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魔女と熱砂の島2

「皆、準備はいいかしら?」


ウォルタが尋ねた。彼女達は砂漠の入り口へとやって来ていた。


「オーケーだよ。水筒もしっかり持ったし」


フレイが答えた。


「それもそうだけど、心の準備もよ。この先の砂漠はさっきの町よりもっと暑いはずなんだから、気を引き締めないと」


ウォルタが言った。


「そいつはそうだが、気を引き締めるっつても具体的に何すりゃいいんだよ」


グランが尋ねた。


「そうですねぇ…何か制限を付けてみるとかはどうです? 破った者は罰ゲームって感じで」


フウが言った。


「そいつは面白そうだな! じゃあ"暑い"を禁止ワードにしようよ、暑い時に暑いって言うと余計くに暑く感じるしさ」


フレイが言った。


「お、いいなそれ。それじゃあ罰ゲームは…皆にジュースを奢るってことでどうだ?」


グランが言った。


「まったくあなた達ったら…まあ、でもいいわ、それで行きましょう。それじゃあ出発よ!」


ウォルタが言った。四人は広大な砂漠へと足を踏み入れた。





「あ、暑い…」


砂漠を歩くフレイが言った。


「フレイ、あなたそれ何回目よ、流石に私達もそんなにいっぱいジュース飲めないわよ」


ウォルタが言った。


「そんなこと言ったって、暑いものは暑いんだから仕方ないじゃんかぁ。水筒ももう空だしさぁ」


フレイ言った。


「お、今ので2回言ったな、合計30回だぜ、よってジュースは30杯…ってそんなにいるかぁ!」


足元の砂を蹴飛ばしたグランが言った。


「…何、一人でわめいているんですか。しかも数まで数えているとは、暇人ですね」


フウが言った。


「うるせぇな、他にやることねぇんだよ。辺り一面砂の海で景色も代わり映えしないしよぉ」


グランが言った。


「確かに、しばらく何もない景色が続いているわね。その遺跡の番人とやらも見当たらないし」


ウォルタが言った。


「考えてみれば、その番人を探す手がかりってのがないな。フウ、そのへんの情報は何かないのか?」


フレイが尋ねた。


「そうですねぇ…話に聞いた限りですと、番人はその遺跡の場所に近づいた人間に試練を与えてくるそうですよ。何か試練っぽいものがあればその近くにいるかも知れませんね」


フウが答えた。


「なんだよ試練っぽいものって、この暑さの方がよっぽど試練だぜ…ん?」


そう言ったグランが突然、足を止めた。


「どうしたんだ?」


フレイが尋ねた。


「…喜べフレイ、水にありつけるぜ」


グランはそう言うと前方を指さした。


「あれってもしかして…オアシスか!」


フレイはそう言うと、一目散にグランが指さした方向に駆け出した。


「あっおい、抜け駆けとはずるいぞ!」


グランもフレイの後を追って駆け出した。


「ちょっとあなた達 …二人とも目がいいわね、オアシスなんかどこにも見えないわよ、フウ見える?」


ウォルタが尋ねた。


「いえ、そんなものは見当たりませんが…」


フウが目を細めながら答えた。


「まさか暑さでおかしくなったんじゃないでしょうね、とにかく追いかけるわよ」


ウォルタとフウも二人の後を追って駆け出した。





「や、やった、たどり着いた」


フレイが言った。


「す、水筒の補充を…と、その前に一杯頂きまぁす」


フレイがそう言った次の瞬間、彼女の足元の砂が勢いよく動き出した。


「な、なんだぁ!? お、オアシスが消えた! それにこの砂は! う、動けねぇ!」


フレイの周囲は一瞬にして巨大な蟻地獄となった。そして、その蟻地獄の中心から巨大なキバを持った昆虫の姿をした生物が現れた。


「ど、どうなってんだこれは、体が渦の中心に引っ張られていく、このままじゃあの虫に食われちまう、くっそう!」


『ウェイブ』


フレイは腰の鞘から魔法剣を抜き放つと、それに魔導石をスキャンした。そして、フレイは斬撃発射可能になった剣を生物目掛けて降った。しかし、放たれた斬撃は生物が作り出した、砂の壁によってかき消された。


