表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

第5話










「大丈夫だったかい?」


「おかげさまでな」


「小娘、見掛けによらずそこそこ腕がたつようだな」



直ぐに2人は合流した。あの程度の刺客では取るに足らなかったようで2人とも傷はなく服にも汚れはない。まるで疲れを感じさせない姿を見るにまだまだ余裕がありそうだ。


「本当にすまない。君のような可憐な女性を危険にさらしてしまうなんて……僕は総隊長失格だ!」


「何を言うんですか、ケルト様の実力と功績は誰もが知っています。ケルト様のお陰でこうして皆が平和に暮らせているのです」


「それでも自分が良く狙われている事があるという事が分かっていたのに油断して巻き込んでしまった……これは男の恥なんだ。本当にすまなかった、こんな事で許されるとは思わないがこれを受け取って欲しい」



そう言ってケルトが宝石を渡してきた。青く澄んだその宝石はけして大きくはないが表面に薄く文字が書かれておりとても高価な物だというのが一目で分かった。それだけでなく僅かだが魔力を感じる。



「良いのか?」


「あぁ、君には多大な迷惑を掛けてしまったからね。それを見せればこの街でなんの不自由なく過ごせるだろう、それにそれがあれば僕に直ぐにでも会えるから」


「ケルト様!?それは……」


「いいんだセバス。彼女には迷惑を掛けてしまったからね、それに……いや何でもない。また襲われるかもしれないから僕はこの辺で。僕はエリミナーゼ騎士団団長シャーク B ケルト、また会おう、美しい君よ」


「おう、ありがとな」



さて、想わぬところで収穫があった。まさか軍部の1番偉い人と知り合いになりあまつさえ何かを貰えるとは思わなかった。この身体で戦闘もそこそこ出来るのも判明したし恐らくであるが危機の要因と何らかの繋がりがあると見て間違いない盗賊の一団とも戦闘出来た。尋問しても良かったのだがああいう奴らは決まって金で雇われただけで大した情報も持っていないだろうし見のがしても問題ないだろう。


案外すぐに救えるかもしれないな、そんなことを思いながらシンは歩いていった。















―――――――――

















「……はぁ」


「なぁ元気だせよ」


「いいんですよ。どうせ私なんか……」


「どんだけ拗らせてんだよ……」



宿屋に帰ってきたシンが扉を開けると亜里朱はベッドに仰向けになって寝転がりながら何かを呟いていた。それを見て直ぐに扉を閉めて部屋番号を確認するが間違いなく自分達が取った部屋だ、ファーストキスぐらいでここまで拗らせる意味がシンには分からない。きっと女にしか分からないんだろう、ほっときゃ治るだろうと暫く放置していたのだが今の今まで治らず流石にうざくなってきて今に至る。


「いやさ、もう1回したいって言ったら怒る?」


「この身体で自殺します」


「恐ろしいなお前……あれだよ。キスした時直接魔力が流れ込んできたんだ、キスすれば俺お前の身体で魔法使えると思うからさ頼むよ〜」


「意気消沈してる私にそれを言いますか……嫌なものは嫌です、というか一刻も早く私の身体返してよぉ〜」


「それが出来ないから困ってるんだろ」



顔を真っ赤にして拒絶する亜里朱。そうあの時、実は魔力が直接流れ込んできており僅かだが魔法が使える……気がしたのだ。一瞬だった為に大した量の魔力は流れてこなかったが使えるのと使えないのでは出来る事が大きく違ってくる。


「けちだなぁ」


「けちとかそういう問題じゃないでしょ!」


「じゃあどういう問題なんだよ?」


「それは勿論最初はお互い愛し合った2人で、そして2人が初めて出会った公園のベンチ。辺りは真っ暗で空には満天の星空………って何言わせるんですか!」


「うん、なるほど。以外とロマンチストなんだな」


「あぁ……もうおうち帰りたい」



再びベッドに顔を埋める亜里朱。

おっ、そう言えば。そんなことをシンが言うものだから亜里朱はそれにつられてシンの方へと顔を向ける。だがそれはとんでもない爆弾だった。




「お風呂、どうすんだ?」
































「ぜっっっっっったい、目を開けちゃダメだからね。分かってます?開けたら……切り落とすから」


「ちょっとあの、声のトーンがガチ過ぎて洒落になってないぞ」


「分かってますか?」


「分かってるから、な?落ち着こうぜ」


「分かって、ますか?」


「は、はい」




彼らはお風呂場に来ていた。幸い1番高い部屋を取った為にお風呂はかなり大きく余裕があった。シンが服を脱ごうと服に手を掛けた瞬間、洒落にならないぐらいの強さで肩を捕まれ「目をつぶれ、さもなくば……分かってるな?」的な事を言われて自分で服すら脱がして貰えず結局、全部亜里朱が脱がせた。「いや分からんでもないけど俺の身体も見るんだからお互い様じゃないか」と言いそうになったが下手に刺激するのは良くないとシンは諦めた。


