幽霊屋敷
「それじゃあ、この辺りで」
「はい。気をつけて下さいね!」
レンさんの屋敷を後にし、レンさんはギルドへ、自分は幽霊屋敷へと向かっていった。
途中、あの幽霊屋敷のことについて知っている人物はいないかすれ違う人々に聞き込みを行ったが収穫は無しだった。
そして屋敷の前まで来た時、見慣れた三人組に出会った。
「おやおや。これは奇遇ですね」
「昨日は随分と遅かったじゃねえか」
「野宿はどうだった?」
「いやいや、野宿はしてませんって」
ツラナギ、シナツヒコ、タケミカヅチの三人だ。見慣れた三人に出会い安堵していたら、ツラナギが質問をしてきた。
「ところで、こんな所へ来てどうしたんですか?」
どうやら三人もこの屋敷に用があってきたらしい。
「この屋敷に出る幽霊の討伐をしに来ましたけど、ツラナギさん達はどうしてここに?」
「私達は王にこの屋敷を拠点にしていいと言われたので」
どうやら王ことトロヴァ二世もこの屋敷には悩ませられてるらしく、拠点にして良い代わりに怪奇現象を何とかしてほしいとの事。目的は一致しているので一緒に行動することにしようとしたのだが。
「丁度良い機会ですし、ここは一つあなたの腕を確かめさせてもらいましょうか」
「良いのか?もし、行方不明になったとしたら」
「これくらい熟せなきゃスサノオ探しなんて無理だろ」
「それもそうだな」
心配してくれるのはシナツヒコだけかと思ったのだが、あっさり考えを改めていた。
結局自分一人でこの問題を解決することになった。その代わり、この屋敷の主は自分で良いとの事。この屋敷の管理は、問題が解決したら王直属の執事部隊が何とかしてくれるらしいので心置きなくスサノオ探しが出来るらしい。
執事部隊ってなんだろうと思いながら屋敷へと押し込まれていった。
相変わらず絵画に吸い込まれそうになるが、やはり近づくと手が伸びてくる。絵画に爆破魔法をぶつけてみても良いのだが、また反射されたら面倒なので暫くは手をやり過ごしながら観察してみた。
すると、違和感が一つ浮かび上がってきた。その違和感とは表情が変化しているのではと思った。
良く顔を見つめていると、眉辺りが微かに動いたのを目にした。やはりこの絵画が手を出しているのかもしれない。しかも表情もある。もしかしたら感情があるのかしれない。
「話し合いには応じてくれるかな、絵画の美女さん?」
そう言うと頬を僅かに染めて、手を引っ込めた。どうやらこちらの言葉は分かるらしく話し合いの余地はありそうだ。
「そちらから襲って来ない限りは、こちらから危害を加える事はしないよ」
「・・・」
どうやら絵画の女性は、こちらの話は聞こえるが喋れないらしい。これでは相手の意思疎通が出来ないので、代わりに手を使って返事をしてもらうことにした。
「あなたはこの屋敷の主ですか?」
その問には手を横に振った。どうやら主ではないらしい。
「絵画に閉じ込められたんですか?」
その問いに手は親指を立てた。どうやらこれは肯定の意を示しているらしい。
「何故、他の人を襲ったんですか?」
そう聞いたらシャドーボクシングをし、次に降伏を示しているのか両手を上に向けた。そしてシャドーボクシングをまたした。
「襲われたから反撃したって事で良いんですかね?」
親指をグッと立てた。
つまり、こちらから襲わなければ何もしてこないらしい。それを信じるか信じないかと聞かれれば半信半疑と答える。もしかしたら悪霊で騙しているのかもしれない。だが、それを考えてしまえばややこしくなるので考えないようにした。
ふと絵画を見るとどこか寂しげにしているのが分かった。
「もしかして寂しいんですか?」
その返事は手では無く目で訴えていた。できれば彼女を元に戻してあげたかったが自分一人では解決出来ない。
どうしたものかと考えツラナギ達の事を思い出した。彼らは人へ転生したと言っているが神力の全てを無くしたわけでは無いようで頼ろうと考えた。しかし、この問題は自分一人で解決しなければいけない様な気がしツラナギ達に頼るのは止めた。
「・・・」
しばし考えた後、素直に切り出してみた。
