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魔女と秘密の特訓2

それからも、ウォルタは仕事の後に、フレイに同行してサナのもとを訪れ、特訓に励んだ。そして、特訓開始から数日後、ウォルタとフレイの二人は、ある魔物退治の依頼を受けて、ザワの森へとやって来た。


「……で、昨日、やっとのこと、魔法銃を爆発させずに、的に弾を当てることが叶ったわけ」


森の中を歩くウォルタが言った。


「へぇ、やったじゃん! あれ難しいよな。ウチも最初は何度も剣を爆発させちゃったもん」


隣を歩くフレイが言った。


「……やっぱり、爆発するのね。でも、特訓を始めてから、魔導具に込める魔力を意識するようになったし、いい傾向かもね」


「だな! よぉし、今日の仕事も頑張るぞ!」


フレイが両拳を体の前で強く握りしめた。


「その仕事の目的地についたわよ」


ウォルタが足を止めた。


「魔物の名は、ザワアップル。木の実のような姿をした小型のモンスターよ。この辺に生息しているらしいけど……」


ウォルタが地図を見ながらそう言った瞬間。近くの木々が大きく揺れて、木の上からザワアップルの大群が飛び出してきた。


「出てきたわね!」


ウォルタが腰のホルスターから銃を引き抜いた。


「特訓の成果みせてやる!」


「ストォップ!」


フレイが剣を構えようとしたとき、背中に何者かの大声が響いた。


「何よ⁉」


ウォルタが後ろを振り返った。


「この声は!」


フレイも同じく後ろを振り返った。


「とおっ!」


その声と共に、二人の背後の茂みから、一人の人間が飛び出し、空中で一回転した後、二人の前に着地した。


「こんにちは! ウォルタ! フレイ!」


二人の前に現れたサナはサムズアップした右手を突き出しながらそう言った。


「師匠!」


フレイが目を輝かせた。


「……何で、ここにいるのよ」


ウォルタは頭を抱えながらそう言った。


「ハハハ! この森に入る二人の姿を偶然目にしたのでな! もし魔物と遭遇するならば、そのついでにウォルタの特訓の確認テストを行ってしまおうと考え、こっそりついてきたのだ!」


サナは腰に両手を当ててそう言った。


「ちょっと何よ、確認テストって! 聞いてないわよ!」


ウォルタはサナに詰め寄った。


「フフフ、突然で悪いが、今までの君の特訓の成果を見させてもらう! テスト内容は簡単! 君一人で、この場にいる魔物を全て、この特製の魔法銃を使って倒せば合格! ただし、今回使える魔法銃は一丁のみ! 当然、魔法銃を爆発させてしまったら、その時点でテストは失格! ペナルティとして君には一週間、私の薪割りを手伝ってもらう!」


サナはどこからともなく取り出した、特製の魔法銃をウォルタに差し出した。


「……分かったわ、やってやろうじゃない。フレイ、私の魔法銃預かってくれる?」


ウォルタはサナから特製の魔法銃を受け取り、自分の魔法銃をフレイに渡した。


「お、おう。ウォルタ、しっかりな!」


「任せなさい」


ウォルタはそう言うと、特製の魔法銃を魔物に向かって構えた。そして、フレイとサナは近くの茂みへ、身を潜めた。


(弾を発射することは二の次。まずは、最低限の魔力を込めることに集中しなきゃ!)


ウォルタは構えた魔法銃に、ゆっくりと魔力を込めようとした。しかし、それを待つことなく、魔物たちはウォルタに襲い掛かかかった。


(くっ、止まっている的と違って、待ってくれる様子はなさそうね!)


ウォルタは魔物たちの攻撃をかわし、距離を取ると、再び銃を構えた。


(いい加減に魔力を込めたら銃は爆発。かといって魔力を込めないことには弾は撃てない。まいったわね)


顔に冷や汗を浮かべるウォルタをよそに、魔物たちは次々とウォルタに攻撃を仕掛けてきた。ウォルタは銃を撃つ間もなく、防戦一方となっていった。


「ウォルタ! 師匠、このままじゃウォルタが! ウチも戦う!」


そう言って茂みから飛び出そうとしたフレイをサナの手が制した。


「待てフレイ! これはウォルタの自分自身との戦いだ! 私もこのような試練を愛弟子に課すのは心が痛む! しかし、獅子は我が子を千尋の谷に落とすもの! ウォルタのためにも、私たちはこらえなければならない! ……おっと、今言ったことはウォルタに聞かれると恥ずかしいから、内緒だぞ!」


サナは照れ臭そうにフレイにウィンクをした。


「分かったよ、師匠!」


フレイもサナに向かってウィンクをした。


「……いや全部、聞こえてるんですけど」


サナの大声はウォルタの耳にしっかりと届いていた。


(でも、このまま爆発を恐れて、銃に魔力を込めないんじゃ、埒が明かないわね)


ウォルタは魔物たちから距離を取ると、魔物の一匹に向けて銃を構えた。


(薪割りはどうでもいい、これは私のプライドの問題よ!)


ウォルタはそう自分を奮い立たせると、全神経を両手に集中させた。そして、自らの感覚に従い、握った魔法銃に必要最低限の魔力を込めた。


(今だ!)


ウォルタは銃の引き金を力強く引いた。そして、銃から放たれた閃光が魔物を貫いた。


「……やった、撃てた!」


ウォルタは思わず笑顔を浮かべた。


「このまま、行くわよ!」


ウォルタはそう言うと襲い来る魔物たちに狙いを定めて、それらを次々と撃ち落していった。


「すげぇよ、ウォルタ!」


思わず茂みから体を出したフレイが言った。


「ああ、完全に魔力のコントロールをマスターしたようだな!」


同じく茂みから体を出したサナが、目に涙を浮かべながら言った。


「これで、最後!」


ウォルタが魔法銃から放った閃光が、魔物の最後の一匹を貫いた。


「……ふぅ、これでテスト終了、アンド仕事完了ね」


ウォルタは手に握った魔法銃を見つめながら言った。


「やったな、ウォルタ!」


そう言いながら、フレイはウォルタのもとに駆け寄った。


「ああ、よくやった! 確認テスト、合格だ!」


サナはサムズアップした右手をウォルタに向けて突き出した。


「ありがとう、フレイ。それとサナも。いきなりのテストで驚いたけど、おかげでまた一つ魔女として成長できた気がするわ」


ウォルタはサナに右手を差し出した。


「礼などいらん! 師が弟子を鍛えるのは当たり前のことだからな! それに、成長できたのは、ウォルタ、君自身の努力の結果だ!」


サナはそう言うとウォルタの手を握った。


「では、ウォルタのテスト合格を祝して、今夜は私の家でカレーを振舞おうではないか! どうだ二人とも!」


「ええ、ぜひ」


ウォルタは笑顔でそう答えた。


「やったぁ! 師匠のお手製カレーだ!」


フレイがガッツポーズをして、喜んだ次の瞬間、サナの背後の樹木の上から、一匹のザワアップルが飛び出し、サナに襲い掛かった。


「師匠! 後ろ!」


フレイがサナの背後を指さして叫んだ。

「分かってるよ!」


そう言うとサナは背中を振り向くとともに、右手でザワアップルに裏拳を食らわした。ザワアップルは吹っ飛び、光の粒子となって消えた。


「……魔法も使わずに魔物を……やっぱり“師匠”には敵わないわね」


ウォルタは呆れながらも笑顔でそう言った。


「ハハハ! そうだろ!」


サナは腰に両手をあてて笑った。その夜、ウォルタとフレイの二人は、サナの家で美味しいカレーを頂いたのだった。

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