魔女と化かし合い1
「うーん、困ったわね」
ウォルタが言った。ミラストーンを探し求める彼女達一行はカジノ街で有名な島、メダル島へ立ち寄っていた。
「どうしたんだ? 腹でも空いたのか?」
フレイが言った。
「腹減ったぐらいで、うなるとはお子様だな」
グランが言った。
「心配しなくても、この道を行ったらすぐに料理店の立ち並ぶ通りにでますよ」
フウが言った。
「ちょっと、何勝手に私がお腹空いて困っているってことで話を進めているのよ!」
ウォルタが言った。
「あれ? 違うのか。 じゃあどうしたんだ?」
フレイが尋ねた。
「ミラストーンのレーダーの調子が悪いのよ。上陸してからずっと動作が止まっちゃってて、これじゃあ詳細な場所がわからないわ」
ウォルタが言った。
「おいおい、そいつは一大事じゃねぇか! ど、どうすればいいんだよ!」
フレイが言った。
「落ち着いてください、フレイさん。レーダーは機械です。修理することができますよ」
フウが言った。
「つっても、確かこいつって試作品だって言ってたよな? 直せる奴なんているのかよ?」
グランが言った。
「それなのよねぇ。こんな慣れない土地でそんな希少な職人、どうやって探せば……」
「教えてやろうか? そいつを直せる職人を」
ウォルタの言葉を遮って、何者かの声が響いた。四人が声のした方向に目をやると、そこには酒場のテーブルに着いている一人の金髪ロングヘアーの女性がいた。
「……何だ、お前?」
グランが言った。
「私か? ただのしがないギャンブラーさ」
女性は答えた。
「ちょっとグラン、なに話しかけんのよ! こんな酔っぱらい無視よ、無視!」
ウォルタが小声で言った。
「でも、あいつ職人を知ってるって言ってたよ」
フレイが言った。
「ですね。どの道、他に宛もありませんし、話を聞いて見ましょう」
フウが言った。
「あ、あなた達ねぇ……」
ウォルタが言った。四人は女性のそばに移動した。
「えー、初めまして。私はウォルタ、旅の魔女よ。単刀直入に尋ねさせてもらうけど、あなた、本当にこのレーダーを直せる職人を知っているのよね?」
ウォルタが尋ねた。
「ああ、本当さ。嘘はつかねぇよ」
女性は答えた。
「そう……じゃあ、早速教えて貰えるかしら?」
「タダで、か?」
「……いくら、欲しいのよ?」
「いやいや、私が欲しいのはそんなものじゃない」
「……は? 何だって言うのよ?」
「私が欲しいのはスリルさ。ギリギリの勝負の中でのな」
「……何が言いたいのかしら?」
「言葉通りさ。これから私とひとつトランプ勝負をしないか? お前らがそれに勝ったら、その職人の情報を渡そう」
「はぁ? てめぇ何勝手なこと言ってやがる! 知ってるっつうんならとっととその情報をよこしやがれ!」
グランがテーブルを両手で叩きながら言った。
「おっととと、怖い怖い。いやならいいんだぜ、困るのはお前達だからな」
女性は余裕の表情で言った。
「こいつ……」
「お、落ち着けよグラン。煽りに乗ったら、こいつの思うつぼだぞ」
「そうですよ。まともに相手にするだけ無駄です。職人は自力で探しましょう」
フレイとフウがグランをなだめた。
「いいや! こんななめられっぱなしで引き下がれるか! その勝負乗ってやる」
そういうとグランは女性の向かいの席に座った。
「ははは、そうこなくては。私の名前はギラン。よろしくな、グランさん」
ギランは笑顔でそう言った。
「……まったく、どうしてこういうことになるわけ」
ウォルタは頭を抱えた。
「こうなったグランはどうしようもないからなぁ。好きにやらせるしかないよ」
フレイが言った。
「まあ、この方の言葉が本当なら職人探しの手間が省けますが……最も、グランが勝負に勝てればの話ですけど」
フウが言った。
「……おーいお前ら、聞こえてるぞ」
グランが三人を睨み付けた。
「ははは、仲の良いことで」
ギランがニコニコしながら言った。
「うるせぇ! とっとと始めるぞ!」
「オーケー。ゲームのルールは……神経衰弱なんてどうだ?」
「何でもいい、てめぇを負かして、吠え面かかさせてやる!」
「……いや、情報を聞き出すのが目的だから」
ウォルタが呟いた。そして、グランとギランの神経衰弱勝負が始まった。
「準備完了。先行はそちらに差し上げよう」
ギランが言った。
「余裕かましやがって……この手番で全部取ってやる!」
グランが言った。
「大きく出たわね。あなた運の良さに自信はあるの?」
ウォルタが冷や汗を浮かべながら尋ねた。
「はんっ! 自信なんて必要ねぇ。必要なのは相手を絶対に負かすっていう強い気持ちだ!」
グランが答えた。
「おお! よくわからんがかっこいいな! 何だか応援したくなってきた! いけぇ、グラン!」
フレイが言った。
「……大丈夫かしら」
ウォルタがため息混じりに言った。
「……いや、ダメでしょうね。神経衰弱は運だけで勝てるものではありませんから」
フウが言った。
「う、うるせぇな! ……それじゃあまずは、こいつとこいつだ!」
グランがテーブル上に無作為に並べられたカードの内の二枚をめくった。しかし、めくられたカードに書かれた数字は異なるものだった。
「……ま、まぁ、最初はこんなもんだろ」
グランが苦笑いで言った。
「全部取るって言ってたのはどこの誰かしら?」
ウォルタが言った。
「こ、これからエンジンかけんだよ! ほら、次はてめぇの番だぞ!」
グランがカードを戻しながら言った。
「……くくく」
ギランが笑みを浮かべながら言った。
「な、なんだよ?」
グランが尋ねた。
「……そこの白髪の奴、先程こう言っていたな。「神経衰弱は運だけで勝てるものではない」と」
ギランがフウに視線を向けた。
「……ええ、言いましたが。それが?」
フウが言った。
「その発言、撤回させてあげよう。今から、この私の手で」
そう言うとギランはテーブル上のカードを二枚素早くめくった。それらのカードに書かれた数字は同じものだった。
「……ほう、やるじゃねぇか。でもそんくらいのマグレ、誰でもできるぜ」
グランが冷や汗を浮かべながら言った。
「当然。本当のショーはこれからだからな」
そう言うとギランは再びテーブル上のカードを二枚素早くめくった。カードに書かれた数字は同じものだった。
「なっ!」
グランは思わず目を丸くした。しかし、ギランはお構いなしに次々とテーブル上のカードをめくっていった。彼女のめくった二枚のカードの数字は全て一致し続けていたのだ。




