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魔女と海の精霊2

「ここねポイントは」


先程の岩場から、魔物の出現するポイントの砂浜に移動したウォルタが言った。


「危険だからディーネは安全な場所に避難して。フレイ、準備はいいわね」


「いつでもいいよ!」


「私も大丈夫です!」


ウォルタの言葉に二人が答えた。


「それじゃあ、行くわよ!」


その言葉と共に、ウォルタは遠くの海面に向けて構えた魔法銃の引き金を引いた。放たれた銃弾は海面をえぐり、その衝撃によって、海上に巨大な水柱が発生した。


「……さあ、出てきなさい」


そのウォルタの言葉に反応したかのように、突如、銃弾の着弾地点の海面から巨大な泡がいくつも発生した。そして、次の瞬間、海面から三つのサメの様な頭部を持つ巨体が、とてつもない水しぶきと共に、姿を現した。


「で、出たぁーっ! そいつですそいつ、トライシャーク!」


遠くの砂浜からディーネが叫んだ。


「なるほど、こんなのが居たんじゃ海水浴も楽しめないな。ディーネ! 危ないからもっと下がってろ!」


「は、はいい!」


フレイの言葉を受けてディーネは更に遠くへと避難した。


「それじゃあ戦闘開始よ。フレイ! 奴を引き付けておいて!」


「任せろ!」


ウォルタの言葉に答えたフレイは、バッグから魔導石を取り出すと、握った魔法剣にスキャンした。


『ウェイブ』


魔導石から音声が鳴り、魔法剣が斬撃発射可能になった。


「水属性相手じゃ、炎の斬撃は効かないけど、注意を引き付けるぐらいなら!」


フレイは、魔物に向けて構えた剣を振り下ろし、魔物目掛けて炎の斬撃を発射した。斬撃は魔物の体に命中し、魔物の注意はフレイへと向いた。そして、魔物はフレイに向けて水で作られたカッターの様な物体を発射してきた。


「おっと! 作戦成功! 後は頼んだウォルタ!」


魔物の放ったカッターをかわしながらフレイが言った。


「任せなさい! 早速、使わせて頂くわ」


ウォルタはディーネから受け取った魔導石を手にすると、それを魔法銃にスキャンした。


『チャージ』


魔導石から音声が鳴った。しかし、魔法銃には大きな変化が見られなかった。


(フレイの持つウェイブの魔導石と同じタイプかしら、それにチャージってことは……)


「フレイ! 悪いけどもう少し時間を稼いでもらえない? この能力、発動まで時間がかかる様なの!」


ウォルタが叫んだ。


「任せろ!」


フレイはそう返答し、魔物の放つカッターをよけては、斬撃を放つのを繰り返した。その間を利用してウォルタは魔法銃に魔力を供給し続けた。


(この魔力の流れの感じ、やはりこの魔導石の能力は、魔導具の核の魔力容量を底上げして、魔導具に込める魔力を増大させるもの。そして、魔法銃の場合、集めた魔力を銃弾にして放出することでより強力な一撃を生み出せる。最も、魔力の供給に普段の何倍もの時間がかかるようだけど)


「どうだウォルタ! まだかかりそうか?」


魔物と対峙し続けて、息を荒くしたフレイが尋ねた。


「もう少しよ! …………よし、終わったわ!」


銃に魔力を供給し終えたウォルタは魔物に向けて銃を構え、その引き金を引いた。銃口から放たれた魔力の銃弾は、通常の魔法銃から放たれる物の何倍もの大きさで、周囲の空気を切り裂いて進むと、海上の魔物の体に命中し、衝撃によってその周囲に巨大な水柱を発生させた。


「何て、威力なの⁉」


射撃の反動を受け、倒れかけたウォルタが言った。


「これが神器っつう奴の力か⁉」


ウォルタの放った銃弾の威力を目の当たりにしたフレイが言った。


「これだけの威力の弾丸をお見舞いしたんだもの、魔物もひとたまりもないはず!」


ウォルタがそう言った次の瞬間、勝利を確信したウォルタの目に信じられない光景が飛び込んできた。なんと、海上の水柱が晴れた先で、魔物の三つの頭の内の一つの口がウォルタの放った銃弾を受け止めていたのだった。


「ちょっ、どういうこと⁉」


ウォルタがうろたえた次の瞬間、魔物の三つの頭の内の一つはその銃弾を飲み込み、残りの二つの頭の内の一つが、口から飲み込んだ銃弾をウォルタ目掛けて勢いよく吐き出した。


「まずい!」


ウォルタがそう思ったのもつかの間、発射された銃弾はウォルタの右脚をかすめた。


「ウォルタ!」


フレイが叫びながら、ウォルタのもとへ駆け寄った。


「……大丈夫、かすり傷よ……でも、まさか攻撃をそのまま返してくるなんて」


ウォルタが右脚を抑えながら言った。


「くそぅ、仕留めたと思ったのによ……厄介な能力持っていやがる!」


フレイがウォルタの体を支えながら言った。


「そうね確かに厄介な能力だわ。けど、ディーネから受け取った魔導石の力も確かなものだった。何とか突破口を見つけてその一撃を食らわせてやるわ。フレイ! 私はもう一度、奴にチャージした銃弾を打ち込んで能力の穴を探し出す! 時間稼ぎをお願い!」


