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魔女とトレジャーハンター1

「魔の遺跡? なんだそれ?」


朝食のスープをスプーンですくう手を止めたフレイが尋ねた。


「名前通りの遺跡よ。凶暴な魔物や、誰が作ったのかも不明な罠が大量に存在する危険な場所と言われているわ」


向かいの席に座り、コーヒーを口にしたウォルタが言った。


「なるほど。で、その遺跡調査の専門家の魔女、トレジャーハンターの護衛が今日の任務だと」


テーブルの上に置かれた依頼書に目を通しながらフレイが言った。


「ええ、そうよ。ただでさえ危険な場所の中で、護衛対象の命を守り抜く。はっきり言って今回の仕事、生半可なものじゃないわ」


ウォルタが真剣な表情で言った。


「なぁに、要はその遺跡の中の魔物も罠も突破すればいいんだ。ウチら二人なら成し遂げられるさ」


フレイが笑顔でそう言った。


「その言葉を待っていたわ。この仕事絶対に成功させましょう!」


「おう!」


二人はデコ山の更に北に位置する、魔の遺跡目指して出発した。





「しかし、そんな危険な場所の調査を仕事にしている、トレジャーハンターっていうのはどんな人なんだろうな?」


魔の遺跡に向けて足を進めるフレイが言った。


「私もトレジャーハンターに会うのは初めてだけど、誰も近寄りたがらない遺跡の調査を進んで行う度胸の持ち主だもの、きっと厳格な方にちがいないわ」


隣を歩くウォルタが言った。


「厳格かぁ、まあそりゃそうか、命がけの調査だもんな」


「そうよ、失礼のないようにしないと。……と、着いたわね」


そうして遺跡に到着した二人を待ち構えていたのは、オレンジ色のロングヘアーをした一人の少女だった。


「ようこそ魔の遺跡へ! 自分はここの調査を請け負ったトレジャーハンター、ベルと申す者であります! 本日はよろしくお願いするであります!」


ベルは笑顔でそう言うと、二人にお辞儀をした。


「……厳格?」


フレイが呟いた。


「ちょっとフレイ!……ええと、本日、護衛を担当させて頂く、ギルド、ヴィネアよ。私がウォルタ、こっちがフレイ」


「ウォルタ殿にフレイ殿でありますな。自分は堅苦しいのがどうも苦手なので、お二人の事は護衛ではなく、同じチームの仲間として接しさせて頂くであります。何か質問があれば気軽に言って貰って大丈夫でありますよ」


「じゃあ、早速」


フレイが手を挙げた。


「はい、フレイ殿! なんでありますか?」


ベルが尋ねた。


「ここ、ご飯粒ついてるよ」


フレイが自分の口元を指差しながら言った。


「え……あ、本当であります! いやはやお恥ずかしい、寝坊して急いで朝食を食べたものでありますからつい」


口元のご飯粒を取ったベルは頬を赤らめながら言った。


「寝坊って、大事な調査の日に……」


ウォルタは冷や汗を浮かべながらつぶやいた。


「あははは、面目ないであります。し、しかし、調査の準備に抜かりはないでありますよ! 必需品のハンターアイテムもちゃんと用意して……あれ? 確かここのポケットに……あれ? おかしいでありますな……」


ベルは自身のバッグの中をあさり始めた。


「流石トレジャーハンター。魔の遺跡突入を前なのに余裕があるな」


フレイが関心しながら言った。


「いや、なんかそれとは違う感じがするけど」


ウォルタは冷や汗を浮かべながら言った。


「あ! あったであります! よかったぁ……と、二人共お待たせしたでありますな。では、魔の遺跡調査に……しゅっぱーつ!」


そう言ってベルが天に向けて突き上げた拳は、近くの樹木の枝にぶつかった。


「……い、痛いであります」


ベルはその場にうずくまった。


「お、おい 大丈夫か?」


フレイがそばに駆け寄った。


「……先が思いやられるわ」


ウォルタはため息混じりにそう言った。





「……中は意外と明るいのね」


遺跡内に突入し、内部を歩くウォルタが言った。


「魔の遺跡全般は遺跡内に強力な魔力が宿っているであります。だから内部はその影響でとっても明るいのでありますよ」


同じく内部を歩くベルが答えた。


「へぇ、そりゃライトいらずで便利だな」


同じく内部を歩くフレイが言った。


「便利って……それだけこの遺跡が異常ってことでしょう、気は抜けないわよ」


ウォルタが周囲を警戒しながら言った。


「気持ちは分かるでありますが、そんなに神経質になることもないでありますよ。魔の遺跡というと、一般的には魔物と罠だらけというイメージが強いでありますが、実際はそんなこともなかったりするであります」


ベルが言った。


「そうなのか?」


フレイが尋ねた。


「はい。自分が以前調査を行った魔の遺跡と呼ばれた場所は、魔物も罠も一切なく、ただ魔力が充満しているだけの普通の遺跡でありましたから。きっとこの遺跡も大したものじゃ……」


そう言いかけた次の瞬間、ベルの足元のタイルがへこみ、スイッチの入る様な音が響いた。


「何、今の音?」


ウォルタが周囲を警戒した次の瞬間、三人の前方から無数の火の玉が飛んできた。


「フレイ!」


「ああ!」


ウォルタの言葉を受けたフレイは咄嗟にベルの前に移動した。そしてウォルタは腰のホルスターから素早く魔法銃を引き抜くと、飛んでくる火の玉に向けて銃を構え、引き金を引いた。火の玉は全て水魔法の銃弾によってかき消された。


「……ふぅ、どうやらこの遺跡は大したものであるそうね」


銃を降ろしたウォルタが言った。


「ベル、大丈夫か?」


フレイが背後のベルに尋ねたが、ベルの身は小さく震えていた。


「おい、どうかしたのか?」


「……いえ、これは武者震いであります! 突入して早々にこのような罠の歓迎をうけるとは……それだけ貴重な宝がこの遺跡に眠っているということ! トレジャーハンターの血が騒ぐであります!」


勢いよく顔を上げたベルが言った。


「この遺跡是非とも突破してみたくなったであります! ウォルタ殿! フレイ殿! 先に進みましょう!」


そう言うとベルは大股で先に歩き出した。


「……なんか、すごい奴だな」


フレイが冷や汗を浮かべながら言った。


「厳格には程遠いけど、度胸はとんでもないわね」


同じく冷や汗を浮かべたウォルタが言った。

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