プロローグ ~1日目
ドクペ飲みながら書きました、是非ドクペ飲みながら読んでください。
死んだ者が蘇らないのは、この世界の摂理。
実際、今までに例はない。と言ってしまえば僕もゴルゴタの丘で脇腹に穴を開けられかねないが、目を血走らせて僕の身長に合わせた十字架を設計しているであろう人々には安心してほしい。それは結構昔の話だから。
今この世には死体が溢れている。それも生きている死体が。
はあ、更なる冒涜になった気はしないでもないが、ここは日本だ。さておいて。
現代、この日本では人が死に過ぎた、いや、死に過ぎただけならば問題は些事だけれど、問題なのはその死に方だった。この国の死人は、俗に言う「地獄のお沙汰」の難しい者が多い。要するに最後の審判の長引きが問題になっていた、らしい。減らない死亡者と終わらない裁判、そして初めの裁判に至るまでの四百キロメートルの道のりはお盆休みの帰省ラッシュの如くごった返し、三途の川は死人のダムでせき止められ、噂によれば死者の魂を裁く十王の全てがノイローゼになったとか。
そしてついに四年前、死人が溢れた。裁きを待つ死者が、ついに「あっち側」から追い出された。生と死の境界があいまいになった第一例だ。その後、「黄泉還り」の対応に文字通り死ぬほど頭を痛めていた政府あてに一通の手紙が届いた。内容は
・死者の世界から溢れた魂が一時的に元の肉体に戻り動き回っているということ
・49日経てば「あちら」に空きが出来るため魂は肉体を離れること
・「こちら」で待機している間に下手に魂が汚れぬよう、収容施設に監禁など手荒な扱いは避けてほしいこと
・しかし近しい者と共にいると現世に悔いが残り「こちら」に縛られてしまうため、家族などとは離して欲しいこと
後、死者を際限なく生み出す現世に対する非難轟々。
そんなことがあって僕らは死んだあと「死後籍」という新たな戸籍を登録され、名前を新たに戒名に付け替えられ、無作為に選ばれた一般家庭に49日間厄介になる事になった。
そして一人暮らしの僕の家にも、ウォーキングデッドがやって来た。血が物理的に通っていない白い肌、整った顔立ちの中文字通り死んだ目に、死後硬直しているのか一切動かない表情。何といっても首にぐるぐると巻き付いた赤黒い縄跡がまぶしい女の子だ。
「今日から、49日間......お世話になります。良寂です、よろしく。」
綺麗な子だからか、恐ろしさからか、目の前の少女と正反対に僕の心臓はドッキドキだった。