魔女と化かし合い2
「ちょ、ちょっと待てぇ!」
目の前の光景に度肝を抜かれたグランは思わず椅子から立ち上がって叫んだ。
「おや、どうした? 私の番はまだ終わっていないが」
ギランは得意気な顔でそう言った。
「こんなにカードがそろい続けるなんてあり得ねぇ! てめぇ、何かイカサマしてるだろ!」
「イカサマ? ……くくく、心外だな、そんなものはしていない。これは純粋な私の強運が引き起こしているものだ……と、あと二枚取れば、半数以上のカードを獲得したことになる。私の勝ち同然だな」
「ぐぐぐ!」
「いいえ、それは嘘ね」
二人の間にウォルタが割って入った。
「ウォルタ?」
グランが言った。
「ギランと言ったわね。あなたのプレイぶりはあきらかにおかしい、カードの選択に迷いがなさすぎる。どんなに強運の持ち主だとしても感情をもつ人間である以上、多少の躊躇は表情に出るもの。それを出さずに平然とプレイできるのは、自信満々にイカサマを行っている奴に他ならないわ」
ウォルタが言った。
「また物言いか、失礼な人達だ。そこまでいうなら私がどういったイカサマを行っているのか答えてみてくれよ」
ギランが言った。
「うっ! ……それは」
ウォルタは言葉を詰まらせた。
「何だ答えられないのか。それじゃあ私のイカサマが存在するしないにせよ、お前らの言い分はただのいちゃもんにすぎないな」
「こいつぅ……」
グランが歯を食い縛りながら言った。
「……なぁ、もう一度対戦をお願いできないか?」
ギランの前に歩み出たフレイが言った。
「フレイ?」
ウォルタが言った。
「おいコラ! 何、勝手にアタシが負けた事にしてんだ! まだ勝負は終わって」
「いや、ここから挽回するのは不可能だよ。こいつのイカサマを暴かない限りはね」
グランの言葉を遮ってフレイが言葉を続けた。
「あんたもいちゃもんか? まったく、仕方のない人達だ。ま、再戦ならいくらでも了承するよ。どうせ勝つのは私だからな」
ギランが言った。
「よし、なら次はウチが相手だ。お前のイカサマを暴いてやる!」
フレイが言った。
「ちょっと、フレイ。あなたにこいつのイカサマを暴く策があるというの?」
ウォルタが尋ねた。
「いや、ない!」
「……やっぱり、それじゃあグランの二の舞じゃないのよ」
「だからアタシはまだ負けてねぇって言ってるだろうが!」
二人の間にグランが割って入った。
「ははは、愉快な人達だ。見てて飽きないですね」
ギランが言った。
「み、皆さん落ち着いて下さい。彼女のペースに巻き込まれていては、イカサマを暴くどころではありませんよ」
フウが三人を制止した。
「う、それもそうね。フウの言うとおりだわ」
ウォルタが言った。
「まったく……取り敢えず再戦はしてもらえるようですし。ここは一旦、引いて昼食がてら作戦会議と行きましょう。それでどうですかギランさん?」
フウが尋ねた。
「いいぜ。私はここの酒場で一服してる。いつでもかかって来な。ま、尻尾を巻いて逃げてもいいけどな」
ギランが答えた。
「……この野郎なめやがって。今すぐにでもぶちのめさなきゃ気が済まねぇ! 第2ラウンド開始だ!」
グランが言った。
「いやいや、ここは一旦退くぞ、グラン!」
フレイがグランを羽交い締めにしながら言った。
「もう、またいいように乗せられてるじゃないのよ。こんなんで本当に大丈夫かしら」
ウォルタが頭を抑えながら言った。
「まあ、そう気を落とすことはありませんよ……彼女がイカサマを行っているのは事実ですしね」
フウが言った。
「フウ?」
ウォルタが言った。ウォルタ達四人は酒場を後にした。
「……あの白髪、気づいたのか?」
一人酒場に残ったギランが呟いた。
「あーもう、むしゃくしゃするぅ! とっとと食って、あの野郎をぶちのめしにいこうぜ!」
料理店でオムライスを頬張りながらグランが言った。
「おいおい、策なしで行っても、軽くひねられるのがオチだよ……ってわけでウォルタ、フウ、何かいい策ないか?」
ビビンバを口にかきこみながらフレイが言った。
「……あなたたちねぇ、少しは自分達で考えるってことをしなさいよ、まったく」
優雅にリゾットを口に運ぶウォルタが言った。
「あははは……力勝負ならともかく、こういう頭脳戦はからっきしでさ、なぁ、グラン?」
フレイが尋ねた。
「一緒にすんな! アタシだって冷静さを取り戻せばあんな奴の一人や二人!」
グランが言った。
「いやいや、冷静さを欠かされてしまっている時点で負け当然ですよ」
お茶漬けを食べ終えたフウが言った。
「うぐっ!」
フウの痛烈な一言にグランは崩れ落ちた。
「……流石はフウ。容赦ないわね」
ウォルタが冷や汗を浮かべながら言った。
「駄々っ子を鎮めさせるにはこれくらい普通です。それとフレイさん」
フウが言った。
「ん? 何だ?」
フレイが言った。
「先程、力勝負ならともかくとおっしゃっていましたが、彼女、ギランとの勝負は頭脳戦ではなく、力勝負です。魔法と言う名の力のね」
そう言うとフウは自身が見破ったギランの行ったイカサマの正体を三人に伝えた。
「……なるほど、そういう仕掛けだったのか」
フレイが言った。
「……ってそれをあの短時間見破るフウもフウね」
ウォルタが言った。
「……つーか、分かってたんなら何であの場で言わなかったんだよ。イカサマを見破った時点でアタシらの勝ちなんだぜ?」
グランが言った。
「確かにその通りです……が、そんな負かし方では面白くないでしょう。この意味、あなたなら分かるんじゃないですか」
フウが笑みを浮かべながら言った。
「……相変わらず性格のいい奴だな」
グランも笑みを浮かべながら言った。
「そうです、目には目を、歯には歯を、イカサマにはイカサマを! 私達のイカサマで彼女のイカサマを打ち破った上で勝負に勝つ! それが本当の勝利というものなのです!」
フウが力強く言い放った。
「おお、なんか分からんが熱いな、それ!」
フレイが同調した。
「……あなた達ね、目的はレーダーを治すことなのよ。第一、あいつを負かせる程のイカサマなんて……あっ」
ウォルタが何か思いついた様に言った。三人の視線が彼女に集まる。
「……まったく、とんだ寄り道だわ……でも、まあ嫌いじゃないわね。その大一番、私も一枚噛まさせていただくわ!」
ウォルタが不敵な笑みを浮かべながら言った。




