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魔女と謎の二人組1

「……おい。準備はまだかよ」


ザワの森の中で一人の黒髪のロングヘアーの少女が尋ねた。


「もう少しよ……というか、あんたも手伝いなさいよ」


そばにいた緑髪のショートヘアーの少女が答えた。


「いやだね。そもそも俺にはこんなまどろっこしい作戦は性に合わないんだ。こっちから出向いて、とっととやっちまう方が手っ取り早い」


「まったく、ターゲットの始末はあくまで街の外で行うって命令でしょ。それに、奴らは不完全体とはいえ、鬼女を一人倒している。なめてかからない方がいいわ」


「あんな入れ物一人倒したくらいでビビりすぎだぜ。たかが魔女二人、俺達完全体の敵じゃない」


ロングヘアーの少女は不敵な笑みを浮かべた。





「ふぁああ……」


同じくザワの森の中を歩くフレイが大きなあくびをした。


「ちょっとフレイ、気抜きすぎよ」


隣を歩くウォルタがとがめた。


「悪い、悪い。どうにも採取の仕事ってのは退屈でな、自然と眠気が」


フレイが目を擦りながら言った。


「もう、この森にだって、魔物は生息しているんだから、気引き締めなさいよ」


「分かってるよ。で、目的のレンの実は後、何個必要なんだ?」


「40個よ」


「ぐえ! まだまだじゃん! 今日中に終わるかなぁ?」


「いつかのキランの実みたいに希少じゃないだけましよ……とはいえ、このまま二人一緒に探し回ってちゃ日が暮れそうね。どう、フレイ? ここは一つ手分けして探さない?」


「いいね! どっちが沢山採れるか勝負だ!」


「……急に元気になったわね。まあ、いいわ、採れるだけ採って、森の入り口で落ち合いましょう。余った分は持ち帰ってジュースにでもするわ」


「レンの実のジュースか、そりゃ楽しみだ。よし! いっぱい採るぞぉ!」


そう言うとフレイは駆け出した。


「ちょっと、フレイ! コンパス忘れてるわよ!」


ウォルタが叫んだ。


「おっととと、そうだった」


フレイは後ろ歩きでウォルタのもとへ引き返した。


「まったく、頼むわよ」


ウォルタはため息混じりに言った。





「よぉし、たくさん採って、ウォルタをびっくりさせてやろう!」


ウォルタと別れ、森の中を一人歩くフレイが言った。


「ええと、レンの実、レンの実……あれか!」


フレイは視界に捉えたレンの実のなる木に駆け寄った。


「早速見つかるとは幸先いいね。それじゃあ……」


そう言ってフレイがレンの実を採ろうとした次の瞬間、突如、大きな地響きと共に近くの地面を割って、地中から巨大な花の姿をした魔物が姿を現した。


「魔物か!」


フレイは即座に魔物と向き合うと、腰の鞘から魔法剣を引き抜いて構えた。


(随分とでかいな、こんな奴この森にいたっけ?)


フレイがそう思ったのも束の間、魔物は巨体に備わった、無数の植物のツルをフレイ目掛けて振り下ろしてきた。


「おっと! 植物系か。ならウチの敵じゃないね!」


フレイは魔物の攻撃を軽々とかわすと、右手に握った魔法剣に魔力を込め、その刀身に炎を灯した。そして、魔物との距離を一気に詰めると、炎の剣を振り下ろした。


「あらよっと!」


フレイの言葉と共に、魔物は真っ二つに切り裂かれた。


「へへへ、軽い軽い」


そう言って、フレイが勝利を確信した次の瞬間だった。突如、地面から先程の植物のツルが現れ、フレイの四肢を縛り上げた。


「なっ、何ぃ⁉」


「仕留めたと思って油断したわね。その魔物の本体は地上の花の部分ではなく、地中の根の部分なのよ」


驚くフレイの耳にどこからともなく声が響いた。


「何だ? 誰かいるのか!」


四肢を封じられながらそう叫ぶフレイだったが、返事は帰って来なかった。


「……捕獲完了よ。後は頼むわ」


「あいよ」


再び響いた声に呼ばれ、突如、森の茂みの中から一人の黒髪のロングヘアーの少女が飛び出した。そして、少女は右手に備わった獣の様な強靭な爪をフレイに向けながら、突進して来た。


「消えろ」


少女の突き出した爪がフレイの体を確実に捉えた。しかし、その爪はフレイの体に到達しなかった。


「あぁ?」


少女は思わず驚きを口に出していた。そして、そう驚く少女の背後にフレイの姿はあった。


「……おかしいな、確実に捉えていたはずだったんだけどな」


そう言いながら、少女は背後のフレイを振り返った。


「……何者だ、お前ら?」


フレイは息を切らしながら少女を睨みつけた。


「ん? ああ、なるほど、あのツルを力づくで引きちぎって、俺の攻撃をかわしたのか。面白れぇじゃん」


少女はフレイの四肢に絡みついたままのツルの残りを見ながら、笑みを浮かべて言った。


「誰だって聞いてんだ! 答えろ!」


フレイは少女を睨みつけたまま叫んだ。


「うるせぇな。これから消える奴に名乗ったて意味ないだろう。お前、アホか?」


少女はフレイを見下しながら言った。


「ちょっと、バジリ、何、仲良くおしゃべりしてるのよ。とっとと始末しなさいよ」


そう言いながら、茂みの中から一人の緑髪のショートヘアーの少女が姿を現した。


「何だよ、アルラ。お前の魔物がへなちょこなせいで、仕留め損ねたんだぜ」


バジリはアルラの方を振り向いて言った。


「何よ、あんたの攻撃がのろまだからかわされたんでしょうが」


アルラが言い返した。


「何だと?」


「何よ?」


そう言い合う二人を睨みつけながら、フレイは呼吸を整えた。


(さっきの黒髪の攻撃、確実にウチの心臓を狙いに来てた。何なんだこいつら、魔物を操ったり、でかい爪を持っていたり。まるでニール……まさか!)


「……お前ら、鬼女って奴か?」


フレイが二人の会話を遮って言った。


「ん、そうだけど。それがどうかしたか?」


バジリがフレイの方を見て言った。


「何しにこの森に来たのか知らないけど、お前らの好き勝手にはさせない! お前らの洗脳もニールみたいに解いてやる!」


そう言うとフレイは二人に向けて剣を構えた。


「……プッ、プハハハハハハ! 洗脳? 俺達が? 笑わせてくれるぜ!」


バジリは腹に手を当てて笑い出した。


「俺達をあんな入れ物野郎と一緒にすんな! 俺達は自分の意思であの人に付き従ってんだよ、アホが!」


バジリはフレイに向けて言った。


「入れ物? あの人?」


フレイが呟いた。


「バジリ、おしゃべりが過ぎるわよ。まどろっこしいのは嫌いなんでしょ? なら、とっとと始末しなさい」


「けっ、はいはい、分かったよ」


アルラの言葉に答えたバジリは、フレイに向けて両手の爪を構えて突進を繰り出してきた。

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