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神々と行く異世界物語  作者: 雪待涼介
第一章-ダレイ国-
18/28

禍津獣

ギルドに戻りファイアエイプ討伐の完了を知らせ、酒場で飲み会っていた。自分はいつもの果汁水だ。

「まさか、反撃してくるとは思わなかったよ」

「いやいや、そこは予想するのが当然だよ!」

そんな他愛ない会話をしていると、悲鳴が聞こえた。その悲鳴はギルド内に響き渡り、皆会話を止めて悲鳴のした方へ顔を向けた。

「神堂さん!!」

そう言って駆けつけた受付嬢に案内され、討伐の証として渡したファイアエイプの頭を指差した。

「これは!!」

「もしかしなくても・・・あれか・・・」

その顔は怒りの表情に満ち溢れ口を開けたり閉じたりしていた。

その様子を見ていたギルド内の冒険者は淀めいていた。先の狼に続き、突然変異種まで死ななくなっているのだ。

「どうしますか?」

「・・・取り敢えず、ツラナギ達に相談してみよう。アルはこの首の監視を頼む」

「りょ、了解!」

そう言って自分はツラナギ等がいると思われる王宮へ向かっていった。










幸い、ドラゴン討伐時に貰った勲章を見せたらすんなり通してくれて、ツラナギ等がいる客間へ案内された。

「おやおや、どうしたんです?」

そんな呑気な事を言いながら紅茶を楽しんでいた。スサノオの事はどうしたんだろうか、と思いながらも先に首を切り落としても生き続ける魔獣の事を話した。




「なるほど・・・おそらく黄泉の国の瘴気に当たられたのかもしれませんね」

「それってこの近辺に黄泉の国の入り口があるって事ですか?」

「いや、おそらくはドラゴンの一部に有ったのだろう。その一部は微弱で有ったが故、空を舞っている間に霧散したが、霧散しきれず体内に吸収された魔獣がそいつらだろう」

蛾の鱗粉の様に翼に付いていた瘴気は、霧散しきれずに魔獣の体内に入り込み不死の生物へと成り果てたのだろうと推測された。

だが、それなら討伐した自分や近づいた騎士団の者等にも付いているはずだが、光った時に瘴気を浄化していたらしいので自分たちには効かなかったとの事。

「まぁ、今のお前さんなら浄化出来るぜ。だからこの件は、お前さんに任せとく」

そう言ってスサノオ探しの談義が再開された。

「・・・浄化ってどうやるんですか?」

「あ~・・・それは教えてなかったか」

「簡単に説明しますと、祈りを込めて斬り伏せればいいだけですよ」

「なに。祝詞の様に言葉にしなくとも、加護がある君なら想うだけで浄化は出来る」

そう言って、さっさと出て行けと言わんばかりに放り出された。

祈ること、想うことと言われてもどうしたら分からないが、取り敢えずファイアエイプの頭で試すことにした。








(わざわい)(はら)(たま)(きよ)(たま)(かしこみ)(かしこみ)(もう)す!」

取り敢えず出てきた言葉通りに言い放ち、頭を真っ二つに切り伏せた。

すると、切り伏せた箇所から黒い瘴気が出てきてそれが霧散していった。そして、切り伏せたファイアエイプの頭を見て動かないことを確認した。

「多分これで大丈夫かと・・・」

「ほ、本当か?」

怯えているアルに大丈夫だと説明し、ファイアエイプの胴体と狼を探し出すことにした。

因みに今回は自分に宛てられた特別依頼という形になった。報酬は金貨5枚との事。金貨1枚に付き銀貨5枚の価値はあり日本円にしたら100万円相当だ。中々の報酬になっているが国王から謝礼金を貰ってあまり余っているので、アルに全てを渡すことにした。

「俺も出来たらな~」

「バカ言え。ドラゴンスレイヤーだから出来ることなんだろ」

と、竜殺しの異名で呼ばれることになっていた。それほど、ドラゴンは強大であり(わざわい)の権化と言うほどの者だったらしい。だが、あのドラゴンは常に手負いであったので誰でも倒せられたらしいが、その事を話すと冗談だと言われてしまう。

