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神々と行く異世界物語  作者: 雪待涼介
第二章
23/28

カーガル国(道中)

「では、行ってまいります!」


「気を付けてね」


「健闘を祈っているぞぉぉぉぉ!!」


娘との暫くの別れを涙ながらで見送られながら、自分たちは馬車を出発させた。


今回は冒険者として行くことになっているのだが、野盗や魔獣を警戒したナイゲルさんだったが、カーガル国まで自分たちに護衛を付けさせて貰えることを言うと安堵していた。

屋敷はアルフォンスに警備の依頼を出し、執事メイド隊も同様屋敷の警備に当たらせた。アリスは自分の部屋に飾ったままだ。その理由は、もし祓いをしなくてはならない場面にアリスもいたら一緒に祓われてしまうからだ。

アリスは不満にしていたが、必ず元に戻す事を誓うと潔く見送ってくれた。


「道影君。馬車に揺られながらでも瞑想は可能ですよ」


「レンさんもどうですか?魔力を高められますよ?」


「本当ですか!ぜひやらせてください!」


「心を落ち着けて、眼を瞑って下さい」


「こうですか?」


そう言って眼を瞑った。あるのは闇のみだ。


「そうそう。後はひたすら考えずにいることです」


「はあ・・・」


自分も同じく眼を瞑り瞑想に入った。その時、ツラナギが話しかけてきた。


「道影君には前にも言いましたが、レンさんがいるので説明させてもらいますよ」


そう言って話を続けた。


「我々の国の最初の神様は闇から生まれいでました。今の貴方たちは最初の神、天之御中主(あめのみなかぬし)之神(のかみ)と同じ状態にあります」


「難しい名前ですね・・・それに最初の神って」


「私語は慎んで下さい。あとで質問に答えてあげますから」


「は、はい」


レンさんを黙らせた後、続けて話をしていった。


天之御中主(あめのみなかぬし)之神(のかみ)は、生まれてから暫くは闇に包まれたこの空間にいました」


天之御中主神。天地(てんち)開闢(かいびゃく)時に最初に高天原に降り立った神だ。だが、直ぐに姿を消し今まで行方知らずの神でもある。


「そしてある時ふと、自身が高天原に降り立っていることに気付きました」


そう。天之御中主神はそれだけしかしていないのだ。後には一回も姿を現さない。


「二人も瞑想で天之御中主神のように、ふと何かに気付くことがあるかもしれませんね」


「「・・・」」


そうして暫く沈黙が訪れた。


















「よろしい。これ以上は体の毒ですから、もうお終いで構いませんよ」


そう言うやいなやレンさんはため息を吐いた。


「はぁ~・・・何もしてないのに疲れますね」


「確かに。自分も最初は疲れてましたよ」


「今は違うんですか?」


「ええ。慣れってやつですかね?」


「なるほど・・・ところでツラナギさん。今の話は何だったのでしょう?」


気になるのは、瞑想していた時の話しだ。自分は日本人だから覚えるのは当然だとしても、何故彼女に教えたのだろうか。


「今の話は我々の国の神話ですよ。最初の神が生まれいで次いで別の神が生まれ、更に別の神がうまれいでました。その者等の名前は、タカミムスビノカミ、カムムスビノカミと呼ばれています」


