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狂気、嵐の二人組

「しかし、この時間におれ達以外で出歩く人がいるとはね、しかもそれが新入りときた」


「ふつーの新入り君は皆仏頂フェイスだからねぃ、コーヒーをエンジョイしてる新入り君なんて初耳さー!」


ボクはまだなんとか対応出来るが、藍の方はフリーズしている。百日紅……サリーと名乗った彼女のテンションが高い、というかおかしい、というか。兎に角そんなこんなで処理落ち中といったところだ。


「や、すまない、サリーが困惑させているみたいだな、楽にしてくれていいよ、こいつの発言なんか無視して大丈夫だから」


「そだよー、ノープロブレム!サリーはいつだってフリーダムでクレイジーだからねっ!にゃははは!」


笑うと、クルクルと踊りだし、足がもつれたのかぶっ倒れるサリー。それでまた笑っているのだから確かにクレイジーだ。ボクは苦笑した。


「山茶花達はどうしてこんな朝早くに出歩いてるんだい?何か用事でも?」


「サリーの提案でね、若い頃から、拠点を隅々まで散歩するのが日課なんだ、どういう目的があるのか、おれにもわからないけど」


隣にいる彼ですらわからないのなら、真意はサリーのみが知るのだろう。と、その当人がこちらに歩いてきて、突然ニカッと笑った。


「サリーがお散歩するのは、帰る場所を間違えないためだぜぃ、いつだって、忘れちゃいけない、ものがある。サリー、渾身のハイク」


それは俳句ではなく川柳では、いや、そもそも韻を踏んだだけで川柳ですら無いのでは、とツッコミを入れる前にまたぴょんぴょん飛び回りだすサリー。何も言う暇がなかった。


「サリー、待ちなさい。悪いね新入り君達、また時間があれば」


軽く手を振って、山茶花もサリーに付いていった。嵐のような人達だった……。


「藍、平気かい?」


ボクに声をかけられて、藍はようやく正気に戻ったようだった。


「は、はい野苺様、藍は野苺様に失態などお見せしません」


記憶改竄してるんじゃないかこの娘、とボク達ロボットに有り得ないことを思いながらボクは笑った。


「戻ろうか、ボクにしても刺激が強かったよ」


「はい、ここには個性的な人物が多いですね、野苺様が霞みます」


別に影が薄いと言われているわけではないよな、と不安を感じながら、ボク達は部屋に戻るのだった。

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