星は唄う
自分の中で結構気に入ってた作品。短いですがどうぞ。
紅かった。地面も空も、君も私も、ぜんぶぜんぶ。
ああ、わからない。何故、君が、どうして。そんな事の繰り返しで、私のアタマは故障中。
「ねえ、知ってる?」
何を、と言いたかったけど、言えなかった。言葉は喉にひきこもり。
黙って首を横に振る私の手に、君の手が重なる。同じだったそれは、いつの間にか私より老いていた。
ああ、このまま二人くっついて、ふたり一緒に消えてしまえたなら。
「人は死した後には、星になるんだって。」
見上げた先の星空に、半分に欠けたそれが浮かぶ。双子座が煌めく。
はらはらと落ちる歪んだ月に、何を思う。
「だから、ほら。泣かないで。」
泣きたくて叫びたくて、助けを乞いたくて、できなかった君の代わりに。
「僕は先に行かなくちゃ駄目だけど、でも、」
君の時計は壊れてて、
「星になって、君を見てる。ずっとずっと、君の月が消えるまで。」
私の時計は狂ってる。
「だからお願い。どうか、」
愛しい君の、最後のお願い。
「生きて、エルシア。」
ああ、なんて残酷なの。
こんな星夜だった。彼女の月は、まだ消えない。エルシアは星を探す。
「こんな夜に浮気ですか?」
不機嫌を隠そうともせず、彼は言った。
「なんじゃ、星に嫉妬しておるのか。難儀な奴じゃのう。」
「とぼけないでください。どうせまた、あの人を思い出しているのでしょう?立派な浮気ですよ。」
「何世紀前の話をしておる。今はもう、過去の人間じゃよ。」
まだ納得のいかない様子だったが、やがてエルシアがもう何も言う気がない事を悟ると、諦めて彼女の背にもたれた。
膨れている姿は年相応で、彼女は思わず笑みを零す。
失ったものが大きすぎて、彼女は壊れてしまった。
時は自分を無視して過ぎて行く。
暗闇の中、あの星だけが彼女を見ていてくれた。
焦がれた光は眩しくて、痛くて。でも涙が出るほど優しかった。
何世紀かぶりに涙を流したあの日、彼女は確かに、満たされていたのだ。
「ねえ、エルシア。君は今、幸せかい?」
魔女は幸せそうに微笑んだ
書けたら続きを書きます。また短編で。