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魔女と悪霊2

その後も、額縁、観葉植物、美術品など様々な物が空中に浮遊し、二人に襲い掛かったが、恐怖を怒りで克服したウォルタの前に、ことごとく撃ち落とされていった。


「はぁ、はぁ……どんなもんよ」


「……ウォルタ、すげー」


フレイは肩で息をするウォルタを見て言った。そして辺りを見回して叫んだ。


「くそぅ、こっちから姿が見えないからって、一方的に攻撃は卑怯だぞ!」


「……悪霊にそんなこと言っても出てくるわけないでしょ」


ウォルタは一旦、平静を取り戻し、呆れた。


「しかし、ここまで姿を現さないとなると、どこかに隠れて、遠隔操作で攻撃してきている可能性もあるわね……フレイ、この屋敷でまだ探してないところは?」


「ええと、ほとんど探したと思うけど…………あっ!」


依頼書をライトで照らしながら、フレイが叫んだ。


「どうしたの?」


ウォルタはフレイの方を振り返った。


「地下室だ! ウォルタ、この屋敷の地下に、依頼主のコレクション部屋があるよ!」


「……地下室、そこにいますって言っているようなものね。行くわよ!」


「おう!」


二人は地下室へと続く階段を駆け下り、その部屋の扉を勢いよく開いた。部屋の中は、多くの高価そうな美術品が所狭しと飾られていて、依頼主の趣味がよくうかがえた。


「……何も、いない」


部屋の中を見回すウォルタがそう言ったとき、突然どこからともなく声が聞こえてきた。


『きぃたぁなぁ~』


ウォルタとフレイは声のする方に振り向いた。そこには、白いローブの様なものをかぶった、人間の上半身らしき化け物が空中に浮遊していた。


「……で、出たぁ!」


フレイは思わず後ずさりした。


「……やっと、会えたわね、悪霊さん」


ウォルタは大量の冷や汗を顔に浮かべながらなんとか強がった。すると悪霊は、部屋に飾られた美術品の一つの壺を空中に浮遊させ、ウォルタ目掛けて投げた。


「ウォルタ! 危ない!」


フレイはそう言うと、ウォルタの前に出て、振り下ろした剣で、飛んできた壺を叩き落した。


「……うわぁ! 何か、高そうな壺割っちゃった! ウォルタ、大丈夫かな?」


フレイが床に砕け散った壺をライトで照らしながら尋ねた。


「……依頼主から戦闘許可は出てるんでしょ! 大丈夫……なはずよ。それより、次、来るわよ!」


悪霊は辺りの美術品を次々に空中に浮遊させ、それらを二人目掛けて投げ飛ばした。二人は狭い部屋の中を飛び交う美術品の押収に、時にはかわし、時には叩き割って応戦した。


「やられてばっかでたまるか!」


そう言うと、フレイは悪霊との距離を一気に詰め、その体に炎の斬撃を浴びせた。


「……って、あれ?」


フレイの振った剣は悪霊の体を見事にすり抜けた。


「ちょっと、何やってんのよ!」


ウォルタが美術品をかわしながら叫んだ。


「け、剣があたらないんだよ! おかしいなぁ」


フレイは何度も悪霊に向けて剣を振ったがその刃が悪霊を捉えることはなかった。そして悪霊はフレイの体を空中に浮遊させ、勢いよく壁際に吹っ飛ばした。


「うわっ! いってぇ!」


壁に叩きつけられたフレイは腰を押さえながら言った。


「フレイ! ……魔法剣が当たらないってことは、私の攻撃も……」


ウォルタは魔法銃を悪霊に向けて構え、その引き金を引いた。放たれた弾丸は悪霊に命中し、悪霊は大きな悲鳴を上げた。


「…………私の攻撃は効くみたいね」


ウォルタは若干、肩透かしを食らったような表情をした。


「おい、ずるいよ! なんでウォルタの攻撃は効くんだよ!」


フレイが地団駄を踏みながら言った。


「さぁ、霊体には水の魔法が有効なんじゃない」


「何で?」


「……そんなの知らないわよ」


ウォルタはきっぱりと言い切った。フレイも渋々納得することにした。


「と、とにかくやるわよ。フレイは飛んでくるものを叩き落として援護して」


「まぁ、しょうがないか。分かったよ」


魔物は再び辺りの物を投げつけて、攻撃を開始した。


「存外、芸のない奴ね。一発で仕留めてやるわ!」


ウォルタは再び悪霊に向けて銃を構えた。そして、引き金を引こうとした時、悪霊はそれに気づいたかのように姿を消した。


