魔女と美食の島3
「ああもう! なんなんだこの魔物の量は!」
フレイが言った。彼女は襲い来る魔物との戦闘の真っ最中だった。
「無駄口叩いてると舌かむぜ! 叩くのは魔物の方にしてくれ!」
同じく戦闘中のグランが言った。
「文句のひとつも言いたくなるよ! さっから魔物の相手で精一杯だ! 果実探しどころじゃない!」
「ま、高級果実だしな。これぐらいの歓迎はつきものだろ!」
そう言うとグランは魔物の群れの最後の一匹を倒した。
「ふぅ、しかし、随分と手荒い歓迎だなぁ」
フレイが言った。
「まったくだ。と、休んでる暇はねぇみたいだな」
二人の前方に、再び魔物の群れが現れた。
「はぁ、はぁ。流石に疲れたぜ」
魔物の群れをやり過ごしたグランが言った。
「ぜぇ、はぁ。飛ばしすぎてバテるなっていってたのは、どこの誰だっけ?」
フレイが言った。
「うるせぇよ、人のこと言えた義理か?」
「はは、違いない……けど、どうしようか。魔物との戦闘ばかりで、ほとんど探索できていないよ」
「……少し格好がつかねぇが、前言撤回させてもらっていいか?」
「なにさ?」
「アタシは果実の光を確認しやすい夜間がチャンスだと思ってた。けど、どうやら違ったみたいだ」
「……魔物の少ない日中がチャンスって言いたいのか?」
「察しがいいな。そうだ、ここの島の魔物は想像以上に強力で数が多いからな。このまま朝まで島内を走り回っても、魔物との戦闘で疲労する上に、探索も満足に出来ずに終わるだろう」
「確かにそうだな。なら、今日の探索は」
「ああ、ここまでにしよう。私の土魔法で簡単なねぐらを作る。交代で見張りをしながら、明日に備えて休もうぜ」
「それなら、ウチが先に見張り役をやろう」
「いいのか?」
「うん、なんたってグランとは気合いの入り方が違うからな。まだまだ元気いっぱいだよ」
「……はっ、減らず口を。まあ、お言葉に甘えさせてもらうぜ、フレイ」
「ああ、グラン!」
二人は魔法で作った洞穴の中で朝まで休息をとった。
翌日、ハベス本島に残ったウォルタとフウの姿は試合会場の選手控え室にあった。
「えーと、それが一つにこれが二つ……よし、全部あるわ。そっちは?」
調理器具の確認をしたウォルタが尋ねた。
「食材も数通りありますよ。あとは」
食材を確認したフウが言った。
「妖精の果実を残すのみね」
「ええ……ウォルタさん?」
「何よ?」
「心配ですか、お二人の事?」
「……そりゃあ、ちょっとはね。ミラストーンの為とはいえ、強力な魔物の住む島に向かわせたのだもの」
「そう……ですね」
「……でも、信じてる」
「え?」
「あの二人なら必ず果実を採って、戻って来てくれる。私はそれを信じているわ」
「……そうですね。変な事を聞いてすいませんでした。わたくしとしたことが柄にもなく弱気になっていたようです」
「まったく、しっかりしてよ。果実をおいしく料理できるかどうかはあなたの腕にかかっているんだから」
ウォルタが笑顔で言った。
「これはまた大きなプレッシャーをおかけになられる。まあ、期待には答えるのがわたくしという人間ですけど」
フウが笑顔で言った。
「その不遜な態度、どうやらいつものフウに戻ったみたいね」
「ははは、おかげさまで」
「ふふ。それじゃあま、信じて待ちましょうか」
「ええ、お二人の帰りを」
一方、夜が開けた小島では、朝っぱらにも関わらず爆炎と地響きが轟いていた。
「おらおらどうしたぁ! 寝ぼけてんのかぁ? 夜の奴らはもっと歯応えがあったぜぇ!」
魔物相手にハンマーを振り回すグランが言った。
「寝ぼけてんのはグランのほうだろ! ウチの目的は魔物退治じゃないぞ!」
同じく剣を振り回すフレイが言った。
「はんっ、ちょっとした朝の体操さ。さぁて体も暖まって来たことだし、先に進むかぁ!」
「あっおい! おいていくなよ!」
二人は島の森の中のを爆煙と土煙を巻き上げながら疾走した。
「さてと、大分練り歩いたし。そろそろ見つかってほしいとこだが」
グランが言った。
「ああ、それにもう大会開始まで時間がほとんどない。早いとこ見つけないと……ん?」
そう言ったフレイは何かに気づいた。
「どうした?」
「あの茂みの向こうなんか光ってないか?」
「何? ……あの光は間違いない妖精の果実だ!」
そう言うと二人は茂みを超えた。そこには光輝く果実のなった大樹が生えていた。
「やった、とうとう見つけた!」
フレイが言った。
「ふぅ、なんとかご対面できたな。後はこいつを持って帰るだけ……」
「っ! 待て、グラン!」
樹に近づこうとしたグランをフレイが止めた。
「っ!? どうした?」
「この匂い……近くにでかい魔物が潜んでいる!」
「なんだと?」
次の瞬間、樹の近くの大地を切り裂いて、地中からムカデの姿をした巨大な魔物が飛び出して来た。
「……おいおい、嘘だろ。こっちは時間がねぇっつてんのによぉ」
グランが冷や汗を浮かべながら言った。
「ここまでくると流石に気が滅入りそうになるね。まあ、そんな暇も与えちゃくれないんだろうけど!」
フレイが身構えながら言った。そして、二人に魔物の強烈な一撃が襲い掛かった。




