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神々と行く異世界物語  作者: 雪待涼介
第一章-ダレイ国-
21/28

強さ

返事を待っている間、自分はレンさんと共に鍛錬をしていた。

「まだまだ甘いですよ」

そう言ってツラナギはレンさんに向かって魔法を放った。それを避けたレンさんはバーンショットを放ち少しでもダメージを与えようとしていた。だが、ツラナギの水の防壁で阻まれてしまう。

そしてツラナギの反撃。アクアボムで周囲を水浸しにし捉えようとしていた。だが、レンさんは水に浸っていない場所を的確に踏んで距離を取った。

「魔法さえ覚えれば中々見所がありますよ」

「それはどうも!」

そう言って一気にツラナギに近づき魔法を近距離で放った。バーンアロー。その技は名前通り火の矢を放つ魔法だ。速度はそこそこあり、何より貫通力が高いのがこの技の特徴だ。

その攻撃は、ツラナギの水の防壁を貫通しツラナギにダメージを与えた。

「お見事。ではご褒美として、この技をプレゼントいたしましょう」

そう言ってツナラギはアクアコレクトを発動した。レンさんの足元には水は浸っていないので容易に躱せるかと思いきや、水の防壁がレンさんを包み込んだ。アクアコレクトは水があればどこでも使えるが速度は遅いので、水にさえ注意していれば問題ない。

だが、今回のこれは想定外だったらしくレンさんは降参した。

「ぷはぁ!」

技を解いたと同時に水は霧散していき、レンさんは大きく息を吸った。

「ケホッ!ケホッ!」

水を器官に詰まらせたのか咳をしだした。大丈夫か聞いてあげたかったが、自分も今は鍛錬をしている最中なので駆け寄ることは出来なかった。因みに自分の鍛錬は、バケツを両手に持ち逆さ吊りのままの状態でいることだ。一体何の意味があるのかは自分には分からない。











「皆様、お昼ごはんのご用意ができました」

ソフィアさんの一声で休憩が入った。

「では、続きはお昼を食べてからにしましょうか」

そう言って皆食堂へ向かった。

「大丈夫ですか?」

「はい、私は大丈夫ですよ!神堂さんはどうですか?」

「自分も大丈夫ですよ。それより咳き込んでましたが治りました?」

「今は何とも無いのでお気になさらず」

そう言ってニコリと笑ってみせたレンさんだが、疲れている様子が隠せていないのでツラナギに相談してみることにした。





食事中、隣にいたツラナギに相談してみた。

「それは構わないですが・・・彼女が納得しますかねぇ?」

「多分無理でしょう。けど、このままだと倒れますし無理矢理にでも休ませますよ」

レンさんは自分に追いつこうと努力してくれているのだが、今のまま続けていると倒れてしまう。だから休ませる必要があるのだが、休むよう言っても聞いてくれないのだ。

「まぁ私は構わないですよ。それに彼女は普通の人間なんですから。無理は出来ません」

「じゃあ、後は任せますよ」

「はい。任されました」

そう言って食事を進めた。自分もこれ以上は言うことはないと思い食事を再開した。

チラッとレンさんを見ると食が進んでいなかった。やはり疲れているのだろう。それを目にしたメイドさんがレンさんに聞いてきたが大丈夫だと言っていた。こういうところで意地っ張りなのはどうなんだろうか。

「それほど、と言うことですよ」

「それでも、無理は駄目ですよ」

これ以上無理をさせてはならないので、後の訓練はツラナギの一撃で倒れてもらう。それが彼女を止める唯一の方法だと思った。












「では、再開しますよ?」

「・・・」

「聞いてますか?」

「は、はい!」

「・・・それでは、始め!」

そう言った瞬間、ツラナギの魔法がレンさんを襲った。普通なら避けられる速度なのだが、今のレンさんは避けられない。結果、直撃し倒れた。

それを見ながら、相手の攻撃を躱していた。相手はフェリックスさんだ。彼の鍛錬は武術である。

自分はフェリックスさんの技しか知らないので、簡単に捌かれてしまう。逆にフェリックスさんは自分の知らない技を放ってくるので対処が難しい。だが、三人の鍛錬に比べれば有情なので幾らかは楽だった。それでも気を緩めれば貰ってしまうのは流石達人と言うべきか。