ふむふむ、と頷きながら真剣にレンさんは話を聞いている。自分はこの辺りの話は知っているので瞑想に耽ることにした。
















二時間位して、馬車が止まった。どうやら、休憩地点に到達したらしい。


「近くに水場もあるようですしちょうどいい場所なのでしょうね」


馬も生き物だ。ずっと歩き続けたら疲れるし、いざという時に動かないと困る。そういう面もあり二時間おきに休憩を挟むことになっている。


「私は外の空気を吸いに行ってくる」


そう言ってシナツヒコは馬車の外へと出ていった。


「神堂さんはよく疲れませんね」


そう言ってずっと瞑想に耽っていた自分に話しかけてきた。


「いつもはこれ以上の時間をやらされているので・・・」


「そ、そうなんですか・・・」


引き攣った笑みでお互い笑いあった。


「・・・私、旅に出るのは初めてなんですよ」


「そうなんですか?」


「はい!ダレイ国で生まれてずっとこの国で過ごしてたんで・・・旅をすることなんて思ってもみなかったです!」


「そういえば、レンさんはずっとあの屋敷で暮らしていたんですか?」


「はい。私が生まれた時には、お父様は冒険者を辞めていました。お母様とは冒険をしている時に出会ったらしいですよ」


そう言って話題はレンさんの生まれやナイゲルさんの冒険の話を聞くことになった。












十分後、馬車が出るとの事。
















二時間休み、十分後に出発。それを何度か繰り返し、レンさんと談笑していると夜になっていた。


そして、馬車が止まった。どうやら今日はここで野宿をするらしい。


「本日は野宿とさせていただきます。カーガル国に着きましたら最高のおもてなしをさせて頂くので、どうかご勘弁を」


「構いませんよ。我々冒険者にとって日常茶飯事ですから」


「そう言っていただけると幸いです」


ツラナギが護衛の者と話していると、一人の者が自分に尋ねてきた。


「神堂さんって竜を倒したんですよね?」


「手負いでしたけどね」


「それでも凄いですよ!竜殺しと死神、どちらも手に入らないのが常識なのにそれを両方手に入れるなんて!」


「い、いやぁ・・・」


以前にも言われたことがあったのだが、やはり二つ名とか恥ずかしい。しかも痛い方に呼ばれているから尚更だ。だが、二つ名は栄誉ある称号なので、痛いとか思っても口に出来ない。


「申し遅れました!自分はカーガル国護衛団のセレス・アルゲーノと申します!」


そう言ってセレスさんは敬礼をした。年は十代くらいであり、背は自分より下。小柄といった具合だ。


「因みに男であります!」


・・・どうやら、女と見間違われるらしい。自分も最初は女かと思ったが・・・


「それで・・・セレスさんは異名に憧れているんですか?」


「異名に憧れているというよりは家名を世間に知らしめてたいのであります!ギルドや将来、子供が出来た時の事を考えて家名は残したいのであります!」


この世界の常識では、家名は異名と同等の扱いを受けるらしい。条件は異名を持つ者が家の主となると家名を新しく国王から与えられる。国王から与えられた家名には色々と良い待遇がまっているそうな。例えば、ギルドの依頼の優先権を得たり貴族の待遇や地位が更に良くなる。後者がローガンさんだ。因みにフォルニア家は冒険者としての家名とダレイ国への献身が評価され、今の地位があるらしい。


