表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/37

第五章 第二節


 それから約30分後。俺達は学校から離れ、とある河原にいた。早朝であること、また、ランニングコースから外れた地点であることから、辺りに人気ひとけはない。


 青柳さんは俺を通じて、静音さんをこの場に呼び出した。

 そして、告白をやめるよう脅迫したが、静音さんはそれに全く屈しなかった。


  その結果。


「うらあっ!」

「あぶなっ」

「かわすんじゃねえよ!」

「かわさないと顔に当たるじゃない」

「あたりまえだろ! そこ狙ってんだから!」

「物騒だなあ」

「スタンガン使ってる奴が言っていいセリフじゃねえ!」

 声だけを聞いているとふざけているようにも聞こえるが、そこで行われていたのは、ハイレベルな女の戦い(物理)だった。


 青柳さんが凄まじい早さの手刀を放ち、それを静音さんが左手の甲を使って弾く。また同時に、右手で持っていたスタンガンを刺すように青柳さんへと向ける。

 すかさず、青柳さんは左足を、静音さんの右腕に向かって振り上げる。見事にヒット。静音さんの右手はちゅうに向けたように挙がり、狙いが外れる。

 その隙を狙い、青柳さんが左手での手刀により、再び静音さんの顔面を狙おうとするが、静音さんはそれをバックステップで避けた。


「青柳ちゃん、なんでそんなに顔狙いなの?」

「はあ? そんなの、顔が傷つけばお前が告白出来なくなるからに決まってんだろ!」

「そっか、なるほど。それは困るね。なら、やっぱり全力で避けないと」


 だがしかし、第三者の視点から言わせてもらうと、静音さんの状況はかなり悪い。


 顔面狙いという言葉が表すように、青柳さんは静音さんを傷つけることに躊躇がない。

 それに対し、静音さんはスタンガンという一撃必殺の武器は持っているものの、相手が後遺症を残さないよう、攻撃する箇所を数カ所に絞っており、それらすべての箇所を青柳さんに把握されている。


 静音さんは、必要以上に相手を傷つけようとはしない人(気に入っている人間なら尚更で、顔面を狙うなんて以ての外)なので、攻撃箇所を拡大しようとはしないだろう。

 そのため……、

「どうしたどうした、動きが鈍ってきたじゃんか!」

 徐々に押されていく。


「さっさと告白を諦めろ! 今ならまだ許してやる!」

 それでも。

「……そう言われても、したいものはしたいんだから、仕方ないよ」

 激しい攻撃を受けてつつも、反撃のチャンスを狙い、静音さんは食いついていく。


「仕方なくねえよ! させるわけにはいかないんだよ!」

「どうして?」

「どうしてって……、そりゃ、あ、あたしが、正義の事が好きだからに決まってるだろうが!」




「うん、それは知ってる。なら、何で告白しないの? それとも……、何か、告白出来ない理由でもあるの?」


「っ……!」




 揺らいだ。

 明らかに青柳さんの動きが鈍った。その隙を、静音さんが見逃す訳ない。

 静音さんは、自分が持っていたスタンガンを、青柳さんに向かって投げた。

 武器を手放すという行動に面を食らい、青柳さんはそれをかわす動作しか取れない。それにより、体勢が崩れる。


 そこへすかさず、静音さんは自分の胸元から、予め用意しておいた2つ目のスタンガンを取り出し、スタンガンを青柳さんへと向けた。

「勝った!」

 タイミングは完璧。確実にスタンガンがヒットする。


 そう思っていた。


「舐めんなッ!」

 青柳さんは瞬時に身体を捻り、回避不可能だと思われていた体勢から復帰する。そしてそれは、低姿勢からの回し蹴りに近いものだった。つまり、防御であり攻撃である。


 その蹴りにより、静音さんのスタンガンが弾かれる。さらに、その攻撃から繋がる連撃。回し蹴りの勢いを利用し、加速する形で再び身体を捻る。

 そこから繰り出された速くて重い裏拳が、静音さんの腹部にヒットした。


「ぐぅっ!?」

 静音さんは耐えられず、膝を地面につける。

 完全に無防備。攻守が入れ替わり、絶体絶命の危機に陥った。

「終わりだ、スタンガン女!」

 青柳さんの全力の一撃が、静音さんの顔面へと迫る。


 その危機を、静音さんが回避する方法は……無い。





 静音さん自身には。





突然ですが、本日中にもう一話分投稿したいと思います。しばしお待ちいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