「躱しているだけじゃ何も得ませんよ!」

「そうとは限らないですよ!!」

一回転し肘打ちをしたが、それを受け止められてしまう。そして脇腹を掌底打ちで貰ったように見えたが、そこから逆回転しもう一度肘打ちをした。

それを知ってはいても避けることしか出来ず、一歩下がってしまったフェリックスさんだが自分は追い打ちをすることは無かった。

「見抜きましたか」

「流石に何度も食らうわけにはいかないですよ」

そう言って目にしたのは正拳突きの構えをしているフェリックスさんだ。追い打ちをしようとするものなら真っ直ぐ突き進む状態となり正拳突きの餌食になるだけだ。

それを何度も食らっていたので、追い打ちをかけると食らう事になるのは分かっていた。

「では、これはどうです?」

そう言って構えを変えた。その構えは右手を上に左手を下にした構えだ。一見左右が隙だらけだが、これも罠なのだろう。

「さぁ、どうしますか?」

明らかな挑発だが、ここで何かしなくては相手の行動が読めない。だが、構えからして受け身を前提としていると思い、こちらから行動するのは得策ではないと感じる。

「・・・」

構えを解き一歩踏み出した。その様子に一瞬困惑したフェリックスさんだが、フェリックスさんも一歩前に踏み出した。

お互いに一歩踏み出せば一歩踏み出す。それを繰り返し目の前まで来るとどちらも動かないでいた。いや、動けないのだ。

片や構え、片や構えず。どちらが上か問われれば構えている方に軍配が上がるだろう。だが、知っている者からすれば構えていない方に賭けるだろう。

「「・・・」」

暫しの硬直状態。先にしびれを切らしたのは自分だった。

「せいっ!」

右足で脇腹に蹴りを入れようとしたが脚を掴まれてしまった。それを軸に回転しもう片方の脚で蹴りを頭に入れようとしたが、それは躱された。

そして、脚を放され回転した遠心力で地面に叩き落された。

「なぜ、構えずやってきたのですか?」

「それが構えみたいなものなんですよ。意外と凄いでしょ?」

「確かに。普通なら構えるものを構えずに来られたのは意外でした」

勝負は自分の負けだが、中々の結果を残したので少しは満足した。

レンさんはツラナギに敗れてそのままの状態だ。流石に風邪を引くだろうから、ソフィアさんを呼んで客室で着替えと濡れた体を拭かせるようにお願いした。











「すみません。私ったら・・・」

「気にすることはないですよ。それより、よく今まで頑張ってこれましたね」

「それは・・・神堂さんに近づきたくて・・・」

「旦那様は、あなたが無理をされているのが辛いとおっしゃっていましたよ?」

「それは私も分かっています・・・ですが、私がもっと強くなければ、側にいてあげられないのが辛くて・・・」

「それは無いと思いますよ?」

「どうしてそう思うんですか?」

「旦那様は・・・神堂さんはあなたの強さに惹かれているわけではないのですから」

「・・・」

「強くなろうとすることは構いませんが、それで悲しませるようなことがあってはなりませんよ。分かりましたか?」

「・・・はい」

「よろしい。では、暫くここで休んでいるように」

「分かりました」

そう言ってソフィアさんは出ていった。静寂に包まれているこの空間で、私は何をすれば良いか考えていた。どうすれば強く、あなたの側にいられるのだろうと・・・

ソフィアさんの言っていた事は理解できる。けど、強くならなければ離れていってしまうと言う不安が押し寄せてくる。

「どうしたら・・・」











ソフィアさんに、レンさんが目覚めた事を聞き部屋に行ってみることにした。

コンコンとノックし、返事を待った。

「どうぞ」

と返事が帰ってきたので、部屋に入った。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。ご心配をお掛けしました」

そう言ってレンさんはお辞儀をした。その表情はどこか寂しさを帯びていた。

「「・・・」」

暫くの沈黙の間、先に破ったのはレンさんだ。

「あ・・・あの・・・」

いつもの様に笑ってはいなかった。まるで捨てられた子犬のようにこちらを見つめて、

「私・・・強くなりたいです・・・」

と、まるで悲願するように言葉を掛けられた。

「・・・」

その表情、言葉に呆然としてしまった。何故、彼女がそこまで強くなりたいのか理解できていないからだ。だからこそ、問いかけなくてはならない。

「どうしてそう思うんですか?」

この言葉だけでも彼女の願望を知ることが出来る。そんな気がした。

「神堂さんの・・・側にいたくて・・・」

そう呟いてようやく納得した。彼女は自分と共にいたいと言っていた。そして彼女は、強さでさえ同じ位にならければいけないと考えているのではないだろうか。

そう思い口にした言葉はたった一言。

「強くなくても構わない」

そう言って手を握りしめ、続けて言った。

「強さだけが全てじゃないんだ。自分が惚れた理由はレンさんの強さだけじゃないんだよ」

「けど!」

「けどじゃない!」

大声で言った自分にレンさんは驚いていた。普段は自分は大声を出すことなんて無かったからだ。

「最初はレンさんの態度がそうさせた。けど今はレンさんの全てに惚れているんだ」

我ながら何を言っているのか自分でも分からず、しかし恥ずかしい言葉を言っている事だけは理解していた。

「自分が強くなろうとしていることは2つ。一つは世界を救うため。もう一つはレンさんを守るため」

「私は・・・側にいたくて・・・だから!あなたと同じ位強くなくちゃって!」

「・・・」

レンさんは強情だなとこの時思った。こういうところで頑固になるのはレンさんの悪い所なのかもしれない。けど、それすら愛おしく感じるのは惚れた弱みなのだろうか・・・それとも・・・

