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魔女と魔物の島4

「こいつが鬼女……いつだったかアタシらの都市を襲撃した奴と同じやからってわけか」

初めて鬼女の姿を目の当たりにしたグランが苦笑いで言った。

「奴らの能力は未知数です。いくらこちらが数で勝っているとはいえ油断しないことです」

フウが冷や汗を浮かべながら言った。

「ウォルタ、ヒカリの様子は?」

フレイが尋ねた。

「……完全に戦意を失っているわ。実の姉に命を取られそうになったのだもの、ショックが大きすぎたのね」

ウォルタが肩を貸した状態のヒカリに目をやりながら答えた。

「そうか……なら、ウォルタはヒカリをアジトまで送ってやってくれ。ヒカリの姉ちゃんはウチらが……」

「いえ、彼女との戦闘はなしよ」

「ウォルタ?」

「私達はあくまでもヒカリに付き添ってこの場に来たのだもの。指示を下す彼女が戦意を喪失した上で、得体の知れない鬼女との戦闘は危険過ぎるわ。ここは全員退くわよ」

「分かった……だけどそう簡単に逃がしてくれるのかな」

「そういうことなら、うってつけのがあるぜ」

そう言うとグランが全員の前に歩み出た。

「グラン?」

ウォルタが尋ねた。

「負傷者を含めた全員が逃げらればいいんだろ? だったらこいつの出番だ。性に合わねぇからあんまし使いたくはないんだが、状況が状況だからな」

『スプレー』

そう言うとグランはハンマーにひとつの魔導石をスキャンした。そしてそのハンマーを大きく振りかぶると、勢いよく足元の地面に叩きつけた。

「勝負はお預けだぜ、ヒカリの姉貴」

次の瞬間、彼女がハンマーで叩いた地点の周囲の土が砂状に変化して空中に舞い上がり、アカリの周囲は大量の砂埃で包まれた。

「っ!? こしゃくな……」

アカリは手から大量の木の枝を発生させ、砂埃を切り払った。しかし、晴れた視界の先にはウォルタ達もヒカリの仲間の負傷者の姿も存在しなかった。

「……流石は魔女。逃げ足だけは速いな」

そう言うとアカリはフードをかぶり直した。

「だが、魔女狩りはすでに始まっている。憎たらしい魔女共、貴様ら滅び行くさだめなのだ」

アカリはきびすを返し、駐屯地を後にした。


それから数字間後、ヒカリ率いるギルド、バルバトスのアジトである洞窟では、帰還した仲間達の救護を一通り終え、ウォルタ達やバルバトスの面々は一時の休息をとっていた。しかし、新たに鬼女という強大な脅威を知った彼女達の顔は浮かないものをしていて、その場の空気はとても重苦しいものだった。

「……どうしたよ、フレイ? 全然食ってねぇじゃねぇか、らしくないぜ」

スプーンでスープをすくう手を止めたグランが、スープを手にうつむいているフレイに言った。

「……そういうグランこそ、やけに口数が少ない気がするけど」

フレイが言った。

「しょうがねぇだろ、こんな状態じゃ」

グランが苦い顔で返した。

「ええ、ただでさえ島が魔物に占拠されている状態で、追い討ちをかけるように鬼女まで現れてしまったのです。皆さんの士気が下がるのも無理ないですよ」

フウが辺りの表情を曇らせたギルドの面々を見渡しながら言った。

「そういや、ウォルタはどこ行ったんだ?」

グランが尋ねた。

「ヒカリのところだよ。一番ショックを受けてるのは、ヒカリだろうから、そばに誰かいてあげないとって」

フレイが答えた。

「流石ですね、ウォルタさんは。この状況下で自分のやるべきことをしっかり見定めている……わたくし達も沈んでいる場合ではありませんね」

フウが顔をあげながら言った。

「……そうだな、せめて気持ちだけでも魔物や鬼女共に勝たないとな」

グランが右手で握り拳を作りながら言った。

「ああ。そうと決まれば気合いを入れないとな!」

そう言うとフレイはスープを一気飲みした。

「っ!? げほっ!!」

フレイはむせた。

「だ、大丈夫ですかフレイさん?」

「やれやれ、いつも通りだな」

フウとグランがフレイの背中をさすりながら言った。


「ヒカリ、いるかしら?」

ギルド長の待機場所にやって来たウォルタが尋ねた。しかし、そこにヒカリの姿はなかった。

「あれ? 出てるのかしら?」

「ヒカリさんなら、先ほど夜風に当たりに行くと言って出ていきましたよ」

通りすがったギルドのメンバーのひとりが言った。

「そう……なんとか立ち直ったようね。どこに行ったかわかるかしら?」

「たぶん、洞窟を出てすぐの岩場です。あそこはヒカリさんのお気に入りの場所ですから」

「分かったわ。ありがとう」

そう言うとウォルタは待機場所を後にした。


「……姉さん」

洞窟の出口付近の岩場でヒカリは呟いた。

「……どうして姉さんが魔物の仲間に……やっぱり私のことを」

「夜風が気持ちいわね」

背後からの声にヒカリは振り返った。そこにはウォルタの姿があった。

「ウォルタさん……」

「どうも。私、この場所気に入ったわ……ご一緒してよろしいかしら?」

「え、ええ……」

ヒカリの言葉にウォルタは笑顔を返すと、彼女の隣に並び立った。

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