一章5話 冒険者協会
『ゴーレムメイク』の魔法を習得してから数日後、トモカさんの文字の勉強も大体終わり、僕達は本格的にクインシス学園の冒険者見習いとして動き出すことにした。
まず魔法科に登録し、授業に参加する。冒険者として必要な知識を教わり、模擬戦などで経験値を積んでいく・・・僕は今の状況をゲームのように楽しんでいた。元の世界に居た時は異世界で冒険なんて僕には無理だと思っていたけど、一度死んで色々吹っ切れたんだと思う。
「冒険者協会?えっと、授業で聞いたような気がするね」
「そう、そこで私たち見習い冒険者用に簡単な依頼が有れば、それをこなす事で授業の単位と少ないけど報酬が貰えるみたい、この世界のお金を持ってない私たちには良い話だと思うけど・・・どう?」
ある日トモカさんがそんな話を持って来た。
確かに今の僕達は無一文だから何らかの方法で稼がないといけないとは思っていたんだよね。
「いいんじゃないかな」
「よし!じゃぁ決まりね」
そんなわけで今僕とトモカさんは学園を出て森入り口に有る街までやって来ていた。
一応ここがこの国の首都クインシスなんだそうだ。
「冒険者協会は・・・あれね、流石ねクインシス学園国、協会建物も大きいわ、アクアリスの方はこれの半分くらいだったわよ・・・あまりよく覚えてないけど」
協会は簡単に見つけられた。建物の中に入る、中はレストランと銀行の混ざったような内装で所々に冒険者やおそらくクインシスの学生、後は協会の職員が居る。
トモカさんが受付らしき女性に話しかける、僕は基本初対面の人と話すのは苦手だ。けどトモカさんの話だと元の世界に帰れるみたいだし・・・それは、そのうちトモカさんは居なくなるってこと。元の世界では既に死んでいる僕が帰れるとは思えないから今のうちに1人になっても大丈夫なように慣れないといけないよね・・・
「いらっしゃいませ、本日はどういったご用件でしょうか?」
「えっと、依頼を受けたいのだけど・・・」
「依頼ですね、それでは冒険者レベルを教えてください、それに合った依頼を表示します」
受付の女性がカウンターの机に埋め込まれた青い球体を操作する、これは多分図書室に有ったのと同じ道具だな、パソコンの様な物かな?
で、冒険者のレベルか、僕たち見習いにレベルって有るのかな?
「私たち2人とも今回が初めてなんで・・・」
「レベル1ですね、それではこちらになります」
球体から浮き出た淡く光る文字が依頼と依頼内容、報酬なんかを記していく・・・
魔物退治、薬草や鉱物の採取、子守の手伝い、店番権用心棒、情報収集などで比較的に簡単そうなモノが表示されている。
「最初はこれとかどうかな?」
トモカさんが薬草採取の依頼を指して言う、街の近くの草原で取れる珍しい薬草の採取、強い魔物も生息していない草原なので僕達でも充分対処できる依頼だろう、店番とか子守の手伝いは時間がかかるし、最初の依頼としてはこれぐらいが妥当なんじゃないかな、ゲームだったら多少無理してでも難易度の高い依頼を択んでレベルアップをもくろむんだけど・・・これは現実だ、慎重に行った方がいい・・・
「そうだね、それにしようか」
強い魔物の生息しない草原、強い魔物は居なくても魔物は居る訳だから気を付けないと・・・
手続きを終え僕たちは早速草原へ向かう、準備?している資金は持っていない。だから僕は薬草の採取用の鞄を持っているだけで武器は無い、有っても使えないけどね、素人が剣を振り回すとか危険すぎる、今日までに覚えた魔法だけが僕の武器だ。
トモカさんの方ははじめから持っていた弓と矢、矢は前は弓道の矢だったんだけど、学園で本物に変えてもらったみたいだ。
正に初期装備って感じだなぁ。
「無いわね、珍しい薬草って言うのは数が少ないって意味だったのかしら?」
いや、のん気に考えてる場合じゃないから!