とにかく、この件は禍を祓うことが出来る自分が請け負うことになった。禍を放っておけば、どんどん酷くなる一方だし仕方ない。

「じゃあこの依頼は自分とアルでやりますね」

「え!?」

その事に驚いたアルが猛抗議した。

「冗談じゃないですよ!あんな化物相手にどうやって自分が立ち向かえるんだ!?」

「大丈夫。相手にしなくても足止めさえしてくれれば良いから!」

そう言ってもアルは嫌だという。

「ソフィアさんに格好いい武勇伝を聞かせてあげたくないんですか?」

「そ、それは・・・」

アルはたじろぎ暫し考えた。ここで名を馳せたらさぞ喜ぶだろうと追撃したら、あっさり承諾した。

「では、自分とアルフォンスがこの依頼を請け負いますね」

そう言って受付嬢に依頼書を託された。

今日はもう夕暮れになっていくので、明日森へ向かうことになった。









「本当に出来てしまったと・・・」

「冗談で言ったつもりだったんだがな」

「まぁこれも鍛錬の成果って事なんじゃねえの?」

どうやら、加護があるからと言って禍を祓えること等出来なかったらしい。出来てしまったのは、ツラナギたちにも分からないようだ。

依頼を請け負ってしまったからには、ちゃんとやるつもりではいるが心配だ。自分一人だったら何とかなるんだが、アルと一緒だとなると彼に禍が降り掛かるんじゃないかと自分の軽率な発言を悔やんでいる。明日、アルと受付嬢にはちゃんと話しておこう。

「そういえば、スサノオの件に関して分かった事はありますか?」

彼らはスサノオの目撃情報があったと言って王宮に行ったのだ。何か収穫があったのかもしれない。

「ここから東へ行った国、カーガル国の近くの村で目撃したと言うものがいましてね。何でも手負いの状態だったとか・・・」

「それじゃあ直ぐに向かわなくちゃ!」

「落ち着け。その人物がスサノオと会ったのは一ヶ月前とのことだ。今はもういなくなったらしい」

「東へ向かっていったらしいから俺たちも東へ行くことになるな」

「ですが、この件を片付けてからですね」

そう言って依頼書を指差した。禍を放っておけば被害が出るどころの騒ぎではなくなる。喰らい尽くしたら次の街へ、そして喰らい、また次へと被害が拡大し強くなっていき収集が着かなくなるらしい。

「分かりました。じゃあこの件を片付けてから行きましょう」

「それが得策ですね」

そう言って今日は、もう眠ることにした。明日朝一に出るためだ。もちろん、アルには内緒で。










翌朝。時刻は午前5時。自分は森へと向かうため門を潜ろうとしたのだが、人影が見えた。どうやら門番ではなく軽装の防具を纏った人物だ。そう、門の前で立っていたのはアルだった。

「なんでこんな朝っぱらからいるんだよ」

「い、いやぁ・・・家にいても落ち着かなくて・・・」

どうやら昨日は一睡も出来ず、一時間ほど前からここに居たらしい。

「・・・アル。悪いけど今回は自分一人で行かせてもらうよ」

「えっ?どういうこと?」

かい摘んで説明したが納得いかないらしい。

「誘っておいてそれはないよ!」

「ごめん。けど、予想以上に危険な事になりそうだから」

「だったら尚更、君一人で行かすわけには行かないね!」

そう言って引こうとしなかった。それどころか、更に面倒なことになった。

「こんな朝早くにお出かけになられて、どうされたのです?」

「おはようございます神堂さん!今日もいい天気ですね!」

メイド長のソフィアさんとレンさんだ。ソフィアさんは自分が出ていく所を目撃し付いてきて、レンさんは日課のランニングとの事。

「実はですね・・・」

そう言ってアルは勝手に二人に話し始めた。自分は止めに入ろうと思ったのだが、言い出せないでいた。その理由は、この二人には隠し事は通じないと分かっているからだ。それを知ってか知らずかアルが話していった。

