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第三章 第六節

あけましておめでとうございます。2日ほど間を空けてしまいすみません。本日からまた投稿していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。


 静音さんが似内さんの頭を撫でる。

「それも大丈夫だよ、似内ちゃん。正義君は、一度受けたことを撤回するような人じゃないもん。これと決めたことは貫き通す人だから、似内ちゃんの告白を撤回なんてしないよ?」


「で、でも、そもそも私なんかが告白しても、断られちゃうんじゃ……」


 よし。このタイミングだ。この状況になったら、用意しておいた2つ目のセリフを言ってもらうよう、静音さんに頼んでおいたのだ。


 俺は静音さんに再び視線を送る。それを受けた静音さんは、軽く頷き、セリフを言う。


「告白されたら絶対、正義君喜ぶよ。賭けてもいい。それに……、」


 そこまで言って、静音さんが何故かチラリと俺のほうを見る。 ……どういうことだ? この後は、「ショートボブの髪型の女の子が好みって言ってた」と言う約束だろう?


 似内さんには、正義の隣にいれる自信がない。けれど、正義は告白されれば喜んで受け入れると言っている。ならば、似内さんが告白する勇気さえ持てれば、何も問題はない。告白は成功する。


 だから、飴と鞭で、無理矢理勇気を持たせることにした。


 来週の月曜日に静音さんが告白するというタイムリミットを提示して焦らせる。これが鞭。

 その上で、似内さんのしている髪型が正義の好みだと伝え、「もしかしたら伊澄先輩って私の事を……!」と、妄想させる。これが飴。

 いやまあ、正義がショートボブの髪型が好きなのは事実だけど。巨乳好きについては、似内さんよりも静音さんのほうが凄いモノを持っているので割愛。


 ……とにかく、以上の飴と鞭を使い、似内さんに勇気を持たせる。そういう手筈のはずだ。ここで改めて、俺の合図を伺う必要なんてない。


 ……なにか嫌な予感がする。そう思った次の瞬間、




「もし似内ちゃんの告白が失敗したら、私、正義君への告白は、永遠に無しにしてもいいよ」




 今までの静音さんからは考えられないセリフが、静音さんから発せられた。


 好きなものに対して妥協しないはずの静音さんが、告白を無しにするリスクを背負う発言をしたのだ。俺は困惑を隠せない。

 意味が分からない、すぐにでもセリフの真意を確かめたい。しかし、似内さんに内緒にしていた手前、この場でどのように問いかけるべきか悩む。


 そうしていたら、

「ど、どうしてそこまで言い切れるんですか?」

 と、似内さんが問いかけた。似内さんも似内さんで、静音さんの自信の根拠が分からず、困惑しているようだ。


 俺達が各々の理由で困惑する中、静音さんは堂々と告げる。

「もちろん、私が似内ちゃんの事を、心の底から可愛いと思ってるからだよ。そう思ってなければ、正義君ハーレムの一員として、一緒にやっていこうなんて言わないもん」

「……」

 沈黙する似内さんの頭を再び撫で、そして。



「だから大丈夫だよ、似内ちゃん。絶対、告白は成功するよ」

 


 そう自信満々に言いきって、静音さんは優しく微笑んだ。


 そんな静音さんの姿をしばらくじっと見つめた後、似内さんは意を決した顔つきになる。


「……分かりました。そこまで言ってもらったら、成功するような気がしてきました。……告白、してみます」


「本当!?」

 俺は似内さんに尋ねる。予想外の展開ではあるが、似内さんが正義に告白してくれるのなら、結果オーライだ。


「はい。でも、私が先に告白はするのは無しです。私は、早間先輩と同時に、伊澄先輩に告白します」


 二人同時!? さらなる予想外の展開に驚愕する。が、これはまさか……。


「それってつまり、私と一緒に、正義ハーレムの一員になってくれるってこと!?」

「ち、違います! 伊澄先輩に、どちらか1人だけを選んでもらうためです!」

 似内さんが頬を赤く染めながら、慌てて言う。


 そして、さらに頬を赤く染め、こう続けた。

「……で、でもまあ、早間先輩に私の告白が成功するって保証してもらいましたし、早間先輩の伊澄先輩への告白が失敗する訳もないので、2人いっぺんに選ばれるなんてことがあるかも、しれません、……ね?」


 そんな、今までよりもポジティブになった似内さんの言葉を受け、俺は心の中でガッツポーズをする。

 静音さんは、似内さんに抱きついて言う。

「やったあああああ!!! 似内ちゃんがデレたあああああ!!!!」

 そう、この状況から言えることは一つ。似内さんが静音さんにデレた。静音さんが似内さんをオトしたのだ。すげえ。


「は、離してください、早間先輩!」

「無理ですー! 似内ちゃんが可愛すぎて離せないですー! そうだ、今度から似内ちゃんじゃなくて、風子ちゃんって呼んでもいい?」

「わ、分かりました! 呼んでいいので、とりあえず離してくださいー!」

 顔を真っ赤にしながら、似内さんは叫んだ。







 その後、俺達は月曜日の段取りの打ち合わせをした。打ち合わせが終わって帰る際、静音さんは玄関まで俺と似内さんを送ってくれた。

「月曜日、一緒に頑張ろうね! 風子ちゃん!」

「は、はい、静音先輩。こちらこそ、よろしくお願いします」

 ちなみに。静音さんの希望により、似内さんの静音さんへの呼び方が、早間先輩から静音先輩に変化した。

「青葉君も、サポートよろしくね!」

「分かってます」

 俺としては、静音さんがセリフを変更した真意を問いかたかったが、結局聞き出すタイミングが無く、仕方なく今は撤退することにした。

「2人とも、またね!」

 静音さんは笑顔で手を振る。俺と似内さんは各々頭を軽く下げてそれに応え、早間家を出た。


必ず完結させますので、これからも見届けていただけると幸いです。

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