「う、嘘だろ…ってしまった腕が!」


蟻地獄の砂がフレイの両腕を封じ込めた。


(まずい、このままじゃ…)


「捕まれ! フレイ!」


フレイが絶望しかけた次の瞬間、現れたグランが彼女の脇に腕を回した。


「グラン!」


「すまねぇ、フレイ。アタシのせいで危険な目に会わせちまった。あのオアシスは幻覚、この蟻地獄に誘い込む罠だったんだ!」


グランの足元が光りを放ち、砂が彼女とフレイを押し上げた。グランが土魔法を使ったのだ。


「よし、このまま蟻地獄から脱出を…って何ぃ!」


グランは驚愕した。それもそのはず、彼女とフレイを押し上げた足元の砂がボロボロに崩れたからである。


「アタシの魔法より、あいつが砂を操る力の方が上なのか! まずい!」


「フレイ!」


「グラン!」


グランがそう言った次の瞬間、彼女とフレイの体は駆けつけたウォルタとフウによって蟻地獄から引き上げられた。


「ウォルタ、フウ、ありがとう助かったよ」


フレイが言った。


「まったく世話が焼けるんだから…それにしてもこの巨大な蟻地獄は一体?」


ウォルタが言った。


「あの虫野郎が作り出しているものだ。アタシとフレイにオアシスの幻覚を見させて、罠にはめようとしたらしい」


グランが言った。


「なるほど、そうでしたか。しかし、これはラッキーですね」


フウが言った。


「ど、どこがだよ。ウチ食われるとこだったんだぞ」


フレイが口を尖らせながら言った。


「まあ、一理あるわね。やっとそれらしきものに出会えたわけだし」


ウォルタが言った。


「それらしきもの? …まさか、こいつが遺跡の番人で、この蟻地獄が試練ってことか?」


グランが言った。


「もしそうだとしたら、この虫を倒すことが出来れば、隠し遺跡って奴が現れるってわけか!」


フレイが言った。


「ええ、ぜひそうであって欲しいものですね。最も、そうでなくてもこのような危険な生物を砂漠のど真ん中に放置はしてはおけませんし」


フウが言った。


「決まりね、戦闘開始よ!」


ウォルタが言った。


「おう! …といっても、どうやってこいつを倒すんだ? 蟻地獄のせいで、近寄ることは出来ないし、遠距離攻撃はさっきのウチの斬撃みたく、砂の壁でかき消されちまうぞ」


フレイが言った。


「ふーむ、蟻地獄をどうにかできればよさそうですね、グラン、あなたの土魔法でどうにかなりませんか?」


フウが尋ねた。


「そいつは無理そうだ、砂を操る力に関しちゃ、アタシより奴の方が上らしい。 砂の壁をどうにかして、遠距離攻撃を食らわした方がいいんじゃねぇか?」


グランが言った。


「とはいえ、フレイの斬撃をかき消すほどの強度の壁じゃ一筋縄ではいかなそうね」


ウォルタが言った。


「となるとやっぱり近づいて攻撃を食らわすしかないってことか。でもあの蟻地獄に捕まったら身動きがとれなくなっちまう、近づけたとしてもあのキバの餌食だよ」


フレイが言った。


「蟻地獄をかわしながら、奴に近づき、かつあのキバを封じる方法ですか…難しいですね」


フウが言った。そして、四人は照りつける太陽の下でしばらく考え込んだ。


「…うぅ、なんか暑さと考えすぎで頭が痛くなって来たな。こんなときさっき食べたサボの実の盛り合わせがあれば、水分補給もできて、頭もすっきり、いいアイデアが浮かぶんだろうけど」