「水臭いです!私も連れて行ってください!」

「主を守るのがメイドの勤めでございます」

そう言って二人も付いていこうとした。だが、今回は黄泉の国が関係している。彼女らを巻き込むわけにも行かない。アルも当然だ。

自分が反対を押し通してるとやがて不信感を持たれた。

「旦那様。もしかしてこの件、何かご存知で?」

鋭い質問をされてつい、たじろいでしまった。それを三人が見逃さず畳み掛けてきた。

「神堂さん・・・何か知ってますね?」

「旦那様。言わないとギルドへ報告いたしますよ?」

「道影・・・私達が信用出来ないのかい?」

そう言って詰め寄ってきたが、こちらも意地と言うものがある。

何故、あいつらが動いているのかを、かい摘んで説明した。そして、自分とツラナギ達にしか倒せないことも伝えた。

「道影・・・」

そう言って切り出したのはアルだ。

「そんな危険な魔獣に私を囮に使うつもりだったのか!?」

と、二人も呆れる程ぶっ飛んだ意見がやってきた。

「その時は、こんな危険な状態だとは思わなかったんだよ!」

そう言って、もう一度説明した。

「とにかく、この魔獣等は自分達でしか倒せないから、自分一人で行くよ」

そう言って無理やり出ていこうとしたが、レンさんに引き止められた。

「例え、私達で倒せなくとも足止めくらいは出来ます!」

「旦那様。私達が足止めをし、トドメを旦那様がなさっては効率が良いのでは?」

「ソフィアの言う通りだ。ここは役割を決めて効率よく戦った方が後々、役に立つんじゃないかな?」

そう言って皆で倒そうと提案してきた。

その提案にとても嬉しく思い、同時に怖くなった。

もし、自分のせいで死んでしまったら、と思うとどうしても動けない。

その恐怖を感じ取ってくれたのか、レンさんが近づいてきた。

「大丈夫。私達を信じて下さい」

「・・・信じていますが、それでも・・・ッ!」

そう続きを言おうとしたのだが、レンさんが抱き締め続きを遮られてしまった。

「万が一、私達が危険になったら守ってくださいね?」

「・・・」

その言葉に返事は出来ず、暫し立ち尽くしてしまった。それは、不意に抱き締められたからではなく、どうやって守るかをシミュレートしていたからだ。

先ほどと同じように立ち尽くしてはいたのだが、顔つきが違ったらしく三人は笑いあっていた。

「皆。それぞれ危険と感じたら直ぐにその場を離脱するように!直感だろうが何だろうが危険を感じたら直ぐにだ!」

「「了解!」」

こういう時にアルはやってくれる人間なんだなと思った。自分ではなく他人の為に剣を、盾を、頭脳を用いるタイプのようだ。

そして、ソフィアさん。この人は効率を選ぶタイプのようだ。だが、今回はアルの指示に従い効率と直感を両立してくれる。本来、真逆の性質だがそれでも自分の為に、皆のためにこの矛盾した性質を使いこなしてくれると言う。

最後に、レンさん。この人は昔から武術の心得があるらしく、こう言った場合の心得も得ているようだ。だが、レンさんに限っては応用が出来ないタイプだと分かっているので心配ではある。

