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魔女とトレジャーハンター2

「ふぅ、これで最後ね」


遺跡内部を進み、出現した魔物の群れを倒したウォルタが言った。


「しかし、進むにつれて魔物が増えてきやがったな。貴重な宝があるってのも本当かもしれない」


同じく戦闘を終えたフレイが言った。


「いやぁ、助かったであります。しかし、お二人共お強いでありますな。ここまで強い魔女の方とご一緒するのは初めてであります」


戦闘を終えた二人を見つめるベルが言った。


「へへへ、そこまで褒められると照れるな」


フレイが鼻先を指で擦りながら言った。


「まあ、魔女の仕事は魔物退治が多いから、自然と腕も上がるってものよね。あなたも魔女ならそう思わない?」


ウォルタが尋ねた。


「いやぁ、自分、魔力こそあるものの魔法はからっきしで、お二人がちょっと羨ましいであります」


「そうなのか。でもそれなのにこんな危険な仕事を続けているなんてすごいな」


「まぁ、確かにトレジャーハンターは危険と隣り合わせ、実際、魔法が役に立たず危ない目にも何度もあったであります。けど、それでも続けてこれたのはこのハンターアイテムがあったからであります」


ベルが自身のバッグを指差しながら言った。


「遺跡に入る前に言ってたやつか、何なんだそれ」


フレイが尋ねた。


「遺跡調査に欠かせない様々な便利道具であります。例えばこれなんかは……」


ベルがそう言いかけた次の瞬間、再び足元のタイルがへこみ、スイッチの入る様な音が響いた。そして、ベルの足元の周囲のパネルが突如、消失し、その足元は空洞へと姿を変えた。ベルが作動させたパネルは落とし穴のスイッチだったのだ。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


ベルは落とし穴へと吸い込まれて言った。


『ベル!』


ウォルタとフレイが穴を覗き込んだ。


「し、心配ご無用! こんな時こそこれの出番!」


そう言うとベルは、先程バッグから取り出した右手で握った球状のアイテムを壁に叩きつけた。


「トリモチボール!」


そう叫んだベルの右手は叩きつけられ飛散したトリモチの様な物体により壁と接着され、ベルの落下は止まった。


「す、すげぇ! 壁にくっついた!」


穴を覗くフレイが言った。


「驚いてる場合じゃないでしょ! ベル! 今、ロープを降ろすわね!」


ベルはウォルタが降ろしたロープを左手で握った。しかし、ベルはそのまま動こうとしなかった。


「どうかした?」


ウォルタが尋ねた。


「い、いえ、今使ったハンターアイテム、トリモチボールと言って、破裂させる事で強力な粘着性を持つ物質を放つものなのでありますが。これが一回着くと、はがし剤を使わないとはがれないのであります。ちょっと待って欲しいであります」


そう言うとベルはバッグをあさり始めた。


「……なんか、便利なのか不便なのか分からないな」


フレイが冷や汗を浮かべながら言った。そして、数分後、手からトリモチの様な物体をはがし終えたベルはロープを伝って、二人のもとへと戻ってきた。


「いやぁ、危機一髪でありました」


ベルが一息ついてそう言った。


「無事でなによりだ」


フレイが言った。


「しかし、お二人に迷惑ばかりかけてしまい、まったく、自分が不甲斐ないであります」


ベルが肩を落としながら言った。


「そんなことないわよ、落とし穴に落ちた直後に、冷静に道具を使えるなんて中々できるものじゃないわ。流石はプロのトレジャーハンターね」


「そ、それほどでもないでありますよ。まあ、自分に足りない力を道具の力でカバーする。それが自分のモットーでありますから!」


ベルが笑顔でそう言った。そして、三人は遺跡の更なる奧へ足を進め始めた。





「随分と開けた場所に出たわね」


ウォルタが言った。遺跡内の通路を抜けた三人は広い空間へと辿り着いた。


「おい見ろよ二人共。あそこにあるの宝箱じゃないか?」


フレイが指さした先には、装飾の施された箱が置かれていた。


「間違いないであります! 早速、調べてみるであります!」


ベルは早歩きでその箱へと近づいた。


「ちょっと! なんか怪しいわよ、もっと慎重に……」


ウォルタがそう言いかけた次の瞬間、ベルの進行方向の床が突如割れて、地面から岩石でできた巨人が現れた。


「ま、魔物ぉ⁉」


突然、目の前に現れた魔物を見て、ベルはその場に尻餅を着いた。


「フレイ! ベルを!」


「ああ!」


そう叫ぶとウォルタは魔物に向けて銃を構え、引き金を引いた。そして、ウォルタが魔物を牽制している隙に、フレイはベルを魔物から遠ざけた。


「か、かたじけないであります」


「いいって、それより気をつけろ、おそらくこいつがこの遺跡の親玉だ!」


「取り敢えず、距離を取るわよ。相手の遠距離攻撃に備え……」


ウォルタがそう言いかけた次の瞬間、魔物は自らの両腕を、まるで弾丸を発射するかのように、三人目掛けて高速で伸ばしてきた。三人は何とかその攻撃をかわしたが、両腕の拳が直撃した壁は粉々に崩れ去った。