「いやはや・・・若いですねぇ・・・」


そう言ってツラナギが割って入ってきた。


「うわっ!?」


突然入ってきたツラナギに驚いたセレスさんは尻もちを付いた。意外と臆病な正確なのかもしれない。


「驚かすつもりはありませんでしたが・・・いやはや、すみません。何分水のように静かな男なのですので」


それを言っても意味ないのでは、と自分の考えを他所に続きを話した。


「いけませんねぇ。これくらいで驚いては・・・・家名所か異名すら程遠いですよ?」


煽る煽る。ツラナギの悪い癖が出てきた。と、言うことは・・・と自分の中で自己解決した。


「ツラナギがこうなってるんだ。お前は分かってるよな?」


今度はタケミカヅチだ。もしかしたら野盗なのかもしれない。


「はい。これだから嫌われるんですよね・・・野盗ですか?」


「いや、今日の晩飯だ」


タケミカヅチがそう言うと、辺りがガサゴソと揺れ始め警備兵達が警戒を始めた。


「禍はいますか?」


「いや、今回は普通のしかいねぇな。シナツヒコがやったんだろうよ」


そういや、先程からシナツヒコがいない。


「誘き寄せてきたぞ。今晩の夕食だ」


そう言って声だけを響かせ全員に知らせた。だが、その声と同時に一斉に獣も襲ってきた。まるでシナツヒコがそうさせているように。


「猪ですか・・・これは上等」


そうツラナギが嬉しそうにしている事は他所に、セレスさんは普段とは違い凄い剣幕を放っていた。


「ここは私達におまかせを」


そう言ってセレスさんは一番層の厚い所へと突進していった。相手の剣幕に一瞬怯んだ猪達だが、一匹が突進をしそれに続き一気に猪達は突進を開始した。


「この程度!!」


通常の兵士なら一人一匹の突進に盾で凌げられるが、セレスさんは盾で三匹の突進を防いだ。そこへ別の兵士二人が挟み撃ちとなるよう猪三匹に近づき切り伏せた。


別方向では兵士達が猪の突進に苦戦していて何匹か自分たちに接近を許してしまった。


「では我々はのんびりと夕食の支度をするので、道影君。頼みましたよ。因みにレンさんは中で瞑想中ですからご安心を」


そう言って返事を待たずに馬車へ乗り込み調理器具を探し始めたツラナギとタケミカヅチ。後から聞いた話だが、この場を任されたという事は信頼している、もしくはこの程度なら馬車への被害が無く討伐できるだろうと言う判断をしたとの事。どちらにせよ、信頼しているからこその判断だと言う。


「イグニッション!」


一気に加速し突進してきた猪の首を切り伏せた。二匹目、三匹目と同時にやってきたので新しく覚えた魔法を駆使して見た。


「我が道に踏み込む者には死を、目に見えぬ恐怖をここに。帝国の亡霊。エス・ミイネ!」


瞬間、突進してきた二匹の猪は宙を舞いながら生き途絶えた。


「まぁ、使えないこともないか・・・」


今の技は相手の目の前で爆発する魔法を応用したもので、元は目眩まし用の魔法だ。それを現代、と言うより自分の居た世界の武器の様に使ってみたが、中々の使い心地の良さだった。簡単に言ってしまえば地雷だ。


初めて使って分かったのが猪突猛進のタイプには打って付けの魔法だという事が分かった。


「二匹を同時に・・・ならこちらも!!」


セレスさんは今のを見て興奮したようで、盾を捨て片手剣と短剣のスタイルに変えた。


「風よ、我に速さを!炎よ、我に闘志を!ダブルブレイク!!」


ダブルブレイク。その効果は通常一人一種類しか使えない魔法を二つ同時に使用可能にする奥義。使い手の魔力消費が倍になってしまうが、それを補って余りある力を手にすることが可能なのだ。


「神堂さんには負けられません!と言うかどうして神堂さんがいるんですか!!」


言い忘れてたが、道中の敵は護衛隊がなんとかするから馬車の中へ居ろと言われていたのだ。だが、自分はここを任されたので馬車の中へと戻るわけにはいかないのだ。


「任されたんですよ」


「ですがこの程度、我々だけで問題ないですので下がっていて下さい」


「任された以上、引き下がるわけにはいかないんですよ・・・」


「ですが困ります!もしあなた様方に傷一つ追わせること等があれば・・・特にレンお嬢様にっ!人が喋っている途中に攻撃しないでくださいよ!全くもう!!」


話は後と、この大勢の猪を屠ってからにしようと思い更に、エス・ミイネを展開した。


余談だが、設置したエス・ミイネは術者である自分にはどこに設置したかは見えるようになっている。ツラナギ曰く、術者の魔力が反発しあって見えるんだとか。なので安心して切り込むことにした


「セレスさん、あまり怒ってもこいつらには意味な・・・いや、セレスさんの場合別か」


セレスさんが怒った時、猪達も怯んでいたのを思い出し、途中で言うのを止めた。セレスさんはそれが気になったのか聞き返してきたが、何でも無いと受け流して猪の群れに切り込んだ。それにしてもやけに多い。


「道影か・・・ちょっと面倒事になったぞ。禍が出現した」


シナツヒコの声だ。その声音はいつもより少し焦り気味だった。










「夕飯どころじゃ無くなったな」


「その様ですね。これでは夕食が傷んでしまう」


「で、俺達は出なくて良いのか?」


「いえ、今回は私達が抑えましょう。食材が傷んでは勿体無い」


「そりゃそうだな」

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