他の女子とは目を合わせないようにしましょう
「今日も良い天気だね」
「うん、そうだね」
「雲が一つもないよ、凄く綺麗な空」
「うん、そうだね」
春の日差しに包まれながら、見慣れた通学路を心愛さんと手を繋ぎながら登校する。
幸せ過ぎる時間……………のはずなんだけど。
「心愛さん心愛さん」
「どうしたの、大翔くん?」
「僕、何も見えないよ!」
僕は真っ暗な世界にいる。
いやいや、廚二病とかじゃないよ?
なんせ心愛さんに黒い布みたいので目を遮られてるからね!
いやー、視線(精神的ダメージ)が痛い痛い。
………ぐすっ、いや本当に痛いんですよ。
HPが0になるくらいフルボッコなんですよ。
なんで、こんなことに…。
こうなった原因を探すために状況を整理しよう。
僕と心愛さんは家を出て学校に向かった。
僕が外の空気を堪能していると、心愛さんが後ろから僕の目に黒い布を被せた。
困惑している僕の手を握り歩き始める心愛さん。
そして現在、視線によるフルボッコ。
…うん、まったく理由が見つからないね!
こうなったら本人に聞くしかない。
「心愛さん、どうしてこんなことを…」
「だって他の女の子と目を合わせてほしくなかったんだもん…」
「で、でもこれじゃ僕…変態みたいだよ」
「大翔くんが変態でも、私は大好きだから大丈夫だよ」
全然大丈夫じゃないよ?!
ていうか既に変態公認だよ、心愛さん!
彼女に変態扱いされているという事実を知り精神的ダメージが致命傷に変わりつつあった。
しかし困った、本当に変態として通報されかれない。
とにかく心愛さんを説得しなくちゃ!
「心愛さん、これ外してくれないかな?」
「…どうして?」
心愛さんが歩くのを止めて僕の方を向く(見えてはいないが感覚でわかる)。
声のトーンが若干下がっていた。
こういう時の心愛さんには気をつけなきゃいけない。
接し方を間違えれば大変なことになる。
「大翔くんは私より他の女の子の方が気になるの?」
「それは違うよ、心愛さん」
「じゃあ、どうして!」
「これを外してくれなきゃ…」
僕はここで大きく息を吸い込む。
この台詞は強く心愛さんにぶつけなきゃ!
「可愛い心愛さんの顔が見れないじゃないか!」
あたりが静寂に包まれる。
まるで時が止まっているようだった。
見えなくても僕にはわかる。
今、心愛さんの顔は真っ赤だろう。
なんせ言った僕自身が真っ赤だからね!
自分自身でとどめを刺しました、恥ずかしいぃぃぃ!!
「大翔くんがそう言ってくれるなら、外すね…♪」
「あっ、うん…」
心愛さんの声は弾んでいて、僕の声は沈んでいた。
黒い布を外されると眩しい世界が広がる。
周りを見回すと同じ制服の生徒が僕を見てヒソヒソと話していた。
いやぁぁ、見ないでヒソヒソ話さないでぇぇ!
「行こ、大翔くん!」
心愛さんが僕の手を握り歩き始める。
僕はその手をさっきよりも強く握った。
あぁ、ほんと…イイアサダナー。