「う、腕が伸びたぁ⁉」


フレイが言った。


「しかも、とんでもない破壊力……当たったらひとたまりもないわ!」


ベルをかばいながらウォルタが言った。そして、魔物は伸ばした腕を本体まで縮めると、再び高速で両拳を飛ばしてきた。三人は再びそれをかわし、拳は再び壁に直撃した。


「くっそぉ! こんな腕ウチの剣で!」


そう言ってフレイは伸び切った魔物の腕に向かって剣を振り下ろした。しかし、フレイの剣が到達するよりも先に、魔物はその腕を本体に縮め戻していた。


「伸ばすだけじゃなく、縮めるスピードまで速いなんて……」


そう言いかけたウォルタの言葉もよそに、魔物は再び三人に両拳を飛ばして来た。


「うおっと、あぶねぇ! ウォルタ! 何か策は?」


「今、考えてるけど、攻撃が激しすぎてそれどころじゃ!」


「自分の出番でありますな」


ベルはそう言うと、二人の前に移動した。


「ベル、何を?!」


ウォルタが言った。


「策を練る時間を稼げばいいのでありますな。それなら自分の魔法で……」


ベルはそう言うと魔物に向けて右手のひらを向けた。


「ベルの魔法? 一体どんな?」


フレイが言った。そして、ベルは右手に魔力を集中させると叫んだ。


「煙魔法!」


次の瞬間ベルの右手のひらから大量の煙幕が放出された。そして、部屋一帯は一瞬で煙に包まれた。


「……って、本当に時間を稼ぐだけなのか」


フレイが言った。


「め、面目ない、これが自分の使える唯一の魔法なのであります」


ベルが申し訳なさそうに言った。


「ま、まあ煙のおかげで魔物も私達を見失って攻撃を中断したようだし、助かったわベル」


ウォルタが冷や汗を浮かべながら言った。


「お、お安い御用であります。してウォルタ殿、策の方は?」


ベルが尋ねた。


「そうね…………ベル、もう一度あなたの力を貸してほしいのだけど」


「自分の力でありますか? そう言われても、ご覧の通り自分の魔法はこれしか」


「何言ってるの、さっきあなた言ってたじゃない、自分に足りない力を道具の力でカバーするのがモットーだって」


「……と言う事は」


ベルが言った。


「ええ、頼むわ」


ウォルタは二人に作戦内容を告げた。


「じゃあ二人共、作戦通りにお願いね」


「はいであります!」


「おう!」


二人は力強い返事をした。


「私はこれを」


『チャージ』


ウォルタは握った魔法銃に魔導石をスキャンした。





煙で標的を見失った魔物はその場に立ち尽くしていた。しかし、次の瞬間、周囲の煙を切り裂いて、一発の銃弾が姿を現し、魔物のそばを通過した。魔物は確信した、今の銃弾の飛んできた方向に標的が存在すると。そして魔物はその銃弾の発射地点と思われる方向に、高速で両腕を伸ばし、拳を叩きつけた。しかし、手応えはなかった。魔物は再び攻撃に移ろうと両腕を縮ませようとした。だが、その腕が本体に戻ることはなかった。


「高速で伸縮する両腕、確かに驚異的な武器だわ。でも、その弱点は本体と一体化しているところにある」


ウォルタの声と共に晴れた煙の先では、大量のトリモチ状の物体によって、壁とがっちり接着された魔物の拳が存在した。


「トリモチボール計十発! 出血大サービスであります!」


ベルが叫んだ。そして、動きを封じられた魔物の両腕、は炎の斬撃によって切り裂かれた。


「武器は取り上げたよ! ウォルタ!」


フレイが叫んだ


「これで終わりよ」


ウォルタの構えた魔法銃から放たれた巨大な魔力の閃光は、魔物の体を貫いた。魔物は光の粒子となって消えた。





「魔の遺跡調査終了であります!」


ベルが言った。三人は調査を終え、遺跡の外へと戻ってきた。


「ふぅ、無事に帰ってこれたな」


フレイが一息ついて言った。


「ええ、それに、大きな収穫もあったわね」


ウォルタがベルの抱えた宝箱を見て言った。


「なぁ、中身は何なんだ?」


フレイが宝箱に顔を近づけて言った。


「早速、開けてみるであります!」


ベルはバッグから取り出した道具を使い、宝箱を開けた。


「……ちょっとこれ、魔導石じゃない!」


宝箱の中身を見てウォルタが叫んだ。


「こいつは間違いなくお宝だな!」


フレイも笑顔でそう言った。


「なるほど、この魔の遺跡は魔導石の管理場所であったでありますか」


ベルが遺跡の方を振り返りながら言った。


「これだけ厳重な場所に保管されていたってことは、相当な能力を秘めているものなのかもね」


ウォルタが言った。


「ええ、どんな能力を秘めているのかは分からないでありますが、きっと、お二人なら使いこなせるはずであります」


「え、私達?」


ウォルタが尋ねた。


「はい、この魔導石はお二人に差し上げるであります。 自分が魔導具を持っていないからというのもあるでありますが、この魔導石はお二人が持っていた方が確かな力になると思うのであります」


そう言うとベルはウォルタに魔導石を差し出した。


「私達はかまわないけど、本当にいいのかしら?」


ウォルタが尋ねた。


「はいであります! 魔導石などなくても、自分には心強いハンターアイテム達がついているでありますから!」


ベルが笑顔で言った。


「ふふ、そうだったわね」


ウォルタは笑顔でそう言うと、ベルから魔導石を受け取った。


そして三人は遺跡を後にした。

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