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魔女と草原の島2

「ここがその古城……」


ウォルタが呟いた。彼女達は料理店で話に聞いた、ドラゴンの潜む古城にやって来ていた。


「ボロボロだけどでかい城だな。ぱっと見、観光名所みたいな所だ」


目の前の古城を見上げたフレイが言った。


「やれやれ、のんきなもんだな、これからドラゴンと戦う羽目になるかもしれないってのによ」


グランが言った。


「おやおや、さてはグラン、ビビッていますね」


フウが言った。


「なっ! そんなわけねぇだろうが!」


グランが言った。


「ちょっと、ドラゴン退治前に、喧嘩で体力使い切らないでよね。ま、幸いにもレーダーはこの城を指し示していることだし、ここにミラストーンがあるとみて間違いないと思うけど」


ウォルタが手元のレーダーを確認しながら言った。


「それじゃあ、早速、中に突入しよう! ドラゴンでもなんでも出てこい!」


「本物のドラゴンとは興味深い。ぜひお会いしてみたいものです」


「たっく、どいつもこいつも観光気分かよ」


そう言うとフレイ、フウ、グランの三人は臆することなく城内に足を踏み入れた。


「ちょっとあなた達! ……もう、相手はドラゴンなのよ。もっとこう緊張感というものをね……」


「何してんだウォルタ? 早く行こうよ!」


ウォルタの言葉を遮ってフレイが言った。


「……はぁ、ま、その強気な姿勢があなた達のいいところなんだけど。分かったわ、私も行くわ」


そう言うと、ウォルタは三人に続いて城内に足を踏み入れた。





「しかし広い城だなぁ」


城内を進むフレイが言った。


「こんなでけぇ城に一人でお住まいとは、いい御身分のドラゴンだな」


グランが言った。


「それにしても広すぎるわね。てっきり、なかに入ったらすぐに遭遇すると思っていたのに」


ウォルタが言った。


「実はドラゴンがいるなんて情報はガセだったりしてな」


グランが言った。


「まさかぁ、でもそれなら、簡単にミラストーンをゲットできるってことだよな。ちょっと味気ない気がするけど」


フレイが言った。


「何言ってんの、必要なミラストーンはひとつじゃないのよ。楽に手に入るのにこしたことはないわ…ん、どうしたのフウ?」


先頭を歩くフウが立ち止まった。


「…皆さん、残念ながらそうはいかないようですよ、耳をすましてください」


フウの言葉を聞いた三人は立ち止まって各々の耳をすました。すると、四人の耳にはわずかながらの床を叩く音が響いた。


「…この音って!」


ウォルタが言った。


「ええ、間違いありません。家主のお出ましです!」


フウが言った。そして、その音はしだいに大きくなり、それに伴って城内は大きな振動に包まれた。


「おいおい、マジにいるって言うのかよ。しかもこの轟音、これがそいつの足音だって言うんなら!」


グランが言った。


「相当のでかさって訳か…皆! 戦闘準備だ!」


フレイが叫んだ。そして、その轟音と振動は四人の目の前の壁を砕き壊し、その壊れた壁の先に巨大なドラゴンの姿を写し出した。


「これが…ドラゴン」


現れたドラゴンを目の前に顔をひきつらせたフウが言った。


「そ、そのようね。どうしたの、余りの巨大さにビビったのかしら?」


同じく顔をひきつらせたウォルタが言った。


「い、いえ出会えた感動の余り体が固まってしまっただけですよ」


フウが答えた。


「フ、フウが怯むなんて珍しいこともあるもんだな」


同じく顔をひきつらせたフレイが言った。


「そ、それほどの相手だってことだろ! 来るぞ!」


グランは自らのひきつった顔を両手で叩くと、ハンマーを構えた。そして次の瞬間、目の前のドラゴンは前足に備わった鋭い爪を、四人目掛けて降り下ろして来た。


「くっ! やる気満々のようね。ま、当然よね、赤の他人に家の中、土足で踏み入れられたら誰だって怒るわ」


攻撃をかわしたウォルタが言った。


「いや、そもそもこの城はこいつの物じゃないだろ! ま、そっちがその気なら遠慮はしないけどね!」


『ウェイブ』


そう言うと、フレイは握りしめた魔法剣に魔導石をスキャンした。剣は斬撃発射可能になった。


「これでも喰らえ!」


フレイが降り下ろした剣から炎の斬撃が放たれた。そして、その斬撃はドラゴンの巨体に命中した。


「どうだ!…って、嘘ぉ!」


フレイは驚愕した。それもそのはず、斬撃の命中した箇所は、まるで何事もなかったかのように無傷だったからである。


「フレイの斬撃が効かない!? なんて硬い体表なの!」


ウォルタがそうこぼした次の瞬間、ドラゴンは突如顔を天井に向けて大きく息を吸いこむと、その口から四人目掛けて巨大な炎を吐き出して来た。


