魔女と魔物の島9
「……そんな、姉さん!」
ヒカリが言った。
「……」
そのヒカリの姿をウォルタは無言で見つめることしか出来なかった。
「ヒカリ、私はお前が魔女に覚醒したあの日から、ずっと苦い思いをしてきた。当然だ、実の妹が自分より先に、私自身が欲しくて止まなかった力を手に入れてしまったんだからな」
アカリが言った。
「……」
その姿をヒカリは無言で見つめた。
「だがそれも今日で終わりだ。この鬼女の力でお前らを倒すことで、私が妹より優れた力を手に入れた事の証明とする! これからは私達の時代だ! 全ての魔女を排除して、鬼女が世界の中心となるだ! 今日、このシャイン島より! 世界の歴史は生まれ変わる!」
アカリが声高らかに言った。
「ははは! そのいきですよアカリさん! さあ、その力で憎き魔女共を消し去ってしまいなさい!」
そう言うとラクネはその場から姿を消した。
「……ヒカリ、どうやらあなたのお姉さんの言葉に偽りはないようね」
ウォルタが言った。
「そんな! それじゃあ、私はどうしたら!」
ヒカリが言った。
「どうもこうも、やることはひとつ。そうでしょう?」
ウォルタはヒカリに笑顔を向けた。
「……そうでしたね。私はここに姉を、アカリ姉さんを取り戻しに来たんです。やることは変わりません!」
ヒカリは決意に満ちた目でそう言った。
「そのいきよ。私達の力で彼女の心の闇を、鬼女の力を振り払うわよ! 準備はいいかしら?」
「はい! 行きましょう、ウォルタさん!」
ウォルタとヒカリは頷きあった。
「魔女共が……消し去ってくれる!」
そう叫ぶとアカリは正面にかざした両腕から大量の鋭利な木の枝を、二人に向けて放った。
「その攻撃はもう見てるわ。出し惜しみはなし、一気に行くわよ!」
『ラピッド』
『チェイス』
枝をかわしたウォルタは魔法銃に二つの魔導石を立て続けにスキャンした。
「邪魔な枝はこいつで撃ち潰す! ヒカリはアカリさん本人を狙いなさい!」
「分かりました!」
ウォルタの言葉にそう答えると、ヒカリは魔法銃を構えた。
「行くわよ!」
そう言うとウォルタは銃の引き金を引いた。すると銃口から無数の目標追尾型の銃弾が放たれた。そして、その銃弾達はアカリの放った枝の群れを次々と撃ち抜いた。
「枝が消えた……今だ!」
ヒカリは姉に向けて構えた銃の引き金を引いた。そして、その銃から放たれた光の閃光は正面のアカリ目掛けて飛んでいった。
(捉えた! これで姉さんの鬼女の力を消せ……)
そのヒカリの期待は一瞬で砕かれた。アカリに向かって行った閃光は彼女のかざした両手によって消滅したのだ。
「っ!? そんな!」
「魔力の塊を……かき消した!?」
ヒカリとウォルタは目の前の光景に驚愕した。そして、その姿を嘲笑うかのごとく、アカリは笑みを浮かべた。
「ははは! 驚いたか! これが私の真の力、その名も「魔力の吸収」だ!」
アカリが高笑いをしながら言った。
「これで分かっただろう、ヒカリ。魔女の力なんて所詮は鬼女の力の前ではチリに等しい。私はお前を、お前ら魔女を越えた存在なんだよ!」
「くっ! 私の、私達魔女の力はこんなもんじゃない! ウォルタさん、もう一度やりましょう!」
「いえ、それは悪手よ」
ヒカリの言葉をウォルタが遮った。
「ウォルタさん?」
ヒカリが尋ねた。
「彼女は魔力を吸収したと言った。消滅ではなく吸収だと」
「ということは……」
「ええ、彼女が吸収したあなたの魔力は今も存在しているわ。彼女の中でね」
「……なるほど、無闇な攻撃は姉さんに力を与えるだけってことですね」
「そうよ。故に私達が彼女に打ち込むのは、確かな威力を備えた確実な一撃でなくてはならない。小細工は無意味。短期決戦で決めるわよ」
「はい!」
ウォルタとヒカリは頷き合うと各々、再び魔法銃を構えた。
「ふん、随分と小賢しい奴だな、お前のお友達は。その賢しさ、魔女というものの存在の矮小さをよく体現している」
アカリが言った。
「……それはどうも。褒め言葉として受け取っておくわ。でも、そのちっぽけな存在にあなたはこれから負けるのよ」
ウォルタは負けじと言い返した。
「ふん、口の減らない……奴だ!」
そう言うとアカリはウォルタに向けて無数の鋭利な枝を放った。ウォルタはその攻撃を何とかかわした。
「ウォルタさん!」
ヒカリが叫んだ。
「私は平気よ……それよりも今は!」
そう言うとウォルタはアカリに向けて銃を構えると、その引き金を引いた。銃口から蒼の銃弾が放たれた。
「ふん、そんな攻撃!」
アカリは放たれた銃弾を防ぐように両手を体の前に掲げた。そして、魔力の塊である銃弾はその両手によってアカリに吸収された。
「くっ、まだまだ!」
ウォルタは神殿内を駆け回りながら、あらゆる角度からアカリに向けて銃弾を放った。しかし、その全てはアカリの両手によって吸収され、かき消された。
「ウォルタさん、一体何を……闇雲な攻撃は無意味だと言っていたのに」
その光景を見ていたヒカリが呟いた。
「ははは! 無駄無駄!」
ウォルタの攻撃を吸収しながらアカリが言った。
(……やっぱり思った通りね)
ウォルタは何かに気づいた。しかし、次の瞬間度重なる攻撃の披露により彼女は一瞬、体勢を崩した。
「しまった!」
「っ! そこだぁ!」
アカリはその一瞬の隙を見逃さなかった。彼女の両そでから放たれた無数の枝が、ウォルタの体を突き飛ばした。




