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プロローグ

西暦末、人類は突如として出現した未知なる金属生命体「アルディア」によって、母なる星である地球を追われることとなった。

住処を奪われゆく人類は、科学技術の結晶として世界に披露されるはずだった「コロニー」に安息を求め、六つの国が建造したそれぞれのコロニーへと落ち延び、生活の場の移行を余儀なくされることとなる。



それから約半世紀を経た、「六天歴」54年。

人類がアルディアと渡り合うため、その化学力の粋を結集して生み出したのは、全長8mの鋼鉄の騎士――正式名称を「汎用人型戦闘機メタルナイト」、通称MKと呼ばれる、人類のための切り札だった。

そしてそれと時を同じくして、MKを運用するための専用規格で設計された宇宙空間をも突き進む船、こと機動戦艦を建造。

人類は、着々とアルディアとの戦いの準備を進めていたのだった――。



「……以上が、地球からコロニーへと生活の場を移した人類の歴史です」

「よろしい。――よく覚えておけよ、候補生諸君。君たちの卒業とはすなわち、あの蒼き清浄なる地球を取り戻すための戦いに駆り出されるということだ。アルディアに辛酸をなめられた、短くとも長いこの半世紀の歴史を忘れないでほしい。いつの日か、人類は地球を取り戻す。その時にこそ、アルディアという名の呪縛から解き放たれるということを忘れないでほしい!」

教卓に立って教本を持ち、声高に演説する教師の声に重なって、授業を終了する旨のチャイムが鳴り響いた。気づいた教師が持っていた教本をぱたんと閉じて、再度口を開く。

「それでは、この授業をもってわが『天渡学園あまとがくえん』の全課程を終了とする!諸君らの試験結果と配属部署については明日追って連絡するので、それまでは寮でゆっくりと休んでほしい。以上、解散!」

教師の声で、生徒たちが口々に終わった、お疲れなどのねぎらいの言葉が飛び出て、たちまち周囲は喧騒に包まれた。その喧騒に紛れて、人目を避けるかのように一人の少年が足早に教室を抜け出した。

素早く廊下に出て歩き始めると、すぐ隣のクラスの教室の扉が開き、同じような格好の少年がこっそりと抜け出してくる。

「……お、よぅカズ。生きてやがったか」

「マサこそ、喧噪でくたばってなくて何よりだ」

皮肉めいた笑みを浮かべながら、二人は並んで歩き始めた。一つ伸びをしながら、マサと呼ばれた少年が自分がカズと呼んだ少年に向けて話しかける。

「なぁ、明日の合格通知、俺ら受かってると思うか?」

「違うぞマサ。ありゃ合格通知じゃなくて落第通知だ。あの中に書かれなかった奴はな、生徒たちの記憶から抹消されて未来永劫さようならさ」

「おー怖。ならなんとしても落第になんなくちゃなー」

「自分の目的を忘れるな錯乱坊。……いやまぁ、確かに俺らは五人そろってラクダイジャーだけどさ。それでも希望持とうぜ?」

「うるせぇ落第赤点レッド!ちなみに俺はイエローだ」

「ラクダイジャー否定しろや、あとお前が言った意味だと赤点とレッドって同義語だぞ!……あーくそ、こんなんだから落第なんだよ」

「はっはっは、少年よ大志を抱け!」

「希望持ってないのはお前だろうが!」

傍から見たら喧嘩をしているかのような、けれど二人にとってはいつも通りの応酬を繰り広げながら、少年たちは母校である「天渡学園」を出て、寮に向かった。明日発表されるという、合格通知の結果に若干おびえながら。



***



「候補生の選出は終了したか?」

巨大な屋敷の片隅にある執務室。書類をチェックしてはサインやハンコを入れていく壮年の男が、近くに控えていた黒いサングラスの男に向けて問いかける。

「完了しております。こちらをどうぞ」

壮年の男の問いかけに反応して、サングラスの男はどこからか茶封筒を取り出し、男の机に差し出した。ほかの書類を肘で押しやり、壮年の男は茶封筒を手早く開封、中に入っていた書類、数えること五枚を取り出して、それぞれをじっくり読み始める。

やがて数分が経ったころ、ほうとため息をついた男が満足そうな顔でサングラスの男を見上げた。

「なるほど、落第生を活用するのか。……しかし、彼らのスペックはそろって相当なものだ。何故落第となるのだ?」

「その点については、私情である故介入は行えませんでした。ですが、彼らは埋もれさせるには惜しすぎます」

「……そうだな。では、流星型一番艦のクルーは彼らたちで決定の運びとする。重ねて言うが、これは機密事項につき――」

鳳崎おおとりざき総理以外には公表するな、でございますね。存じ上げております。……では、私は別件の仕事につき失礼させていただきます」

満足げな顔をした男――鳳崎に一礼し、サングラスの男はそそくさと部屋を出ていった。執務室に残された鳳崎は、低い声で唸るような笑い声を漏らす。

「……すべては動き始めた、か。地球奪還への切り札は――彼を欲している」

外から差し込む夕日が、鳳崎の顔に濃い影を落とした。

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