二人の魔女5
「ケガは?」
「いや、ないよ。けど、なんでこいつも火の玉を?」
「樹木の魔物が火炎の攻撃、これは何かありそうね」
「ん? あれは!」
フレイはポカツリーの胴体の右側に何か光るものを見つけ、叫んだ。
「あれ、ウチの剣だ! 盗まれたウチの剣があいつに刺さってる!」
「なんですって!」
ウォルタはポカツリーの胴体の右側に視線をやった。
そして、そこに一本の剣があることを確認した。
「……なんで盗まれた剣がこんな危険な森の最深部に」
「何でもいいさ。とにかくあれさえ使えればこんな木の化け物なんか一撃だ!」
そう言うとフレイは剣に向かって走り出そうとした。
「待って!」
ウォルタはフレイの肩を掴んだ。
「な、何だよ?」
「……剣は私が取りに行く。あなたは私に襲いかかる枝の排除をお願い」
「……分かった!」
ウォルタはそう言うと、ポカツリーに刺さった剣目掛けて突っ走った。
そんなウォルタ目掛けて、ポカツリーの枝達が襲い掛かかるが、それらはフレイが放つ火の玉の前にかき消されて言った。
そして剣のもとへたどり着いたウォルタは、剣の柄を掴み、それをポカツリーから勢いよく引き抜いた。
「よし! これで!」
しかし次の瞬間、彼女の足元から小さな無数の根のようなものが現れ、彼女の足に絡みついた。
「……残念、一手遅かったわね。フレイ!」
ウォルタはフレイの足元に抜き放った剣を投げた。
「ウォルタ! ……サンキューな、こいつがあれば……」
フレイは足元の魔法剣を拾い上げ、それの柄を力強く握った。
それと同時に剣の刃に刻み込まれた魔法陣が発光し、刃全体が炎をまとった。
フレイはその剣を構えると、ポカツリー目掛けて、大地を蹴って飛翔した。
「これでも……くらいやがれぇ!」
フレイの振り下ろした剣の一撃はポカツリーの胴体を真っ二つに切り裂いた。
そして、斬撃と共に放たれた火炎は、その真っ二つになった胴体に燃え広がり、ポカツリーの体を光の粒子に変えて、消滅させた。
「……ホントに一撃とは、まいったわね」
ポカツリーが消滅したことで、根から解放されたウォルタは、辺りに舞った光の粒子を見ながら言った。
「いや、ウォルタがこの剣を渡してくれたおかげだよ。こいつは二人の勝利だな!」
剣を担いだままのフレイが、ウォルタに笑顔を向けた。
「……フレイ。その、あなたを足手まとい扱いして悪かったわ。今回の仕事、私一人じゃ絶対に果たせなかった」
ウォルタはフレイに顔を向けた。
「誰かと力を合わせること……それがギルドには必要なのかもね」
「だろ? 最初からそう言ってんじゃん、そっちのほうが楽しいって!」
フレイは満面の笑みでそう言った。
「……ふふ、そうかもね」
ウォルタも笑顔で答えた。
そして、二人はポカの森を後にした。
翌日、都市ドマンナカのウォルタの家。
「起きなさい、フレイ! 仕事行くわよ!」
ウォルタはフレイの上の布団を引き剥がしながら言った。
「……うーん後、30分……むにゃむにゃ」
フレイはウォルタに鼻ちょうちんを見せつけながら言った。
「……はぁ、やっぱり先が思いやられるわね」
二人の魔女の物語は始まったばかり。