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魔女と魔物の島2

「皆さん、どうぞこちらへ。ここなら魔物も現れず安全です」

金髪の少女が言った。港での魔物の襲撃をかわしたウォルタ達は、少女に案内され、とある洞窟内の彼女のギルドのアジトへと案内されていた。

「申し訳ありません。せっかくこの島にお越しくださったのに、大したもてなしもできず」

少女が申し訳なさそうに言った。

「そんな、気にしなくていいわよ。私だって命を助けて頂いたんだし。それよりもこの島が今おかれている状況について詳しく聞かせてもらえないかしら。えーと……」

ウォルタが言った。

「ああ、自己紹介がまだでしたね。私、この島の魔女ギルド、バルバトスの長を勤めさせて頂いております。ヒカリと申します。よろしくお願い致します、えと、ウォルタさん」

ヒカリはペコりと頭を下げながら言った。

「ええ、よろしく。私達はさっき話した通り、都市からの仕事でミラストーンを求めて各地をまわっている者よ」

「フレイだ、よろしくな!」

「フウと申します。どうぞよしなに」

「うっす、グランだ」

ウォルタに続いて三人が名乗った。

「はい、皆さんよろしくお願いします。立ち話も何ですし、どうぞお座りになってください」

ヒカリが言った。五人は大きめのテーブルに着いた。

「では、詳細をお話致しますね。この島、シャイン島は一週間程前から島内の全区域を魔物に占拠されている状態にあります。それに伴って、私達のような一部の魔女ギルドを除いて、島民は近くの離島への避難を余儀なくされているのです」

「どうりで街に人の気配がなかったわけだ。島を魔物に乗っ取られていたんだな」

フレイが言った。

「ええ、そして島が魔物達に占拠されてしまった原因というのが、島に古くから存在する、レイ神殿と呼ばれる場所に出現した謎の黒い巨木になります」

「なるほど、その巨木とやらに魔物を発生させる力があるというのですね」

フウが言った。

「はい、それでその巨木を破壊し、島を取り戻す為に、島に残った我々は魔物との戦闘を続けているのです」

「戦闘を続けているか……で、その戦況ってのはどうなんだ?」

グランが尋ねた。

「うっ、それがかんばしいものではなく、際限なく発生する魔物の群れに我々は防戦一方の状態なんです。正直、このままでは島を完全に乗っ取られるのも時間の問題です」

「そう……今の話を聞く限りだと、やはりその謎の巨木とやらをどうにかする他に、魔物から島を取り戻す方法はなさそうね」

ウォルタが言った。

「それはごもっともなのですが、いかんせんその神殿は高い山の上に位置していて、その道中を魔物達がはびこっているものですから。辿り着こうにも着けずじまいで」

ヒカリがうつむきながら言った。

「……なるほどね。どうやらミラストーン探しは後回しのようね」

「……え?」

ウォルタの言葉にヒカリは顔を上げた。

「そうでしょ、あなた達」

「おう!」

「もちろんです」

「しゃーねぇな」

ウォルタの言葉に三人は笑顔で答えた。

「み、皆さん?」

ヒカリが尋ねた。

「その巨木倒し、私達も協力させて頂くわ。構わないかしら?」

ウォルタが尋ねた。

「ほ、本当ですか! ありがとうございます! 皆さん程の魔女の方々が協力してくれれば百人力ですよ!」

ヒカリがウォルタの両手を取って目を輝かせてながら言った。

「そ、そうかしら? まあ、とは言っても私、さっき港の戦いでヘマしたばっかりだから偉そうに言える立場じゃないんだけど」

ウォルタが冷や汗を浮かべながら言った。

「そんな! 気にしなくていいですよ! 私だってよくヘマしちゃいますもん! シリアルに麦茶かけちゃったりとか、服を後ろ前逆に着ちゃってたりとか!」

「え、ああそう……そうよね、誰だってヘマのひとつや二つあるわよね」

「そうですよ! ヘマしないように……じゃなかった、島を取り戻す為に一緒に頑張りましょう!」

「え、ええ!」

ウォルタは苦笑いで答えた。

「おい、なんか大丈夫なのかこのギルド長さん?」

二人のやり取りを見ていたグランが言った。

「心配ないよ。ウチだってよく寝ぼけて、剣と間違えてフライパン持って来ちゃってたりするもん」

「……お前も大概大丈夫じゃねぇな」

フレイの言葉にグランが突っ込んだ。

「まあ、熱意は凄まじいものですし。心配いらないと思いますよ……たぶん」

「……たぶんかよ」

フウの言葉にグランが突っ込んだ。

「それでは、ウォルタさん達も対巨木勢力に加わっていただけるとのことで、一度こちらで部隊の編成の変更を……」

「ヒカリさん!」

ヒカリの言葉を遮って、何者かの声が室内に響いた。五人が声のした方向に顔を向けると、そこには負傷した一人の女性が息を切らして立っていた。

「っ!? どうしたのですかその傷は!」

ヒカリはその女性の元へと駆け寄った。

「私の傷よりも……部隊が……」

女性は痛みをこらえながら言葉を繋いだ。

「B地点に駐屯中の部隊が! 何者かの襲撃を受けて……」

そこで女性の意識は途絶え、膝から崩れ落ちた。ヒカリはとっさにその女性の体を支えた。

「おい! 大丈夫かよ!」

駆け寄って来たフレイが言った。

「落ち着いて下さいフレイさん。気を失ってしまっただけのようです。それより……」

フウが言った。

「ああ、部隊が襲撃を受けたっつてたよな」

グランが言った。

「ええ……ヒカリ」

「……はい、彼女の手当ては団員に任せます。一刻も早く襲撃があったというB地点へ!」

ウォルタの言葉にそう答えると、ヒカリは一目散に駆けだした。

「私達も行くわよ!」

ウォルタ達もヒカリの後に続いて駆けだした。

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