フレイが言った。


「無い物ねだりしたってしょうがないだろ、我慢して考えようぜ」


グランが言った。


「…サボの実の盛り合わせ…それよ!」


突然、ウォルタが何か思い付いたように叫んだ。


「ど、どうしましたウォルタさん? 何か策でも思い付いたんですか?」


フウが尋ねた。


「ええ、とびっきりの奴をね。とはいえそれを実行するのにはちょっとばかし準備が必要よ。皆、まだ動けそう?」


ウォルタが尋ねた。


「はっ、愚問だな。アタシをなめてもらっちゃ困るぜ」


グランが言った。


「ええ、これしきの暑さでへばるわたくしではございませんよ」


フウが言った。


「おう! 頭使うより力仕事の方がウチ向きだ! 」


フレイが言った。


「ありがとう皆、その元気貸してもらうわ!」


そう言うとウォルタは三人を引き連れて、一旦、蟻地獄から離れた。





「待たせたわね番人さん!」


ウォルタが言った。再び蟻地獄に戻って来た彼女のそばには球状の巨大な砂の塊があった。


「ウォルタ、準備オッケーだ。いつでもいいぜ」


同じく砂の塊のそばに立ったグランが言った。


「分かったわ、それじゃあ…行くわよ!」


「ああ!」


ウォルタの言葉にグランが答えた。二人はその砂の塊を両手で押すと、それを目の前の蟻地獄に転がり落とした。一方、蟻地獄の主は無防備で巣に入ってきた砂の塊に若干困惑しながらも、近づいて来たそれを自慢のキバで噛み砕こうと大口を開けた。そして、そのキバが砂の塊に立てられた次の瞬間だった。


「やっとここまで近づけた!」


突如、砂の塊がパカッと開き、中からフレイとフウの二人が姿を表したのだった。


「流石、ウォルタさん。斬新ながらも確実な策を思い付きになる」


「だよな、初め聞いたときはちょっと驚いたけど」


蟻地獄の主の目の前で各々の魔導具を構えたフウとフレイが言った。


「これこそ名付けて"サボの実の盛り合わせ作戦"よ!」


ウォルタが叫んだ。


「…そのままだな」


グランがつぶやいた。


「う、うるさいわね! オホン、この作戦はフレイとフウの二人をグランが魔法で作り出した砂のボールの中に潜ませて、それを蟻地獄に転がり落とすものよ。砂のボールに入ることで蟻地獄を回避し、かつ攻撃だと悟られずに番人に接近することで砂の壁をも回避する。おまけに自慢のキバでボールに噛みついてもらえれば、そのキバを封じることができる。そして、キバの衝撃によってボールが割れて中から二人が姿を表す、さっき私達が食べたサボの実の盛り合わせみたくね」


ウォルタが自慢気に言った。


「そういうことだ、後はとどめを頼むぜ。砂の実のお二人さん」


グランが言った。


「誰が砂の実だ!」


フレイが叫んだ。


「まあまあフレイさん、とっとと倒してしまいましょう、この体勢…結構きついんで」


フウが言った。


「そ、それもそうだな。よし、行くぞ!」


『マキシマム』


『スパイラル』


フレイとフウは構えた魔導具に各々の魔導石をスキャンした。フレイの握る魔法剣は巨大化し、フウの握る槍の矛先はドリル型に変化した。そして、二人はそれらを目の前の蟻地獄の主に突き刺した。蟻地獄の主は光の粒子となって消え、同時に蟻地獄も消滅した。


「よくやったわ、二人共。後は奴が遺跡の番人ならば、隠し遺跡とやらが現れるはずだけど…」


ウォルタが言った。


「ん? おい、見ろよ! 奴がいた場所の砂が動き出したぞ!」


グランが蟻地獄のあった場所を指さした次の瞬間、砂の海の中から巨大な建造物が姿を表した。


「で、でけぇ! もしかしてこいつが!」


建造物を見上げたフレイが言った。


「ええ、間違いありません…隠し遺跡ですよ!」


フウが言った。


ついに姿を表した隠し遺跡。灼熱の太陽に照らされた砂の海のど真ん中で、遺跡を前にした四人は今一度気を引き締めるのであった。

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