魔女と魔物の島7
「よぉ! 久しぶりだな!」
部隊の前に歩み出たフレイが言った。
「……てめぇは」
バジリが言った。
「へへ」
「……誰だ?」
フレイはよろめきかけた。
「フレイだよ! 前に戦っただろ!」
「……ああ、いたなそんな奴も。雑魚過ぎて忘れてたぜ」
「何ぃ!」
「雑魚すぎるね……その雑魚に尻尾を切り落とされていたのはどこのどいつだったかしら」
アルラが口を挟んだ。
「うっ! てめぇ、アルラ! 余計なこと言うんじゃねぇ!」
バジリが言った。
「へっ、今回は尻尾だけじゃないよ。その邪悪な魔力全部切り払って、鬼女から解放してやる!」
フレイが言った。
「……だから、俺らをあの入れ物と一緒にすんじゃねぇよ。俺らはな……」
「バジリ、もう気づいてるでしょ? こいつに何言っても無駄、力で分からせなきゃ。得意でしょ、あんたそういうの」
バジリの言葉を遮ってアルラが言った。
「……それも……そうだなぁ!」
そう言うと、突如、バジリはその場から跳躍し、フレイとの距離を一気に詰め、両腕の爪をフレイ目掛けて振り下ろした。その衝撃でフレイの周囲に大量の土煙が上がった。
「っ!? フレイさん!」
フレイの身を案じてフウが叫んだ。しかし、土煙の晴れた先では、バジリの攻撃を笑顔で受け止めるフレイの姿があった。
「……ほう、やるじゃねぇか」
バジリが言った。
「当然! お前らに負けてから、ウチは自分を、仲間を守るために力を付けて強くなったんだ! 前の様には行かないよ!」
フレイが言った。
「面白れぇ! その力とやら、俺の力でねじ伏せてやらぁ!」
バジリの怒号を皮切りに、フレイとバジリの剣と爪のぶつかり合いが始まった。
「……やれやれ、何勝手にサシの勝負始めてんのよ。私達の仕事にそんな矜持、必要ないのよ」
そう言うとアルラはバジリの爪を剣でさばき続けるフレイの足元に向けて、植物のツルの様な物を放った。しかし、そのツルは突如、飛来した小さな竜巻に寄って切り裂かれた。
「あなたの相手はわたくしですよ。鬼女のお嬢さん」
槍を構えたフウが言った。
「……そう、別に構わないけど」
フウとアルラは向かい合うと、各々大地を蹴って、ぶつかり合った。
一方、島の東側のヒカリの部隊は、進路を塞ぐ魔物を倒しながら、巨木のある神殿を目指していた。
「っ!? 何ですって!?」
部隊の先頭のヒカリが言った。
「どうしたの? ヒカリ?」
ウォルタが尋ねた。
「……西側の部隊からの伝令です。魔物とは別に二人の鬼女が現れたようです」
「二人の鬼女? ……おそらく彼女らね」
「ご存知なのですか?」
「ええ、以前に一度合間見えた事があるわ。アカリさんと同等、いえ、それ以上の計り知れない程の邪悪な力を感じたわよ」
「そう……ですか」
「なーに、辛気くせぇ面してんだよ!」
二人の間にグランが割って入った。
「グラン?」
ウォルタが尋ねた。
「向こうにはフウとフレイがいんだ。鬼女の一人や二人、どうってことねぇよ!」
「……ええ、そうよね」
「ああ。だからヒカリ、向こうの心配はいらねぇよ。アタシらはアタシらのやるべき事を成し遂げようぜ!」
グランが笑顔で言った。
「はい! 皆さん! 巨木までもう少しです! 突き進みましょう!」
ヒカリの言葉にウォルタとグラン、ギルドの面々が同調した次の瞬間、目の前の大地を割って、巨大なムカデの姿をした魔物が現れた。
「っ!? 魔物!?」
ヒカリが言った。
「なんて巨大な……さながら巨木を守る番人と言ったところかしら」
ウォルタが言った。
「悪いけど、私達は退きません。道を開けて頂きます! 行きますよ、皆さん!」
「いや、行くのはお前ら二人だけだ」
グランが言った。
「グランさん?」
ヒカリが尋ねた。
「こんなでくのぼうの相手はアタシらで十分だ。お前とウォルタは先に行ってとっとと巨木をぶっ倒してこい!」
グランの言葉に部隊の全員が頷いた。
「グランさん、皆……分かりました、この場は預けます! ウォルタさん!」
ヒカリが言った。
「……やれやれ、誰も彼もお人好しばっかりね。でもまあ、そのご好意、甘えさせて頂くわ!」
ウォルタが言った。
「よし! 二人の道を開けるぞ! 行くぞてめぇら!」
部隊の魔女達はグランの言葉におう! と答えると、目の前の魔物に向けて総攻撃を開始した。そして、ヒカリとウォルタはその隙をついて魔物をかわした。
「……いい仲間を持ったわね」
ウォルタが言った。
「それは……お互い様ですよ」
ヒカリが言った。
「ふふ。そうね」
二人は神殿目掛けて、山を駆け登った。
「……ここが、神殿?」
神殿にたどり着いたヒカリはその内部の様子を見て絶句した。それもそのはず、辺りは邪悪な気配をまと
った、巨木の根が張り巡らされていたからである。
「これは破壊するのに骨が折れそうね……っ!? ヒカリ!」
ウォルタが言った。
「大丈夫、分かっていますよ」
そう言ったヒカリの視線の先には、彼女の姉、アカリの姿があった。
「わざわざそちらから来てくれるとは、流石は私の妹だ。気が利くじゃないか」
アカリが二人に不敵な笑みを向けながら言った。
「姉さん……すぐにその目、覚ましてあげるからね」
ヒカリは魔法銃を構えた。そして、ヒカリの覚悟を見届けたウォルタも無言で魔法銃を構えた。三人の周囲を重い空気が取り囲んだ。
「はてさて、そう簡単に行きますかね?」
その空気を切り払って、アカリの後ろから一人の茶髪の女性が現れた。
「っ!? あなたが……」
「……ええ、どうやら親玉の登場のようね」
ヒカリとウォルタの言葉に女性は余裕の表情を返した。