「おお! 火炎放射ですか。まさにドラゴンと言った感じですね!」


炎をかわしたフウが言った。


「何喜んでるんだよ! ったく、斬撃で駄目なら打撃はどうだ!」


そう言うとグラン両手で構えたハンマーに魔力をこめながら疾走し、ドラゴンとの距離を一気に詰めた。


「これならどうだ!」


グランの降り下ろした岩石のハンマーがドラゴンの巨体をとらえた。しかし、その攻撃もドラゴンの体に傷を付けることは叶わなかった。


「…打撃も効かないって言うのかよ、なんて奴だ!」


グランが言った。すると次の瞬間、ドラゴンは再び大きく息を吸い込むと、四人目掛けて口を大きく開けた。


「また火炎放射ね。けど、炎なら私の水魔法の敵じゃないわ!」


ウォルタは魔法銃に魔力を込めると、それをドラゴンに向けた。しかし、開かれたドラゴンの口から放たれたのは無数の巨大な岩石だった。


「っ!? 火炎放射じゃない!?」


「危ないウォルタ!」


驚愕して一瞬足の止まったウォルタの体をフレイが引き寄せた。それによって、ウォルタは岩石をかわす形となった。


「大丈夫かウォルタ!」


フレイが尋ねた。


「ええ、ありがとうフレイ、助かったわ。しかしこのドラゴン、炎だけでなく岩まで吐いて来るとは」


ウォルタが言った。


「まったくだ、しかも今の岩石攻撃、アタシの土魔法よりはるかに威力のある物だった。ムカつくぜ、アタシへの当て付けのつもりか?」


グランが言った。


「…当て付け…どうやらそうかもしれませんね」


フウが言った。


「ああ? どういう意味だよ?」


グランが尋ねた。


「このドラゴンの攻撃、火炎放射と岩石、その属性は炎と土、これはフレイさんとグランが得意とする魔法の属性に一致しませんか?」


フウが言った。


「言われてみればそうね。でもそれがどうしたの?」


ウォルタが尋ねた。


「分かりませんかウォルタさん。私とウォルタさんではなく、フレイさんとグランの属性なんです。ヒントは私達になくて二人にあるもの」


「私達二人に無くて、フレイとグランに有るもの…まさか!」


そう言うとウォルタはドラゴンに銃を向けると引き金を引いた。放たれた銃弾はドラゴンの巨体に命中した。もちろん、傷を負わせることはなかったが。


「おい、ウォルタ何してんだよ。こいつの体の固さは分かっているはずだろ?」


フレイが尋ねた。


「ええ、分かっているわ。今の攻撃は傷を負わせるのが目的じゃなくて、当てるのが目的だったから」


ウォルタが言った。


「ん? どういうこ…」


フレイがそう言いかけた次の瞬間、ドラゴンは再び大きく息を吸い込むと四人目掛けて口を大きく開けた。


「次の攻撃が来る! かわす準備を!」


フレイが言った。


「いいえ、かわす必要はないわ」


ウォルタが言った。


「な、何だって!?」


「だって次の奴の攻撃は火炎放射や岩石より威力の低い物だもの。最も、当たると服が少し汚れるかもだけど」


次の瞬間、ドラゴンの口から放たれたのは大量の水だった。


「み、水!? なんで!?」


「私が奴の攻撃を上書きしたからよ」


「う、上書き?」


「ええ、このドラゴンの能力は受けた魔法攻撃の属性をコピーするものよ。だから奴に攻撃を当てたあなたやグランと同じ属性の攻撃をしてきたの」


「なるほど、そうだったのか。でも上書きって言うのは何だ?」


グランが尋ねた。


「このドラゴンのは一度コピーした属性を自身で好きなように選択して攻撃に反映させることはできないんです。なぜなら直前に受けた攻撃の属性によってその情報上書きされてしまうから。そうでなければ火炎放射や岩石より威力の低い水属性の攻撃をわざわざ繰り出してはこないはずですから」


フウが答えた。


「そういうこと。しかしフウ、あなたずいぶんと回りくどいアドバイスの仕方するのね。私を試したつもりなのかしら」


ウォルタが言った。


「おや、わたしくしがそういう性格なのは既にご存知かと思っていましたが、意外ですね」


「まったく、ま、これで奴の能力の秘密は分かったわ。これから反撃といきましょう!」


「しかし、反撃と言いましてもあのドラゴンの凄まじい固さの体表をどうにかしないことにはどうしようもありませんよ」


フウが言った。


「それなんだが、わざわざあのバカ硬い体表を狙わなくても、いいんじゃないか?」


グランが言った。


「どういうこどだ?」


フレイが尋ねた。


「簡単なことだ。外が硬いって言うんなら内側を攻撃すればいい。つまり狙うのは奴の体内。奴の口から体内を貫く攻撃をするんだ」


グランが言った。


「しかし、どうやってそれを? あのドラゴンが口を開ける時と言うのは決まって何らかの属性の攻撃が放たれているときです。その攻撃をかき消した上でその口から体内を貫く一撃を食らわせることなんて…」


