神と名乗る者
初めて書いたので至らぬ点が多々ございます
「お目覚めになられましたか」
そう言ってきたのは、腰まで届くほどの長髪を数珠の様なもので髪を束ねた男性だ。目は細く体は長身で華奢であり色白、不健康という言葉がぴったりだ。
「今、失礼なことを考えましたね?」
「ここは・・・」
そんな事はお構いなしに自分は自分の身に何が起こったか整理していた。いつものように通学に使う電車を待っていた。そこにいつも通り快速の電車が通り過ぎようとしてきた瞬間、突如人が飛び出していった。咄嗟のことでなんとか手だけ動かし助けようとしたのだが、その人の手を掴んだと同時に引き込まれる形となって電車に衝突した。
「死後の世界?」
疑問形なのは周りが木々生い茂る森だということ。そして血溜まりが出来ている狼の死体の数々。返り血を浴びている二人の男女が居たからだ。地獄かと思ったが、それにしては空が澄んでいて気持の良い風が靡いていることに疑問を思っていると長髪の彼が説明しだした。
「ここは死後の世界・・・ではなく、あなたのいた世界とは違う世界。所謂異世界です」
納得できないという顔をしていたのか彼は続けてこう切り出した。
「申し遅れました。私は頬那芸神。日ノ本で神をしているものです」
ツラナギノカミ。聞きなれない神様の名前を口にした彼はニコニコしながら自分の反応を待っていた。なんだかおちょくられている気分で少し腹が立った。
「知らない名前ですね。それに神様がなんでこんな場所にいるんですか?」
ムッと睨みながら返答し、周囲の状況の説明を要求した。
「私を知らないとは・・・」
そう言って膝を付いた自称神様が独り言を言い始めた。何がなんだかさっぱり解らない状況下で血だらけの男女、体育座りをしている自称神様、狼の死体の山、自分は夢を見ているのだと思っていると短髪の男性が話しかけてきた。
「あ~、こいつの悪い癖が出たな・・・」
短髪の彼はそう言いながらこちらへ近づいてきた。髪は短く逆立ち、髪色は黄色。大剣と思しき剣を軽々と担いでいた。身長は長髪の彼より少し小さいが筋肉隆々であり長髪の彼とは真逆の印象を与える人物だ。そんな彼が血まみれで厳つい目をしながらこちらへやってくるものだ。すごく怖い。
「なんか考えてただろ」
そう言って剣先を向けて来た。逃げ出したい気持ちを抑えながら疑問をぶつけてみた。正直、こういったタイプは苦手だがそんなことより自分の身に何が起きたかを知りたいが為、恐る恐る聞いてみた。
「ツラナギの言う通りここはお前の居た世界とは違う世界だ。お前がどうやってここへ来たかは知らねえが少なくともお前は死んじゃいないぜ」
死んでいない?ならどうやってここへ来た?この三人は一体誰だ?疑問が溢れるばかりで混乱してきた自分に今度は返り血を浴びた女性が話しかけてきた。
「少しばかり下がってもらおうか建御雷之男神。順を追って説明するが、先に君のことを教えてくれまいか?」
身長は男性二人とは差があり小柄だ。見た目は自分と歳が変わらない。髪は肩まで伸び緑色の髪を切り揃えそこに簪を付けていた。ハイカラな着物姿がとても良く似合う女性だ。
「名前は神堂道影、高校生です」
そう切り出し、自分の身に起こったことを話した。すると彼女はため息をつき話しだした。簡単に説明すると、自分は轢かれる瞬間この世界(異世界)へと転移した。その人は神様で本当はその人がこちらへ来る予定だった。そして自分以外この場にいる三人は神様だと言う。
「信じられないかもしれないが、本当のことだ。」
唖然としていた自分に訴えかけるように呟いた彼女はどこか申し訳なさそうに答えた。
「正直言って信じられませんが・・・いや、信じます」
説明を聞いている内に落ち着きを取り戻し状況を整理した。まず自分の身に起こったことが夢じゃなかったこと、その人の代わりに自分がこちらの世界へきてしまったこと。もし本当の事だったら自分がここにいることも納得できる。嘘だった場合、どうしてそんな嘘を付くのか解らない。取り敢えず彼女の言うことを信じ、嘘だった場合はその時に考えよう。
「ありがとう」
そう言って彼女は自分の名前を言ってなかったことを思い出し名乗りを上げた。
「そういえばまだ名乗っていなかったな。私は志那都比古神。風を司る神だ。そこでイジケている彼が頬那芸神。水面を司る神だ。そして」
「おっと、名乗りは自分で上げるもんだぜ」
そう言って大剣を担いでいる彼は名乗りを上げた。
「我こそは三柱が一柱。雷神こと建御雷之男神。よく覚えときな」
シナツヒコ、ツラナギ、そしてタケミカヅチ。そう名乗った彼らは本当に神様なのだろうか・・・