腕を引っ張られながら風呂の中を移動する。歩くたびに下着から解放された胸が揺れる、男の時には無かった感覚にこれが持つ者の感覚なのか、なんて良くわからない事を考えていると急に亜里朱の腕を掴む強さが増した。


「変なことは考えないように。あと身体は触らないで、私が洗うから」


「お、おう」



何故わかった。

ギシギシとやな音を立てる腕、いやこれ本当は貴方の身体ですよ。とは言えない。きっとこれ以上刺激すると良くない事が起きる。未来予知にも近い直感がそう告げている。



「では、いきます」


「宜しく頼みま、す?」



何やら決意に満ち溢れた亜里朱はゴシゴシとシンの頭を洗い始める。元はと言えば亜里朱にとって自分の身体をこうして洗う事になるなんて思いもしなかった。元の世界でも特別美容に気を使っていた訳ではないが誰の目に入れても不快に思われないようにはして来たとは思っている。


そう言えば私今シン身体で……


あまり意識していなかったがそう言えば自分は今異性の身体なのだ。色々と必死すぎて完全に失念していた。ごくり、と息を呑む。身体が入れ替わったと分かってから下半身にずっと違和感があった。もちろん知識では知っているが実際に見た事もなければこうして……


顔が真っ赤になる。



「どうした?手が止まってるぞ、終わりなら流してくれると嬉しいんだが……」


「ふぇ?……はい!何でもないですよ何でも!」


「???」



ブンブンと頭を左右に振る。シンに目をつぶれと強制しているのに自分がこんな事しては駄目だと気を持ち直す。だがしかし亜里朱とて年頃の女の子、そういう事に興味が無いと言ってしまえば嘘になる。女の子同士でも彼氏のアソコがどうたらだとか、初体験はどうだったとか、そういう話は良く聞いていた。


自分の見栄を張ったりこの男は自分のものだと他の女子に牽制する人を見る度にくだらないと何処か呆れながら話を聞いていたのを覚えている。


けれども自分だって人間で当然のように性欲だってある。そんな話を聞かされて想像してしまえばムラムラだってしてくるし1度ムラムラし始めると中々抑える事が出来ないのが性欲であって1人で解消する事もある。知識では知っていても亜里朱だって人並みに異性の身体に興味はあるものだ。


自分の身体を見る。

ガッチリとした硬い筋肉、割れた腹筋、筋肉質で立派に鍛えられたシンの身体をまじまじと見てしまう。自分の身体、女の子の身体とは触り心地も硬さを違っていてとても頼りがいがあると思った。


けれども



(この傷に……これって火傷の跡?幾ら何でも……)



シンの身体には幾つも傷があった。平和な日本で暮らしていた亜里朱でも異常だと分かるおびただしい傷跡に顔を顰める。一体どうやって生きてこればこれ程の傷跡がつくのだろうか。



『お前には世界を救ってもらう』



亜里朱がシンの身体に移ってから初めて目覚めた時に聞かされた言葉。


世界を救う

アニメや漫画なんかでも良くある王道のストーリー。幾多の困難を乗り越えて時には悪と言われる敵を倒し、時には倒れ傷付き、それでも諦めず何度でも立ち上がり人々の為、世界の為に戦う。そう思えばこれだけの傷跡があるのも納得が出来る。


そう言えば亜里朱はシンにまだ何も詳しい事は聞かされていない。と言うより自分にはそんな余裕は無かった。果たして世界を救うとはどういう事なのか。

もし仮に亜里朱が思うアニメや漫画の世界で言う勇者として彼が世界を救って回ってるのだとしたら?


果たして彼はどれ程の苦難を乗り越えてここまで辿り着いたのか、亜里朱には想像すらつかない。



「なぁ?いつまで俺の身体まじまじと見てるつもりだ?」


「えっ?……ちがっ!?これは違うんだよ!」


「っておい、暴れんなって!うおっ!」


「きゃっ!」



考えにふけていた亜里朱はシンの言葉で現実に戻ってきた。しかしタイミングが悪かった、自分は目を瞑っとけと言ったのに自分は身体をまじまじと見ていたのだから咄嗟に言い訳しようと勢いよく立ち上がった。


その時に足を滑らせた亜里朱がシンを巻き込む様に前に倒れていく。その時だった。

突然視界いっぱいに光が広がる、これには見覚えがある。これは身体が入れ替わった時の……





「…………きゃぁぁぁぁあぁぁあ!」


「あべろ!あばわむばばな!(やめろ!俺は無実だ!)」


「この、変態っ!」




光が晴れると二人は身体が入れ替わった、と言うより元に戻っていた。しかしタイミングが最悪だった。亜里朱がシンを押し倒す様に倒れ胸に顔を埋めるように倒れたのだ、そしてそのままシンはビンタを叩き込まれた。


俺なんも悪くないじゃん。

シンの言葉は虚しく消えていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