が、何で正義とパトロールをしてるのか疑問だったけど、そういう理由があったのか。やっと腑に落ちたって感じ。ん、でもまてよ? それなら、正義も超能力について知ってるってこと!?」

「ああ、知ってるよ。俺が教えたからね。ちなみに、さっきから青柳さんの驚くリアクションを見て、黙ってニコニコしてる静音さんにも、正義と同じくらいの時期に教えたよ」

「うん、その通り!」

 静音さんがグッ!と親指を立てる。


 まあ正確には、静音さんと初めて会った日から数日後、「そう言えば、どうして私の所に駆けつけることが出来たの? 私が襲われてからあまり時間も経ってなかったし、叫んだりもしなかったから、駆けつけることが出来たのは偶然?」と、聞かれた時に教えた。それは正義に超能力のことを教えてから1ヶ月以内の出来事なので、同じくらいの時期とした。


「……虎上が超能力について教えたって事は、正義もスタンガン女も、超能力は持ってないってこと?」

「うん。私はもちろん、正義君も使えないはずだよ。私、超能力については、青葉君と風子ちゃんから教えてもらった知識だけしか無いんだ。

 むしろ、超能力を自分の目で見たのは、今日が初めてだったし。それにしても、風子ちゃんスゴかったね! あんなに速く動けるだなんて思わなかったよ!」

「あ、いえ、それほどでも……」

 似内さんが顔を伏せる。照れているのだろう。その証拠に顔が赤くなっている。


「よくもまあ、実際に見たことのないものを信じられるな」

「そりゃ信じるよ。私が好きな人達の言葉だもん。だからもちろん、青柳ちゃんの言葉も信じる」

「……はっ。そうかよ。あたしはお前が嫌いだけど」

 そう言って、青柳さんはそっぽを向いた。

 青柳さんの質問も終わり、俺はそろそろ良い頃合いだと判断し、本題に入ることにする。


「青柳さん、一応確認のために聞くよ。正義に告白すると、その告白した人が正義のことを好きで無くなるっていう超能力に関してだけど、それって青柳さんの超能力? それとも別の人の超能力?」


「……あたしのだよ」


 やっぱりそうだったか。

 さっきの、超能力を呪いと言って、俺達を試した件といい、ここ最近、俺の勘が冴えわたっている勘がある。やったね。

「それって自分の意志でオンとオフを切り替えられないのか?」

「無理だ。あたしの超能力は、あたしの意志とは別に、自動的に発動した。だから、あたしにはどうすることも出来ない。

 だから最初、分かりやすく例えるために、呪いって言ったんだよ。普通に超能力って言うよりも分かりやすいと思ったし」


「……あれ? じゃあ別に、超能力について俺達が知っているかカマをかけた、って訳じゃない?」

「な訳ねえだろ。なんでそんな面倒な事しなくちゃいけないんだよ」

 つまり、俺は思いっきり勘違いをしてたって事なのか? ……おおう。やばい、すごく恥ずかしくなってきた。


「何で頭を抱えてんだ?」

「気にしないで。それで、その超能力は絶対にオフに出来ないのか? 何か解除するための条件はないのか?」

 超能力は個人差はあるが、ある程度時が経てば、使用者は自身の超能力がどういうものか理解することが出来る。

 だから、青柳さんの超能力が発現から時間が経っていれば、その方法が分かるはず。解除する方法があれば、の話ではあるが。

 しかし結果として、

「……無くはない」

 解除法はあるようだ。

「それはどんな方法?」

 俺は尋ねる。すると、青柳さんがふてくされた顔をしつつ、




「……正義が誰かに告白すれば良いんだよ。それで呪い……、超能力は解除される」




 と言った。


 なるほど。そして良かった。

 正義がひとり身で今後の人生を歩むことは無いようだ。正義が、自分で好きな女の子を見つけ、その女の子に愛の告白をすれば、それで呪いは消える。


 しかしこれだと、


「それじゃ結局、私と似内ちゃんは今日、正義君に告白するのは無理かな」


 そう。それが問題だ。正義ハーレムを築くための、同時告白を実行しようとしていたが、このような呪いがあるなら実行は無理だ。


 告白しようとしても呪いによって防がれてしまうのだから。別の方法を考える必要がある。


 それを考えようとしていたら、

「あのぉ……」

 似内さんがおずおずと手を挙げた。

「青柳先輩の超能力の話を聞いて、気になったことがあるんですが、質問しても良いでしょうか?」

「……なんだよ?」

 ぶっきらぼうな態度をとりつつも、青柳さんは似内さんの方に目を向けた。


「えっと、青柳先輩の超能力って、伊澄先輩に告白すると、その告白した人が、伊澄先輩への恋心を無くしちゃうんですよね?

 だったらどうして、わざわざ静音先輩を止めに来たんですか? そのまま放っておけば、静音先輩も私も、告白どころか、伊澄先輩への恋心も無くしていたのに。

 その方が青柳先輩にとって好都合なんじゃ……」


 それを聞いて、俺は驚愕した。

 なぜ気づかなかったのだろう。

 言われてみればそうだった。


 青柳さんが何もしなければ、静音さんと似内さんは今日、正義に告白しようとしていた。


 そうなれば、静音さんと似内さんは呪いで、正義を好きだった気持ちは無になる。


 告白を失敗させ、恋敵も減らせる、青柳さんにとって絶好のチャンスだったはずだ。


 にもかかわらず、青柳さんは武力を用いてでも、告白を止めようとした。それは何故だ?


「確かに、風子ちゃんの言うとおりだね。放っておけば、青柳ちゃんの願いは叶ったはず。ねえ、青柳ちゃん、どうして放っておかなかったの?」

 3人の視線が青柳さんに集まる。それに対し、青柳さんは、


「何で放っておかなかったか? そんなの、放っておけなかったからに決まってるだろうが!」


 と、叫んだ。


「そりゃ、正義に告白しようとしてる、お前等の事は嫌いだよ! でも、正義を好きになった、その気持ちまでを潰そうとは思わない。

 女が、正義みたいな男を好きになるのは普通の事なんだから。

 でもあたしは昔、その普通を壊した。一人の女の恋を、無にしちまったんだよ!」


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