魔女と廃船3
「……なんだありゃ? 魔物か?」
フレイが言った。
「あれが奴がおかしくなった原因かよ」
グランが言った。
「ええ、おそらくフウは今、あの煙に体を乗っ取られているのよ。さっきの部屋を開けたときに取り憑かれたようね」
ウォルタが言った。
「取り憑いたって……まさか霊かなんかだっていうんじゃないだろうなぁ。信じられんぞ」
グランが冷や汗を浮かべながら言った。
「あらそう? 私は特に不思議に思わないわ、悪霊だ精霊だなんてのは今さらだしね、ねぇフレイ?」
ウォルタが尋ねた。
「おう、霊にも色んな奴がいるって知ってるしな」
フレイが笑顔で言った。
「……なんか、すげぇなお前ら……って感心してる場合じゃねぇ!」
グランが言った。
「そうだったわね……しかし困ったわ、奴がフウに取り憑いている以上、攻撃は不可能よ。彼女を巻き込む形になってしまうでしょうし」
ウォルタが言った。
「何とかして奴から煙を引きはがす必要があるって訳か」
グランが言った。
「それならさぁ、もっとこの船の中を調べてみない?」
フレイが言った。
「どういうこと?」
ウォルタが尋ねた。
「だって、この船謎だらけなんだもん。この船の正体を突き止めれば、フウを元に戻す方法が分かるかもしれないよ」
フレイが言った。
「おいおい、随分とざっくりなアイデアだな……でもまぁ」
「ええ、今私達にできるのはそれしかなさそうね」
グランとウォルタが言った。
「よし、それじゃあ早速、調査開始だ!」
「ちょっと待って、フウをあのままにはしておけないわよ」
フレイの言葉をウォルタが遮った。
「ととと、そりゃそうだな。じゃあ……」
「アタシの出番だな」
フレイの前に出たグランが言った。
「グラン?」
「アタシがあいつを引き付けておく、船の謎解きは頼んだぜ」
「……分かったわ、でも気を付けて。フウの身体能力は並みじゃないわよ」
ウォルタが言った。
「そんなことは百も承知だ。それに、こいつはちょうどいい機会だ。どっちの力が上か白黒つけてやる!」
「お、おいおいフウは操られているんだぞ。喧嘩はなしだ」
フレイが冷や汗を浮かべながら言った。
「はは、冗談だよ。しかし、力を加減した上であいつを止めて置ける時間はそう長くねぇ。なるべく早く頼むぜ!」
そう言うとグランは船の破壊を続けるフウの元へと向かった。
「任せたわよ、グラン。行くわよ、フレイ!」
「ああ!」
ウォルタとフレイの二人はグランに背を向けて駆けだした。
「どう? 何か怪しい物は見つかった?」
船内を練り歩くウォルタが言った。
「……うーん、これといった物は何もないよ」
フレイが手当たり次第に当たりの物を調べながら答えた。
「そう……あと調べてない部屋と言えば……」
ウォルタは前方の一室に目をやった。その部屋のドアの壁掛けには「船長室」と記載されていた。
「船長室……ここになかったらお手上げね。行きましょう」
そう言ってウォルタが一歩踏み出そうとした次の瞬間、何者かが船内の扉を突き破って二人の前に飛び出した。
「っ! 魔物!?」
ウォルタは咄嗟に後退すると、ホルスターから魔法銃を引き抜いた。飛び出してきたのは三体の鋭いキバを携えた魚人型の魔物だった。
「……こんな大嵐の中、ご苦労なことね。けど、こっちは急いでいるの、道を開けてもらうわよ!」
ウォルタは魔物に向けて銃を構えた。しかし、引き金を引こうとした次の瞬間、目の前の三体の魔物の体は透明になった。
「なっ!? 消え……」
ウォルタがそう言いかけた次の瞬間、凄まじい衝撃が彼女の背中を襲った。
「ぐわっ!!」
ウォルタはその場から大きく吹き飛んだ。
「ウォルタぁ!」
フレイはウォルタのもとに駆け寄った。
「大丈夫か!」
「……ええ、平気よ。なんとかね」
ウォルタは背中に手を当てながら起き上がった。
「くそぅ、一体なにがどうなってるんだ。魔物は突然消えるし、ウォルタはいきなり吹っ飛ぶしよ」
フレイが辺りを見渡しながら言った。
「落ち着きなさい、フレイ。おそらく先程、私を襲った衝撃の正体はあの魔物の体当たりよ」
「何!? どういうことだ!?」
「私の背中を見なさい、乾いたはずの服が海水で濡れているでしょう」
「た、確かに。それで?」
「いい、今この場で服が海水で濡れる理由はただ一つ、海からやって来たものと接触することだけよ」
「なるほど、そういうことか! ……しかし、厄介な相手だな。姿が見えないんじゃ攻撃の仕様がないよ」
「そうかしら? 姿の見えない敵との戦いなんて私達には今更でしょ」
「ん? ……あ! そうか!」
「ふふ、フウに感謝しなくちゃね」
「ああ、グランにもな」
二人は立ち上がると各々の魔導具を構えた。
「とっとと片付けるわよ」
「おう!」
『チェイス』
『キャプチャー』
ウォルタとフレイは魔導石をスキャンした。




