魔女と魔物の島8
「うぉらぁ!」
「うりゃぁ!」
バジリの爪とフレイの魔法剣が激しくぶつかり合った。島の西側では魔女と魔物・鬼女の激しい戦闘が続いていた。
「ははぁ! 少しは腕を上げたようだな……だが!」
バジリの振り下ろした爪の一撃がフレイを剣ごと突き飛ばした。
「ぐわぁっ!」
フレイは地面に膝を着いた。
「その程度じゃ、まだ俺を倒すことはできねぇぜ。赤髪」
バジリは不敵な笑みを浮かべた。
「……まだまだ、こんなもんじゃないよウチの力は」
そう言うとフレイはバッグから二つの魔導石を取り出した。
「お前達に出会ったあの日、ウチは自分自身の弱さを知った。だから修行した! これがその成果だ!」
『マキシマム』
『ウェイブ』
フレイは剣に二つの魔導石を立て続けにスキャンした。フレイの握る剣は巨大化し、斬撃発射可能になった。
「何だ……」
バジリは身構えた。
「うおりぁ!」
フレイの振り下ろした大剣から、巨大な炎の斬撃がバジリに向けて放たれた。
「ぐっ!」
バジリはその斬撃を何とかかわした。しかし、彼女が元いた場所の大地は、フレイの斬撃によって、焦土と化した。
「へへん、どうだ! これならお前の鬼女の力ってやつもかき消せる! お前を元の人間に戻せるよ!」
フレイが笑顔で言った。
「ちっ! まだそんなことを……第一、俺が人間に戻ったところで……」
「ん?」
「……いや、どうでもいいなそんなこと。今の俺はこの戦いを楽しむだけだ!」
そう言うと、バジリはフレイに接近し、彼女目掛けて爪を振り下ろした。
「ぐっ!」
フレイはその一撃を剣で受け止めた。
「オラオラ! もっとだ、もっと俺を楽しませろ! 赤髪ぃ!」
再び、爪と剣のぶつかり合う音が森に響き渡り始めた。
「ぐっ!」
フウはどこからともなく飛んできたトゲの様な物体をかわした。彼女もまた、鬼女との戦闘の真っ只中だった。
「……すばしっこいわね。こっちも暇じゃないのよ、とっととくたばって貰えないかしら?」
彼女の前方で切り株に腰かけたアルラが言った。
「でしたら……本気でかかってきたらどうです? あなたの実力はこんな矮小なものではないでしょう」
フウが笑みを浮かべながら言った。
「……やっぱり、ザワの森で出会った時の第一印象どうりだわ。あんたは強い……故に気に入らない」
アルラが言った。
「……はい?」
「強い力を持っている奴がみせる余裕、私はそれが大嫌いなのよ。だから私はあなたを嫌うわ」
「……そうですか、それは残念ですね。せっかくお近づきになれると思っていたのですが」
「……本当に気にくわないわ、その余裕が!」
そう言うとアルラは切り株から立ち上がり、両手の袖の中から、フウに向けていばらを放った。
「くっ!」
フウはその攻撃を何とかかわした。
「やっと本気になりましたね。しかし、嫌いといいつつも、その相手を束縛するかのような攻撃……あなた、相当、歪んでいますよ?」
「口の減らない……まあ、いいわ。その余裕、いつまで続くかしらね?」
アルラは再び両袖の中から大量のいばらをフウ目掛けて放った。
「っ!? 流石に数が多いですね……ならば!」
そう言うとフウはふところからひとつの魔導石を取り出した。
『ファン』
フウの握る槍の先端が扇状に変化した。そして、フウはその扇型の槍で、迫り来るいばらの群れを吹き飛ばした。
「ははは、どんなもんです?」
フウがアルラに余裕の笑みを向けた。
「……何をえらそうに、魔導石なんて所詮、借り物の力じゃないのよ」
アルラが呟いた。
「借り物ですか……ご自身の力も魔物から拝借したものなのによく言いますね」
「……この力は紛れもない私の力よ。私が苦難の上に手に入れた、借り物なんかじゃない、私自身の力よ!」
そう言うとアルラは再び、フウに向けて大量のいばらを放った。
「……やはり歪んでいますね、あなた」
フウはそのいばらの群れを槍でさばいた。森の中で静かながらも、激しい攻防が幕を開けた。
「お初にお目にかかりますね、ヒカリさん、ウォルタさん。私、ラクネという物でございます」
レイ神殿にて、ヒカリとウォルタを前にした茶髪の女性が笑顔で言った。
「……ウォルタさん」
ヒカリがウォルタの方に顔を向けた。
「……ええ、間違いないわ。こいつが全ての黒幕よ」
ウォルタが答えた。
「この人に姉さんは……あなた、私の姉さんに何をしたんだ!」
ヒカリがラクネと名乗った人物に向かって叫んだ。
「何をした……ですか? 別に私はあなたの姉君に勝手なことをしたりしていませんよ。ただ、彼女が望んだ力を与えてあげただけです」
ラクネが答えた。
「望んだ力? あなた、何を言っているのかしら」
ウォルタが尋ねた。
「何をって言葉通りですよ。彼女、アカリさんが欲しがっていた力を私が与えてあげたのです、鬼女という名の力を、ね」
ラクネは不敵な笑みを浮かべた。
「っ!? そんな……姉さんが自分の意思で鬼女になったですって」
アカリが言った。
「アカリ、動揺してはダメよ。人が自ら、魔物の力を欲しがるなんてあり得ないわ。彼女はこいつに騙されて……」
「あーあーあー、これだから嫌になる、魔女共の石頭加減には」
ウォルタの言葉を遮ってアカリが言った。
「……姉さん?」
アカリが尋ねた。
「まあ、なるべくして魔女になったお前らには一生理解できないだろうな。魔女になれなかった、魔力という力を手に入れられなかったものの気持ちなんてものは」
「……姉さん何を」
「ヒカリ、私の口からはっきりと言ってやる。私は、自分から望んで鬼女になったんだよ!」