「き、消えた?!」


ウォルタは辺りを見回したが、悪霊の姿を捉えることは出来なかった。


「どうする! ウォルタ!」


同じく辺りを見回しながらフレイが言った。


「……こうなったら、これの出番ね」


そう言うと、ウォルタはバッグから何かを取り出した。


「ルリからもらった魔導石、使わせてもらうわ!」


そう言うと、ウォルタは右手に握った魔法銃に刻まれた魔法陣に、左手に握った魔導石の魔法陣を合わせた。


『ラピッド』


魔導石から音声が鳴り、ウォルタの魔法銃が光に包まれた。そして光が晴れると、ウォルタの魔法銃の銃口は、ガトリング砲のようなものに変化していた。


「これなら、魔法弾を連射することができるわ……魔力の消費が激しくなるけど。フレイ、ちょっと下がったほうがいいわよ」


「何でだ?」


フレイが尋ねた。


「そりゃ、今から、この部屋全体に、銃弾の雨を降らすからよ!」


そう言うとウォルタは銃の引き金を引いた、すると、魔法銃から数秒間に何発もの魔法の銃弾が発射された。ウォルタはそのまま引き金を引きっぱなしにして、銃を動かし、辺り一面に銃弾を撃ち放った。部屋の中の美術品が次々と音を立てて割れていった。


「うわぁ!! ウォルタ、何やってんだ!」


部屋の隅でかがみながらフレイが叫んだ。


「まあ、見てなさい!」


すると、その銃弾の雨を受けた悪霊が、炙り出されるように姿を現した。


「姿が見えず居場所が分からないというのなら、全体を打ち抜くだけよ!」


「ご、強引すぎるよぉ!」


フレイが頭を押さえながら叫んだ。そしてウォルタは姿を現した悪霊に向けて銃を構えて言った。


「顔面に水掛けられる気分、味わいなさい!」


銃から放たれた水魔法の銃弾が、悪霊の顔面と思わしき部分に命中した。しかし、悪霊は倒れずに踏みとどまった。


「嘘⁉ まだやる気!」


ウォルタは再び銃を構えた。


『うわぁ! ギブギブ! ギブアップです!』


悪霊はそう言うと、自らの姿を幼い少女のものへと変えた。


「お、女の子?!」


フレイが目を丸くして驚いた。


「……どういうことかしら」


ウォルタが銃を下げて少女に尋ねた。


『ご、ごめんなさい! 私、レイっていいます。この屋敷の近くのお墓に眠る幽霊なんですけど、この屋敷が気に入っちゃって、それで住み着いちゃって!』


レイは頭を何度も下げながらそう答えた。


「……ほ、ホントに幽霊なのか」


フレイは信じられないというような表情をした。


「……で、あなたはなぜ、ここの住人や、私たちを驚かすような真似をしたわけ?」


ウォルタは平然な顔をして尋ねた。


『……えへへ、それが、相手に姿が見えない状態でイタズラするのが面白くって……つい調子に乗っちゃった! てへっ!』


レイは舌を出して、ウィンクをしながら答えた。


「……あきれた、怒る気力も起きないわ。それに、イタズラって、人の顔に花瓶の水掛けるなんて嫌がらせのレベルじゃない」


ウォルタがレイに詰め寄った。


『花瓶? 水? ……何のことです?』


レイはポカんとした顔で尋ねた。


「花瓶の水よ。ポルターガイストで私の顔に掛けたでしょうが」


『……私、そんなことしてませんけど』


「嘘おっしゃい、あなた以外に誰がやるっていうのよ」


『ほ、ホントに違います! 私、そんなことしてません!』


レイの目は嘘をついているようには見えなかった。


「……ホントなの?」


ウォルタが尋ねた。


『……ホントです』


レイが答えた。


「じゃあ、誰が……」


ウォルタは周囲を見回した。数秒間の静寂が三人を包んだ。そしてしばらくして地下室のドアがひとりでに閉まった。


「あばばばば……」


ウォルタは、恐怖にのあまり、その場で泡を吹いて倒れてしまった。


「おい! ウォルタ、大丈夫か!」


フレイがウォルタの体を支えながら叫んだ。


『あばばばば……』


レイも泡吹いてその場から消えてしまった。


「おい! 何で幽霊のレイまで! ……って、うわぁ! ウチを一人にしないでくれぇ!」


フレイはウォルタを抱えたまま猛ダッシュで屋敷から脱出した。以後、この屋敷に悪霊は出なくなったという。

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