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魔女と決戦2

その頃、都市の入り口の大門に、一人の少女の姿があった。


「……さて、そろそろ始めるか」


「何を始めるというのですか」


門をくぐろうとしたニールの背中に何者かの声が響いた。


「……私の背中を取るとは、何者です?」


ニールは前を向いたまま、背後の声の主に尋ねた。


「初めまして、わたくしギルド、フォカロルのフウと申します。紫色のサイドテール、あなたがニールさんですね」


ニールの背後に立ったフウが答えた。


「……私の名を、それに何故、ここに魔女が?」


ニールは眉をひそめた。


「あなたの考えを見越して、ここに残らせて頂いたのですよ」


フウはそう言うと話しを続けた。


「神殿襲撃は囮、本命はあなたの都市への侵入。大袈裟な予告で神殿前に都市の魔女達を集め、魔物と衝突させ、その隙に手薄になった都市にあなたが入り込み、たった今、口になさった何かを始める。そう言う手筈だったのでしょうが、残念でしたね」


フウはそう言うと、右手の収納魔法陣から一本の槍を取り出して構えた。


「……私を止める気ですか?」


背中を向けたままのニールが尋ねた。


「ええ、そう見えませんか?」


「……申し訳ございません。私、魔女はあの二人以外興味がないんです」


ニールの言葉と共に、彼女の足元が大きく揺れ、地面割って、地中から魔物の大群が飛び出した。


「……お相手はその子達で勘弁なさって下さい」


ニールはそう言い残すと姿を消した。


「やはり、一筋縄ではいきませんか……行きますよ、皆さん!」


フウの言葉と共に、近くに身を潜めていた、ギルドのメンバーが飛び出し、フウと共に、襲い来る魔物に、応戦した。





「……おい、なんだよこれ」


数分後、都市に戻って来たフレイは街の様子を見て、絶句した。街に中には大量の魔物がはびこっており、周囲の建物は倒壊し、辺りは悲鳴を上げながら逃げ惑う人々であふれていた。


「……予想通り最悪の結果だわ、フレイ! 魔物を蹴散らすわよ!」


二人はそれぞれ魔導具を構えると、近くの魔物の群れへと飛び込もうとした。しかし、その魔物たちは突如、発生した竜巻によって切り裂かれ、光の粒子となって消えた。


「今のは魔法! 街にもまだ魔女達が残っていたのか!」


フレイの表情に希望が戻った。


「この、風魔法。まさか!」


周囲を見回したウォルタは魔物の群れの中で槍を振り回すフウの姿を見つけた。


「フウ!」


ウォルタはフレイと共にフウのもとへ駆け寄った。


「……ウォルタさん! フレイさん! 戻って来て下さったのですね」


目の前の魔物を蹴散らしたフウが二人を発見して安堵の表情を見せた。


「この街の状況、やはりニールが?」


ウォルタがフウに尋ねた。


「ええ、数分前に大門から都市へと侵入されました。捕獲を試みたのですが叶わず。面目ないです」


フウは唇を噛み締めた。


「そうだったの、それで彼女の行方は分かる?」


ウォルタが尋ねた。


「ええ、彼女の服に発信機をつけさせて頂きました。この端末で場所が特定できます」


そう言うとフウは懐から取り出した端末ウォルタに見せた。


「流石ね。そうとなれば、とっとと魔物を蹴散らして彼女を……」


「いえ、ここは私共に任せて、お二人は彼女を追ってください」


ウォルタの言葉を遮る様にフウが言った。


「先程、彼女が言っていました、魔女はあの二人以外興味はないと。その二人とはウォルタさんとフレイさんのことで間違いない。あなた方が彼女との決着を望む様に、彼女もまた、あなた方との決着を望んでいるはずです」


そう言うとフウは手に持った端末をウォルタに差し出した。


「フウ、あなた……分かったわ、ありがとう、ここは任せる! 行くわよ、フレイ!」


「おう! フウも気をつけてな!」


そう言うと、二人はフウに別れを告げ、駆け出した。


「……ウォルタさん、フレイさん、頼みましたよ……さあ、皆さん! もうひと踏ん張りですよ!」


フウはギルドのメンバーを鼓舞すると、眼前の魔物へと槍を構えて立ち向かった。





「発信機の場所は……掲示板前の広場ね!」


手元の端末を覗きながら走るウォルタが言った。


「待ってろよぉ、ニール! ……ってウォルタ危ない!」


近くの茂みからウォルタに襲い掛かった魔物をフレイの剣が切り裂いた。


「くそっ、ここにも魔物が。急いでるって言うのに!」


そう愚痴こぼすフレイをよそに、周囲に魔物達が次々と集まって来た。


「やるしかないようね!」


そう言って、ウォルタが魔法銃を構えた次の瞬間、二人の周囲の魔物達は突如現れた植物の蔓の様なものに縛り上げられ、消滅した。


「お二人共、助太刀致します!」


そう言って、二人の前に一人の少女が現れた。


「あなたは……ルリ!」


現れたのは、以前グルの森で二人が救出した魔女、ルリだった。そして、彼女に続くように、彼女のギルド、シトリーのメンバーが各々の魔導具を構えて、残りの魔物達に向かい合った。


「今度は私達がお二人を助ける番です! さぁ ここは気にせず先へ!」


ルリは剣を構えると二人に向かって言った。


「分かった、頼んだわ!」


「ありがとうな!」


そう言うと、ウォルタとフレイの二人は、ルリに礼を告げ広場に向けて駆け出した。やがて二人は広場へと続く道に差し掛かったのだが。


「何だこのでけぇ魔物は?!」


そう驚いたフレイの目の前には、付近の建築物の倍はある巨体を持った岩石の巨人が立ちふさがり、その巨人は二人に向かって襲い掛かった。しかし、その巨人は突如現れた光の結界に閉じ込められ、身動きが取れなくなった。


「この結界はまさか!」


ウォルタ結界を見上げて言った。

「ウラ! サラ!」


フレイの言葉通り、結界を放ったのはかつて共に子猫探しをした双子の魔女、ウラとサラだった。


「こいつは私達に任せて!」


「お二人は先に!」


二人にがそう言った矢先、魔物の近くの地面から、大地を割って、もう二体の岩石の巨人が現れた。


「ちょっと! まだいるなんて聞いてないわよ!」


ウラがたじろいだ次の瞬間、どこからともなく何者かの声が響いた。


「とうっ!」


その言葉と共に現れた者は、大地を蹴り、大空に飛翔すると、巨人の一体に飛び蹴りを食らわした。


「魔物を素手で⁉」


サラが口を開けて驚いた。


「こんなことできるのは……」


ウォルタは苦笑いを浮かべた。


「師匠!」


フレイの言葉と共に、地面に着地したウォルタとフレイの魔女の師匠ことサナは、二人に向けてサムズアップした右手を突き出した。


「二人共、加勢に来たぞ! それと、ウォルタ! カンカと言う魔法銃職人から餞別だ! 受け取れ!」


サナはそう言うと背中に背負っていた物をウォルタに投げ渡した。


「重っ! ちょっと、何よ……って、これあの時の試作品の!」


ウォルタがサナから受け取ったのは、かつてウォルタが試用を行った魔法砲だった。


「……まったく、随分と邪魔くさい餞別渡してくれるじゃない、あの職人さんは!」


口から出た文句とは裏腹にウォルタは笑みを浮かべた。


「ウォルタ!」


フレイがウォルタに声を掛けた。


「ええ! みんな、ありがとう! ここは任せるわ! 行くわよフレイ!」


二人は駆け付けた魔女達に礼を言い残し、目前の広場を目指して駆け出した。

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