「分かった! けど無理はするなよ!」


フレイはそう言うとウォルタから離れ、再び魔物に向けて炎の斬撃を放ち、注意を引き付け始めた。そして、しばらくして銃に魔力の供給を終えたウォルタが再び魔物に向けて、チャージした魔力の銃弾を放った。しかし、やはり銃弾は魔物の口に吸い込まれ、別の頭の口からそれは吐き出された。


「……なるほどね」


魔物が吐き出した銃弾をかわしたウォルタが言った。


「おーい! 何か分かったか?」


そう叫びながらフレイがウォルタそばに駆け寄った。


「……そうね、まずあの魔物の能力は、身の危険になると判断した遠距離型攻撃を三つの頭の内の一つの口が吸収し、吸収した攻撃を残りの二つの頭の内の一つが口から吐き出すというものよ」


「なるほど、だから自分が有利な火属性の斬撃はわざわざ飲み込まないってわけか」


「そう、それで奴を倒す方法は二つ、一つ目は魔物の三つの口に三方向から同時に銃弾を食らわすこと。二つ目は魔物の口以外の場所に銃弾を食らわすことよ」


「うーん……三つの口に同時には無理があるな。仮に銃が三つあったとしてもウチは水属性の銃弾を撃てないし、ウォルタが握れる銃の数は二丁が限界だ」


「となると……残る方法は口以外の場所を狙うしかないわね。最も、あれだけの速度で放たれた銃弾を確実に口で受け止める正確さ、口以外を狙うのは至難の業よ」


「至難の業ってことは何か策があるんだな?」


「もちろんよ、かなりの難易度が高いけど」


そう言うとウォルタはフレイにその策を告げた。


「……分かった、やってみよう」


フレイが頷いた。


「私の魔力残量から計算してもチャンスは一回切り、頼んだわよ、フレイ」


フレイは再び魔物の引付役を、ウォルタは銃への魔力の供給を開始した。そしてしばらくしてウォルタが叫んだ。


「完了よ! フレイ、準備を!」


「おう!」


二人は魔物と向かい合うように波打ち際に並び立つと、それぞれ、魔法銃と魔法剣を構えた。


「いっせーの……」


「せ!」


掛け声と共に、魔法銃から魔力の銃弾が、魔法剣から炎の斬撃が放たれ、二つは魔物目掛けて直進した。そして、魔物は魔力の弾丸を受け止めようと、向かって来る銃弾目掛けて口を大きく開けた。しかし、その口に銃弾が収まる事はなかった。魔物の口に銃弾が吸い込まれる直前、直進する銃弾の頭頂部を炎の斬撃がかすめ、その進行方向を下方向にそらしたのだった。コースのそれた弾丸は魔物の予測を裏切り、胴体に直撃した。


「やはり火属性とはいえ斬撃は斬撃。例え相性の悪い水属性の銃弾相手でも、その進行方向を変える程度の威力はあったわね。しかし、よく衝突のタイミングを合わせられたものよ、流石はフレイと言ったところかしら」


ウォルタの言葉と共に銃弾を食らった魔物は光の粒子となって消えた。





「おーい! ディーネ! 魔物は倒したぞぉー!」


フレイがディーネが避難した地点を周りながら叫んだ。しかし、ディーネからの返事は帰って来なかった。


「……おかしいな、どこに行ったんだ?」


「ちょっと、フレイ! こっちに来て!」


ウォルタに呼ばれてフレイは波打ち際に戻った。


「……何だこれ?」


そう言ったフレイが目にしたのは波打ち際に横たわった、一つの小瓶だった。


「中に紙が入っているわね……文字が書かれてる、読んでみるわ」


ウォルタは小瓶を拾い上げ、中から取り出した紙を広げて読み始めた。


「ウォルタさん、フレイさんへ。急に姿を消してしまい申し訳ございません。地上での滞在時間の限界が訪れた為、海に帰らせて頂きました。しかし、お二人の活躍は海の中からしっかりと見させて頂きました。そしてトライシャークを倒して頂きありがとうございます。これでまた、この海岸も沢山のお客さんが訪れてくれるようになります。本当にありがとうございました。海の精霊ディーネより……ってこれって」


ウォルタは顔をしかめた。


「……海の中から送ってきたのか。やっぱりディーネは海の精霊だったんだな」


フレイが笑顔でそう言った。


「……まったく洒落たことしてくれるじゃないの」


ウォルタがそう言って笑みを浮かべた次の瞬間、二人の目に暖かい光が飛び込んできた。それは遥か彼方で海に身を隠し始めた太陽の光だった。


「うおーっ! 綺麗だなぁ!」


フレイが光に照らされてながら叫んだ。


「これはディーネからの感謝の贈り物ね。最高の報酬だわ」


ウォルタも海を眺めながら呟いた。


「おーい! ディーネ! 今度会ったら一緒に泳ごうなぁーっ!」


フレイが海に向けて大きく手を振りながら叫んだ。そして二人は沈みゆく太陽の光を背に、海岸を後にした。

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