それでも皆頼もしく、これなら誰一人として傷付くこと無く終われると確信を得た。

皆に自分の気持を伝え、それでも付いてきてくれるのかと聞くと、皆笑顔で答えてくれた。

            「「「もちろん!」」」
















森へ到着し、ファイアエイプを討伐した場所へやってきた。が、胴体は無くなっており辺りには引っ掻いたと思われる傷跡が無数にあった。それは、ファイアエイプの爪痕だ。

「これは・・・」

傷が新しいかまでは分からないが一定の方角に傷跡が多く、そちらへ向かったとおもわせる。

「こちらへ行ったのだとすると・・・巣はあの辺りでしょうか?」

そう言ってソフィアさんが示した場所は丁度、壊したアジトの近くだった。どうやら洞窟はまた作られたらしい。

「あの場所なら行ったことがあるので案内します」

付いてくるように言い、爪痕を頼りにどんどん進んでいった。

暫く歩き、程よく開けた場所へたどり着いた。そこは、初めてツラナギたちと出会った場所であった。

そこでファイアエイプは辺りを引っ掻き回していた。その姿はまるで苦しんでいるようで救いを求めている様に見える。

「!!!!」

声にはならないが何かを伝えたがっているように悶始めた。その様子を見ていて、アルは前へと向かっていった。

それに気付いたファイアエイプはアルに向かって突進してきた。立ち向かおうとするアルをふっ飛ばし警告を発した。

「バカ!味方の位置を把握して行動しろ!それと敵の行動くらい見てから動け!」

そう言ってファイアエイプが飛びついた先には、ソフィアさんとレンさんが隠れて様子を窺っていた場所だ。

幸い、直ぐにその場から離脱していたので被害は無かったが仲間を危険に晒すリスクを増やしてしまったことには変わらない。駆け出し冒険者あるあるの一つで、周りに気を配らないのだ。

「私がそんな軽率な真似をするか!」

そう言って、アルは囮として立ち塞がったという。だが、アルの装備じゃファイアエイプの攻撃は防ぎきれない。

アルがファイアエイプの気を引いている間に、ソフィアさんの短剣がファイアエイプのアキレス腱を切った。その場に崩れ落ちたファイアエイプをレンさんの火属性魔法、バーンショットでジワジワとダメージを与えた。バーンショットは発射速度が速く出せる技であり、レンさんはそれを持続して出し続けていた。

怯んでいる間に自分は祈りを剣に込め、右腕を切断した。切断した部分からは黒い瘴気が霧散し、腕は無くなった。痛覚は残っているのか、必死に抵抗しようと辺り構わず左腕でなぎ払い、それをソフィアさんは回避する。

アルは相手の動きを封じるために突進し、胴体に剣を刺し直ぐ離脱。直後、レンさんの魔法バーンバレルで突き刺した剣を融解し木に留め、苦しむファイアエイプに更にバーンショットで追い打ちをかけた。だが、再生が早く対したダメージにはなっていないが、足止めとしては充分な時間を稼いだ。

そして、再び祈りを込め次は左腕を切断した。

何故、一気に胴体を真っ二つにしないかというと、確実に殺す為にしていることだ。決して拷問や侮辱といったものでは無く、今後同じような相手を倒す時のために弱点を探りつつ確実に仕留めていっている。

ファイアエイプからしたら拷問にも等しいが、この先禍を(まと)った相手を確実に倒すためにもここで(かて)になってもらう。

「弱点はわかったかい?」

アルはこの光景をもう見たくないらしく急かしたが、如何せん禍の中核がどこにあるのか分からずにいる。皆に暫く様子を見ているよう指示を出し、ファイアエイプから遠ざけた。

すると時間が経つに連れ、切断した部分から黒い瘴気を出し回復していった。そして、頭も元に戻っている。

「やっぱり元を絶たないといけないか!?」

だが、どこを見てもそれらしい部分は無い。もしかして体内にあるのだろうか。

「くっ!」

「ソフィア!!」

「大した事ない!」

ソフィアさんはもう一度アキレス腱を狙ったが、それを予想していたようでファイアエイプはわざと隙きを晒していたようだ。結果、ソフィアさんはファイアエイプの一撃をもらい吹っ飛んだ。

「頭が再生したことで頭脳も強化されたようですね」

そう言って後方から支援をしていたレンさんが呟いた。その言葉通り、再生した部分は発達していた。頭には角が一本生えており、肘の部分が鋭利に尖った部位が出ていた。異常に発達したそれを見て自分は鬼を思い浮かべた。だが、鬼にはこれと言って弱点は無く何も策が思いつかなかった。強いて言えば豆くらいだろうか。


相手をこれ以上強化させないよう距離を取りながら様子を窺った。祈りを込めた剣を、取り付く禍に当てれば浄化される。そう推測しているのだが、その禍が何処にあるのか見当がつかない。

「神堂さん、火球が!」

そう言ってレンさんは自分に火球が飛んできたことを伝えた。だが、後ろにはレンさんがいるため避けずにリトルボムで火球を吹き飛ばした。

「大丈夫ですよ。それにしても頭が厄介だな・・・」

火球を放ってくるし頭脳も高くなっている。さっさと倒さないと危険だ。

「アルとソフィアさんは注意をそらしてくれ!ちょっと試したいことがある!」

「「了解!」」

そう言って、アルにショートソードを手渡した。

この状況で必要なのは広範囲に渡り効力を持つ祈り、祝詞(のりと)が必要と感じた。厄災(やくさい)(わざわい)(はら)うために祝詞がありそれを試してみようと思った。だが、やったことも聞いたことも無いので、加護に全神経を集中させなければならない。その間は動けなくなるので二人に囮を頼んだ。

