魔女と化かし合い4
「おかしい……おかしいぞこんなの!」
思わず椅子から立ち上がったギランが言った。
「おかしい? 何がですか?」
対面に座るフウが尋ねた。
「何がって! ……こんな、これじゃあ私の負けじゃないか。納得いくものか、こんなこと! お前達は何かイカサマをしている! そうに違いない!」
「イカサマをしている……ですか。果たしてそれはあなたが言えた口でしょうか?」
「な、何ぃ?」
「透視魔法……とでもいいましょうか。あなたは午前中のグランとの勝負でその魔法を使用していましたね」
「ぬぅ……」
「相手に魔法の発動を悟られぬよう極限まで魔力を抑えた上で、テーブル上のカードに書かれた数字を透視していたのはお見事ですが、わたくしの目はごまかせませんでしたね」
「……やはりな、気づいていたってわけか」
「……認めるのですね、イカサマをしていたことを」
「ああ……だが解せないな。気づいていたのならなぜその時に言わなかったんだ。イカサマを見破れた時点であんた達の勝ちだったんだぜ?」
「言うわけないじゃありませんか。あなたは真剣勝負の場に魔法を持ち込んだ。それは魔女として恥ずべき最低の行為です。そんな悪人にはお灸を据える必要がりますから。イカサマをされる側に立たされる、というお灸をね」
「……」
「さあ、勝負を再開しましょうか。とはいえ、このカードをめくった時点でわたくしの勝ちですが……最後にチャンスをあげます。わたくしのイカサマの正体、見破られましたか」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……私に……あんたのイカサマは見破れない」
「そうですか……では」
フウはカードをめくった。
「やったぜ! アタシらの勝利だ!」
「ああ! 作戦通り上手くいったな!」
グランとフレイがハイタッチを交わした。
「ふぅ、これで一段落ね。お疲れ様、フウ」
ウォルタが言った。
「いえいえ、わたくしはウォルタさんの提案された作戦通りに事を運ばせて頂いただけですよ……まあ、かなり神経を使いましたが」
フウがハンカチでひたいの汗を拭いながら言った。
「まさに、神経衰弱ってわけね。さてと後は」
「ええ。ギランさん、勝負はわたくし達の勝ちです。約束通り、レーダーを治せる職人の居場所を教えて頂けますか?」
「……ああ、約束は守るさ。だがその前に教えてくれないか、私を完敗にしてみせた、あんたのイカサマの正体って奴を」
ギラン真っ直ぐな視線でそう尋ねた。
「……分かりました、種明かしをしましょう。わたくしの行ったイカサマの正体はこれです」
そう言うと、フウは右手のひらをギランに向けて出した。
「……何だその手のひらに描かれているのは? 魔法陣か? ……まさか!」
「そう、そのまさかです。この魔法陣は収納魔法陣、わたくしが普段、魔導具の槍を収めるのに使用しているものです」
「……は、ははは。なるほど、そう言うことか」
「お分かりいただけましたか?」
「ああ。あんたはテーブル上のカードをめくるときに、私が気づけない程の速さでめくろうとしたカードを魔法陣の中に収納し、あらかじめ魔法陣内に収納していた別のカードと入れ替えていたんだな。そりゃ数字がそろうはずだ、好きなようにカードを入れ替えられるんだもんな」
「ご明察。そういう事です」
「こいつは参った、完敗だ。約束通り職人の居場所を教えるよ」
そう言うとギランは白紙の紙を取り出すと、そこに地図を描いた。
「この地図の場所に凄腕の職人がいる。まず直せない物はないだろう」
ギランはフウに地図の記された紙を渡した。
「了解しました。ありがとうございます」
フウはギランから紙を受け取った。
「礼なんていらないさ。これは勝負に勝ったあんたらに当然として与えられる報酬だからな。それより……」
「何です?」
「あんたらとの勝負で思い知ったよ、イカサマをされる側の気持ちって奴を」
「そうですか、してそのお気持ちは?」
「はは、最悪の気分だ! ……これからはイカサマなんてしねぇ。真っ当な勝負師としての腕を磨くことにするよ」
「それが賢明です」
そう言うとフウはギランに笑顔を向けた。
そして、ウォルタ達はギランに紹介された職人の元を訪れ、無事、レーダーを直すことができたのだった。




