《01》破壊姫
グレーは笑った。
新しい玩具を手に入れた時の子供のように。ケタケタと楽しそうに笑った。
廃墟の床に突っ伏した●●●を蹴り飛ばし、壁に打ち付けられたその体を左足のハイヒールで
力いっぱいに踏みつける。
グレーがヒールの踵で擦り付ける度、その体はギチギチと悲鳴をあげ、グレーは喜悦の笑みを浮かべ
さらにその足に体重をのせた。
゛これはね、ゲームなの。゛
動かなくなった男の体を痛めつけることに飽きたのか、血が付いたヒールを脱ぎ捨てて男の顔に
投げつけ、小さく言葉を呟いた。
小さく。だが、楽しそうに。
゛わたしはグレー。このゲームの鍵。壊すもの。すなわち、破壊姫。゛
歳は大体15か16と見える少女…グレイは素足のまま、硝子の上に足をつけ、
男に向かってゆっくりと歩きだす。
゛あなたは偽物だった。肉を引き裂いた時の血が、悲鳴をあげない。゛
ジャリ、ジャリ。
足と硝子が擦れ合い、嫌な音が廃墟の中を埋め尽くす。
゛ねぇ、○○○は……何処?あなた、偽物なんでしょう?゛
そう言って、グレーは男のシャツの襟を強引に引っ張った。
゛○○○は、かくれんぼ上手だから。それもただ隠れるだけじゃないの。゛
゛影から、ひとりづつ、綺麗にケスの。゛
前髪に隠れたグレーの右目が、怪しげに赤く光る。
゛その子の影にうつりこんで、油断したトコをゆっくり痛めつけるの。
……こうやって゛
グレーは声もださず、ただ項垂れた男を手刀で刺した。
ドスリ、とついた瞬間に血のぬめりが奏でられる。
゛まずは腹。貫いて、内臓を抉って、真っ赤で綺麗な花を咲かせる。゛
グレーが手を中でかき混ぜる。体の重要な部分である胃を握りつぶし、消化物が
汚物となって血と混ざり合い、床に零れた。
゛わたしはそれが好きで始めのうちは見ていたけど、
これ以上やられると、ゲームが面白くないからね。そろそろ、遊んでなくちゃなって。
ね?ボルドーさん゛
男…ボルドーは、既に死んでいた。