「レンさんは、もしこっちに来た場合に備えて待機して下さい!」

「分かりました!」

それぞれ指示通りに動き、集中することが出来た。




何度も何度もイメージして、ようやく見つけ出した答えがこれだ。

「二人とも下がって!レンさんはこの場から離れて下さい!」

そう言って二人を下がらせ、レンさんを離れさせた。

そして、ファイアエイプに向かってリトルボムを放ち注意をこちらへ向けた。火球で攻撃してきたが、それを吹き飛ばし詠唱を始めた。

(きわ)めて(きたな)滞無(たまりな)れば(きたなき)とはあらじ」

その言葉を唱えた瞬間、ファイアエイプは悶始めた。そして、こちらへと全力で向かってきた。

それを意に介さず、唱え続けた。

内外(うちと)玉垣(たまがき)清淨(きよくきよし)(もう)す」

短い祝詞だが、効力は絶大だ。禍を纏っているものにとっては特に・・・

一切成就(いっさいじょうじゅの)(はらい)

その言葉を放ったと同時に自分を中心とした円がファイアエイプを捉えた。そしてその円の中に入ったファイアエイプは一段と苦しみだし、黒い瘴気を放ちながらその場で悶えた。

五芒星が描かれた円はファイアエイプの中にある禍を露わにさせた。

自分が近づくたびにその効力は強くなり、苦しむ雄叫びが森を木霊する。その雄叫びに別の鳴き声が聞こえた。その鳴き声は狼のものであり、こちらへ近づいてくることを感じ取れた。

自分がファイアエイプの前まで行き、剣に祈りを込め振り下ろした。

切断した箇所からも黒い瘴気を放ち、やがて全身がミイラのように干からびていった。

「・・・」

これで、復活することは無くなっただろう。その事を確認するために、祈りを込めて五体を切断した。

復活する様子はなく完全に浄化されたようだ。

「やったのか・・・」

「どうやら、そのようですね」

アルとソフィアさんが死体に近づき動かないことを確認すると、アルが歓声を上げた。

「勝ったぞおおおお!」

「アル、うるさい」

そう言ってソフィアさんがツッコミを入れ、レンさんがそれを笑いながら見ていた。

「どうしましたか?」

自分が喜んでいないことを不思議に感じたのか、レンさんが尋ねてきた。

「・・・皆・・・逃げるぞ!」

そう言って皆をこの場から離れるよう指示した。その事に不思議に思いながらも従ってくれたので、何とか逃げることが出来た。










「急にどうしたんですか?」

「せっかく倒したのに何で逃げるよう言ったんだい?」

「旦那様、もしかして先程の雄叫びで狼が?」

そう言って各々疑問に思いながらも説明を要求してきた。

「ソフィアさんの言う通り、ファイアエイプが雄叫びを上げた時、狼が遠吠えをしたんだ。その時に段々と近づいてきたのが分かってね・・・」

そう言って限界だった自分は倒れた。祝詞は自分に負荷が掛かり過ぎていたのだ。だが、これで禍に対抗する手段を得て取り敢えずは安心した。

そんな事を考えていると、唐突に意識が無くなった。





















「やりますね・・・」

「加護のおかげと言っても禍を祓えたんだ。素直に褒めてやるべきだな」

「まぁ、今回は褒めても良いか」

そう言って、禍を纏った狼をツラナギ達が浄化した。この狼、ドラゴン以上に強く賢くなっており、今の神堂たちの力では倒せない域にまで達していた。

だからこそ今回だけは特別に彼らが狼を浄化した。

「あとは・・・鍛錬あるのみ。ですね」

「精神力の鍛錬を追加するのか」

「ならツラナギが適任だな」

神堂が知らぬ間にハードになっていく鍛錬であった。

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