フウが言った。


「別に一撃の必要はないんじゃない? 一瞬でも攻撃中のドラゴンをひるませて、その口を塞いじゃえばいいんだよ。あのドラゴン、攻撃の前には必ず口で大きく息を吸い込む必要があるみたいだし。口を塞げば奴の口を開けっ放しにしたまま、攻撃を封じることができるよ」


フレイが言った。


「なるほど、そうすれば後は塞ぐのに使ったものごと口から体内を貫く攻撃すればいいと言うことですか。しかし、となるとやはり攻撃中のドラゴンをどうひるませるのかが問題になりますね、ウォルタさん」


フウが言った。


「…うーん、奴の攻撃をかき消しなながら、その口を開けっ放しのままひるませる方法ね……思いついたわ」


ウォルタの口元に笑みが浮かんだ。


「お、ホントかウォルタ?」


フレイが尋ねた。


「ええ、但しそれには四人全員の協力が必要よ、皆、お願いできる?」


「おう!」


「はい」


「ああ」


ウォルタの言葉に三人は答えた。そして、ウォルタは三人に作戦内容を伝えた。


「…それじゃあ、作戦開始よ! まずはフウ頼んだわ!」


「お任せを!」


ウォルタの言葉に答えたフウは手のひらの収納魔方陣から槍を取り出すと、それに魔力を込め、ドラゴンに向かって疾走し、その距離を一気に詰めた。


「ちょいと失礼!」


そう言うとフウは魔力が込められた槍をドラゴンの体にかすらせた。


「これで上書き完了! このドラゴンの攻撃の属性はわたしくしと同じ風属性になりました! 次頼みますよ、フレイさん!」


フウが言った。


「ああ、任せろ!」


フレイがそう答えた次の瞬間、ドラゴンは大きく息を吸い込むと、目の前のフレイ目掛けて口から強風を吐き出して来た。


「その風を待ってたよ!」


そう言うとフレイはドラゴンが吐き出した強風に向かって剣を降り下ろし、炎の斬撃を飛ばした。すると、その炎の斬撃はドラゴンが吐き出した風を取り込みながら、より大きなものとなってドラゴンに向かって直進し、その口元に直撃した。


「よっしゃぁ! ウォルタの言った通り、炎のは風を吸収して大きくなる! その性質を利用して、奴の攻撃をかき消しながら、かつ口元に攻撃を当てることに成功した! 今だ、グラン!」


フレイが言った。


「分かってるよ!」


そう言ったグランの姿は、フレイの一撃を受け口を開けたままひるんだドラゴンの

目の前にあった。


「これでも食っとけ!」


そう言うとグランは手のひらから生成した巨大な岩石をドラゴンの口に放り投げ、その口を開けっ放しのまま塞いだ。


「これで空気を吸う手段を失ったこいつはもう何も吐き出せない! おまけに口もがら空きだ! 仕上げだぜ、ウォルタ!」


グランが言った。


「流石ね、完璧よ三人共! そして…これで終わりよ!」


ウォルタの構えた銃から放たれた閃光がドラゴンの口元の岩ごとその体内を貫いた。ドラゴンの巨体は光の粒子となって消えた。


「ドラゴン退治完了ね…ん?」


そう言ったウォルタの目の前の光の粒子の中から、輝く鉱石のようなものが落ちた。


「これってもしかして…」


ウォルタは手元のレーダーを確認した。


「うん、間違いないわ。これがミラストーンね」


石を拾い上げたウォルタが言った。


「何ぃ、ホントかよ! やったぁ!」


フレイが言った。


「おいおい、こいつの腹の中の石にレーダーが反応してたってわけか? そんなのありかよ」


グランが言った。


「ハハハ、面白いですね。ですが一つ目のミラストーンがドラゴンの胃袋の中から出て来た物だとは。これは幸先がいいのか悪いのか」


フウが言った。


「はぁ、まったく初っぱなからこんな苦労させられるとは、先が思いやられるわね」


ウォルタが言った。


「なぁーに、この先も何とかなるよ、この四人ならさ!」


フレイが笑顔で言った。


「ふふ、まぁそうかもね。取り敢えず…」


そう言うとウォルタは手にしたミラストーンを天に掲げた。


「一つ目のミラストーン、ゲットよ!」


「よっしゃぁ!」


「やりましたね」


「ふっ、やれやれだ」


四人は古城を後にした。





そして翌日。


「頼むよ、グラン! もう一個だけグラ草団子食わしてくれぇ!」


フレイが言った。


「ダメだダメだ! もう出航の時間だろうが!」


グランが言った。


「わたしくしも一目、広大な草原を見ておきたいのですが、ダメですか?」


フウが言った。


「だからもう出航の時間だっつてんだろ! またっくこの観光客気分共が! ウォルタも見てないでこいつらを止めてくれぇ!」


グランが言った。


「ふふ、やれやれしょうがい人達ね。…でも、ま、楽しい旅になりそうじゃない」


ウォルタはそう呟いた。そして、一向を乗せた船はグラス島を離れ大海へとこぎだした。

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