「ここに出るという悪霊を討伐したら、この屋敷を貰える事になっているんですよ」
すると、彼女が攻撃をしようとしてきたので慌てて止めた。
「話は終わってませんよ!・・・討伐されたフリをしてこの屋敷の悪霊は討伐されたという事になれば、一緒に住めるんですよ」
ギルドを騙す事にはなるが絵画の事も放っておけず、一緒に暮らす事を提案した。まだ詳しく絵画の彼女の事を知らずに討伐するのはなんだか気が引けた。何より、あの日記の事やスサノオが関係しているかもしれない。
しばらくの沈黙の後、彼女は親指をグッと立てた。彼女も一緒に住むことは反対しないらしい。
ツラナギ達には自分から説得するので問題ない。
「良いですよ」
あっさりと許可を頂いた。二人にも聞いてみたが問題ないとのこと。ただし、襲ってきたら本気で討伐すると。
絵画の彼女に紹介すると、凄い震えているのが分かった。アンデッド系は神力を感知出来るのだろうか。
「では、名前を付けましょうか」
「なんでそんなことを?」
「いつまでも絵画の女性だと面倒じゃないですか」
確かに、いつまでも絵画の女性だけじゃ面倒だ。では、何と名付けるか。自分は名前を付けることに時間を食ってしまうタイプで、一向に決まらない。
「名は体を表すと言いますし、じっくり考えても良いでしょう?」
そう言ってツラナギは絵画の女性に問いかけた。その返事に親指をグッと立てた。
「では、我々は道影君の依頼達成を報告しに行きましょうか」
「そうだな」
「討伐依頼受けるとするか」
そう言って三人はギルドへ向かった。取り残された自分は未だに名前で悩んでいる。
「そうだなぁ・・・」
絵画を見つめ色々考えた。安直にモナリザと言うわけにはいかないし他作品の名前から取ってもよかったのだが、美術品の名前なんて覚えていないので困り果てていた。
「ん~・・・アリスなんてどう?」
名前の由来はあの有名な不思議の国のアリスの主人公、アリスから取ったものだ。少女がウサギを追いかけてふしぎの国へ迷い込むと言う内容だ。境遇は似ているかは分からないが何となく同じ気がした。
その名前は気に入ったらしく拍手をしてくれた。
「じゃあ、アリスこれからよろしくね」
そう言って絵画の女性改めアリスと呼ぶことになった。
そしてギルドの調査団がやってきた。
手筈通り玄関へやって来た調査団の一人を手が襲い、それを自分のリトルボムで弾けさせ幽霊がいることを証明させた。どうやらアンデッドの中でも幽霊の存在を信じているものは少なくこの討伐依頼を達成させるための証人になってもらった。
襲われた人は腰を抜かしそのまま動くことはなかった。どうやら他の者も同じく動かないままだった。
そんなことはお構いなしに、手の主ことアリスの絵画の偽物に魔法を放った。
「ショットブラスト!」
魔法を唱え偽物の絵画を穴だらけにした。すると無数の手がウネウネと苦しみ出して、やがてぐったりと倒れ消滅した。絵画は跡形なく無くなりその場所には額縁だけが残っていた。
「これで終わりだな」
「そうみたいですね」
「大したことなかったな」
そう三人は言って終わったと思い込ませた。
「これで討伐は完了ってことで良いですね?」
「あ、ああ・・・いや、他にもいるかもしれないので部屋も調べさせてもらおう」
こう来ると分かっていたので、即座にどうぞと部屋の散策を促した。アリスはと言うと玄関の片隅へひっそりと置かれている。
「うむ。異常はないな」
そう言った団長の言葉に安堵した兵がぐったりと床に座った。
「おやおや、皆さんお疲れ様です」
そう言ってツラナギは皆の分の水を差し出した。どうやらコップは、調査団が探索している間に買ってきたらしい。他にも必要な日常品を買い揃えたようだ。用意が良いなと思いながらも自分も口にした。ツラナギの水の魔法はこういう時にも便利であり少し羨ましかったりする。
「ありがたい」
そう言って皆一気に飲み干した。
「はぁ・・・この屋敷に住まう幽霊は討伐された。」
そう言って団長は討伐したと言う証人になってくれた。これで幽霊屋敷は一件落着となった。




