第16話 派手に来な side???
超、短いです。
「――やっぱりしぶといなぁ」
「かかっ、まだまだ若いもんには負けんわ」
徒手空拳と細見の刀――成立するはずのない戦いが、今ここに成立していた。
しかし、フード男の前に斬撃などは意味を成さない。何故なら、彼には『吸収・放出』という唯一無二の絶対的な力が存在するからだ。
『吸収・放出』とは読んで字の如く、攻撃という事象をそっくりそのまま相手に返す魔法だ。つまり斬撃を与えれば、掌からは斬撃が生み出され、己に刃を剥く。直撃すれば致命傷だ。
町長と名乗る老人もそれは重々承知している。だから刀によって斬り付けるのではなく、鈍器の様に峰で殴打する。
当たれば必殺の斬撃よりかは、気絶する程度で済む殴打の衝撃の方が遥かにマシ。そんな事を判断しての行動だった。
「なあ、お前さんや。そろそろ良いんじゃないか?」
「……うーん、後ちょっと時間が欲しいかな」
「面倒じゃのぉ……幾ら芝居とは言え、お前さんの相手をするのは些か骨が折れるんじゃ」
「もう少しさ。さっきから何か話し合ってるみたいだし、オレに一泡噴かせようとしてるらしい。せっかくの数百年越しの娯楽だ、楽しまなくっちゃね」
この騒々しい闘技場、加えてこの殴打の嵐の中だ。彼らの囁きに気付く者は誰も居ない。
そう、彼らにとってこれは言わば茶番。最初から仕組んでいた事だったのだ。
あの召喚者達がこの大会に参加してから、フード男の蹂躙、町長の乱入まで、全ては筋書き通り。
掌の上のただの寸劇だ。
「……何度も確認するんじゃが、ここまでやる必要あったかのう?」
「あったさ。彼らだけではオレに勝てない。だから優勝常連の二人を巻き込んで協力して貰う必要があったんだ。それでやっと、三割のオレに届くかどうかだけども」
「全ては見極めるため――か」
「ああ――ようやくだ」
果てしなく永い日々だった。
どれだけこの日を待ち望んだだろうか。
どれだけこの日を希っただろうか。
どれだけこの日に想いを馳せただろうか。
どれだけ――自分達を、恨んだだろうか。
「念願だ。オレの……いいや、オレ達、『神に近付き過ぎた者達』の」
「……ああ、そうじゃな」
これは世界のためでも何でもない。
ただの自己欺瞞を正そうとしているだけだ。
他人を使って、という考え自体が歪んでいるのかもしれないが。
そうでもしないと、自分達の行いは清算されない。
犠牲を弔う事が出来ない。
『神に近付き過ぎた者達』は何億という屍の上でなお、自身を肯定して欲しいと願う――どうしようもなく愚かで、醜く、この世で最も生きていてはいけない狂人達なのだから。
不意に、思考を遮る様に銃弾が放たれた。
それこそが、彼の野望とも取れる清算の第一歩だ。
彼はその銃弾を丁寧に避けた。同時に、老人はあたかも彼らの意志を察したかの様にフード男から素早く離れる。
「……特にそこの二人、オレがボコボコしたのにまだ抵抗するなんて、見上げた根性じゃないか」
五人の一角、禿頭の巨人は口を真一文字に引き結び、正反対に獣人は唇を弧に歪ませていた。
召喚者の一人、名も知らない女は銃口から硝煙を上らせ、フード男を見据えたまま答えない。
代わりに、隣の魔導士が口を開く。
「やられたらやり返す、倍返しだ。……知りませんか? 一昔前の流行語なんですけど」
「さあ、どうだかねえ」
フード男はのらりくらりと返答する。それはまるで罪悪感を隠す様だった。
「今回は倍返しとまでは行きませんけど――残り時間限りの協同戦線で、半分返しくらいはさせて頂きます」
「……そうか。じゃ、精々――派手に来な」
5対1。
逆にここまで相手の人数が少ないのも久し振りだ――そんな風に思いながら。
フード男は、待ち望んだ彼らの道に立ち塞がる。
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