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魔女と幻の実1

「遅かったわ」


都市中心の広場にある、ギルドへの依頼が掲示されている依頼掲示板の前でウォルタはうなだれていた。


彼女はいつもなら、もっと朝早くにこの場所に来て、多数の依頼の書かれた紙の中から、自身の腕にあったものを選ぶ。


しかし、この日は違った。


「あら、ウォルタ。珍しいわねこんな時間に」


掲示板前に突っ立っていたウォルタに、一人の茶髪のロングヘアーをした女性が話しかけた。


「……マリーね。おはよう」


「ええ、おはよう。そうそう、聞いたわよ、あのポカツリーを仕留めたんだってね」


「え……ええそうね」


ウォルタは歯切れの悪い返答をした。


「すごいじゃない! あんな高ランクの魔物、一人でやっつけちゃうなんて。一人でギルドの活動してるって聞いて心配してたけど、杞憂だったわね」


ウォルタはマリーのキラキラした視線から目をそらした。


「そ、それが一人じゃ……」


ウォルタがそう言いかけた次の瞬間だった。


「うおーい! ウォルタぁー!」


ウォルタの背中にフレイの大声が響いた。


フレイはカバンを振り回しながら大急ぎで走ってきた。


「なんで、起こしてくんなかったんだよー。あと、置いてくなんてひどいじゃないか!」


ウォルタのそばに来て立ち止まったフレイは、息を切らしながら言った。


「……起こしたわよ。何十回と、ね」


ウォルタは振り返って、満面の笑みを見せた。


「ひっ! ご、ごめんなさい……」


フレイは一歩退いた。


「あら? そちらのお嬢さんは?」


マリーがウォルタに尋ねた。


「うちのギルドの新しいメンバー、お寝坊のフレイよ」


「お寝坊は余計だ!」


フレイの抗議をウォルタは無視した。


「メンバーって……仲間! ウォルタ、仲間ができたのね!」


マリーはより一層、目を輝かせた。


そして、フレイに近づき、彼女の手を両手で握った。


「私はマリー、よろしくね!」


「え? ああ、よろしく」


「ふふ。ここだけの話、ウォルタは素直じゃないけど、根はやさしい子なの。一緒だと色々、手がかかると思うけどがんばって! お姉さん、二人のこと応援してるわ!」


「ん? おう、任せとけ!」


フレイはマリーに向けてサムズアップした右手を突き出した。


その一方でウォルタの顔は真っ赤になっていた。


「ちょっと、マリー! あんた何言って……というかフレイ! 手がかかるのはあんたの方でしょうが!」


ウォルタは二人の間に割って入ってわめいた。


「ふふ、相変わらず素直じゃないんだから……と、もうこんな時間。それじゃあね! ウォルタ! フレイちゃん!」


ウォルタとフレイは、鼻歌を歌いながらスキップで去っていくマリーをしばらく見つめていた。


「……ええっと、どなた?」


フレイがウォルタに尋ねた。


「……一応、私の魔女の先輩よ……お節介の」


「へー先輩か……って魔女なのか!」


「ええ、そうよ。それよりフレイ、あなたが寝坊したおかげで今日の仕事はこれ一枚よ」


ウォルタは掲示板からはがした一枚の紙をフレイに見せた。


フレイはそれに書かれた文字を読んだ。


「えーと……探せ! 幻の木の実! か……って木の実ぃ!?」


フレイは紙を凝視して、眉をひそめた。




ウォルタとフレイの二人は、ポカの森からさらに東に位置するザワの森にやって来ていた。


「まさか記念すべき初仕事が木の実探しなんて……」


フレイがうつ向きながら言った。


「あんたが寝坊したせいでしょうが」


ウォルタが依頼書を眺めながら言った。


「今回の依頼は、この森の木になる希少な木の実、キランの実の採取よ。ここも、この前のポカの森ほどではないけど、危険な魔物が生息しているわ。油断しないことね」


「木の実採取かぁ。前回がでかい魔物退治だっただけに、簡単そうで気が抜けるなぁ」


その言葉をフレイは数分後に後悔することとなる。

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