「・・・レンさんの気持ちは分かったよ・・・けど、自分はやらなければならないことがあるんだ。だから待っているなんてことは出来ない。もし、強さで側にいたいと思うのなら追いついてきてほしい」

「神堂さん・・・」

「やることやったら、いくらでも待っててあげるから。だからそれまでに自分なりの強さを見つけ出して」

「自分なりの?」

彼女に必要なのは鍛錬の他に、自分の強さが必要だと言うことだ。それが他人の為でも自分の為でも良いから、とにかく自分が強くなる理由が必要なのだ。

「いつまでも自分に追いついてきたって、自分はもっと先へ進むんだ。だから追い抜こうとする気じゃないと、自分には追いつけないよ?」

「側にいたいじゃ駄目ですか?」

「それでも良いよ。けど、それで追い抜く事ができる?」

「それは・・・」

そう言って黙り込んでしまった。レンさんは先程とは違いションボリしている。

「さっきも言ったけど、終わったら待っててあげるから。それまでは追い抜こうと思って鍛錬に励んでほしい。もちろん、今回のように毎回倒れられてたら困るから、自分の体調をしっかり管理すること。いいね?」

「・・・」

黙ったままだが、その表情には寂しさを感じなくなった。あるのは覚悟した顔だ。

「よしっ。この話は終わり!」

レンさんの表情を確認し、自分が言えることはもう無いと思い出ていこうとした。

「待って下さい!」

と、出ていこうとした自分を引き止めてきた。

「・・・世界を救うってどういうことです?」

上手く忘れてくれると有難かったが、そう都合よくいかない。

「・・・」

この先、共にいることになるのだから隠しても仕方ない事なのだが、一人で言っていいものなのか悩んでいた。

「お困りですかな?」

そう言って扉をちょこっと開けて覗き込んでいるツラナギがいた。

「びっくりした!」

本日二度目の大声を上げてしまった。鍛錬で体は鍛えられても、肝っ玉だけはどうにもならないらしい。

「いやはや。偶々通り過ぎようとしたら、何やら世界がどうたらと聞こえてきましてね」

「・・・その事で相談があるんですが」

「みなまで言う必要はありませんよ。察していますから」

だったら話しが早い。こういうところはツラナギの凄いところだと関心する。

「子供の名前ですよね?」

「違う!!」

そう言ってニヤニヤと笑いながら茶化しにきた。レンさんは恥ずかしそうに頬を赤らめてるし・・・前にも同じようなことがあったと思いながらツラナギに相談内容を言った。

「レンさんに黄泉の国の事を言っていいか聞いているんですよ!」

「みなまで言わなくとも分かっていますよ。少しからかっただけですから」

なら最初から茶化すなと言いたかったが、口にせず黙ってしまった。

「あの・・・黄泉の国ってどこですか?」

「言わなければはぐらかせたものを・・・」

「誰のせいですか」

そう言って、ツラナギは自分とレンさんに問いかけてきた。

「後戻りはできませんよ?」

「構いません」

「レンさんと同じです」

「・・・では、レンさんには簡潔にお話いたしましょうか」

そう言ってツラナギは自分たちが神であることを除き大体を話した。






「そんな事がありえるんですか!?」

驚きと戸惑いを隠せないでいた。この世界があの世の物となるだなんて、御伽噺の中だけだと思っていたからだ。自分も最初は驚いたが、自分に加護が宿っている事や不死の生物を目の当たりにして信じざるを得なかった。

「あなたも目にしたはずです。切っても切っても再生し続ける屍を・・・」

「それは・・・し、信じられません・・・」

「信じなくても結構ですよ。ですが信じなければ我々の足を引っ張る事になるので、この場所で待っていただく事になりますが」

「そ、それは!」

酷な話だが、ツラナギの言うことは最もだ。今直ぐ信じるのは無理でも、旅立つ時に信じてもらわなければ取り返しのつかない事になってしまう恐れがあるからだ。

「今直ぐとは言いません。ですが・・・我々が旅立つその時までに、信じてもらえればと思います」

そう言って退席したツラナギの横顔は面白そうに笑っていた。どうやらこの先は自分で何とかしないとならないらしい。

「・・・信じますか?」

「・・・」

レンさんは事の大きさに戸惑っている様子だ。

「自分が強くなりたいと思うのは、この為でもあるんです。事が事なだけに、レンさんにはここで待っていてもらいたいと思っています」

「・・・もし、嫌だと言ったらどうします?」

「・・・はぁ・・・一緒にいきますか?」

「・・・はい!」

そう言ってレンさんはにっこりと笑った。

「強さを求めるのは大事ですが、それで体を壊したら元も子もないです。ですから体は大事にしてくださいね?」

「わかりました!」

そう言った彼女は先程の寂しげな表情はなく、嬉しさと覚悟が混じり合った顔をしていた。

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