案の定、魔物が出てきたよ!えっと、どう見てもスライム、不定形最弱魔物巨大な物になると打撃を無効化する物も居るが小型のものなら子供にも倒せる、でも数がおかしい、どこにこんなに潜んでたんだって言うくらいのスライム、スライム、スライム、スライム、強い(外敵になる)魔物が居ないからって繁殖しすぎじゃないか?
「大いなる黄の力を借り受ける
形は巨人、素材は我の立つこの大地
我が意に従い生まれ出でよ・・・『ゴーレムメイク・大地の巨人』」
今立って居る場所の土や岩を使い大地の巨人を一体作り出してスライムを叩き潰していく、明らかにオーバーキルだけど僕はこれ以外の攻撃法は今の処無いので仕方が無い。っていうかトモカさん戦って!!
「分かってる分かってる、ちょっとゴーレムの威力見たかっただけだって、行くよ!雷牙!」
雷を纏った矢がスライム達に向かって次々と飛び、当たった場所で弾け爆発する、これ魔法じゃないんだよね、本当どうやってるんだろ?
さて僕は2体目を呼び出そう。
1体を攻撃に回し、もう1体で防御、基本的なやり方だけどゴーレムって素早さは無いけど攻撃と防御が凄いんだよね、だから効果的だ。
数は多いけど雑魚の魔物なだけあってあっさりと殲滅できた。
「あ、トモカさんスライムの核、その丸いやつ形が分かる物は集めておいた方がいいよ」
「え?この気持ち悪いののこと?やぁ~やっぱり気持ち悪い!」
トモカさんが爆死したスライムの残骸から赤い核を手に取るけど、その手触りがあまりにも気持ち悪いのか?直ぐに投げ捨てた。核にひびが入り二つに割れる。
「あ~、今のやつ綺麗に残ってたのに・・・」
これじゃ引き取ってもらえないなぁ、魔物の体の中には薬になったり魔法の儀式に必要だったりといろんな理由から、集めて店にか協会に持って行くと買い取ってくれるんだ。協会の案内板みたいのにそう書いていた。一応この辺りに出る魔物の収集部位も協会の人に聞いてきている。
「ゲームみたいに敵を倒しただけじゃお金は手に入らないんだよ」
「RPG?あれって便利だよね~本当に倒すだけでお金が入ってくるんだから・・・あと宝箱を落とした!とか、有り得ないよね、そんなの持って戦ってたのか!!って言いたくなるよ~」
「はは、そうだね・・・っと、じゃあ僕がスライムの核を集めるからトモカさんは引き続き薬草探しを頼むね」
そういって僕はゴーレムを元に戻して核を集めだしたんだけど、薬草を探している筈のトモカさんが戻ってきた。
「どうかした?」
「いや、イズミ君狙ってやってるのかな?さっき戻したゴーレムの頭の部分・・・」
ん?頭の部分だった場所って・・・あの辺りかな?
あ、目的の薬草見っけ、それも依頼達成には充分な量がまとめて生えている。
「えっと・・・ラッキー?」
「そうね、これだけ有れば依頼は成功よね」
スライムの核と薬草を鞄に詰めて協会に戻るとなんだか騒ぎになっていた。
「何かあったんですか?」
「あぁ、なんかよくわかんねぇが学生に・・・」
トモカさんが近くに居た冒険者らしき人に話を聞いてきた。
「あはは、私たちが受けた依頼、学生用のじゃ無かったみたい、学生に間違って通常の依頼を渡したって騒ぎになってるみたいね、私たち学生は冒険者レベル0からみたいよ」
「はは、じゃあ早く報告に行って騒ぎを収めないとね」
あれくらいの依頼なら学生(見習い冒険者)でも大丈夫そうだけど、僕たち依頼を受けるの今回が初って行ってたから心配していたようだ。
依頼達成の報告後、半泣きしながら謝る受付の女性をなだめるのに苦労した。
「えっと、こちらがスライムの核の換金分と、今回の報酬になります。学生さんということですので学生証を出してください。今回の依頼のポイントを単位として入れておきます」
先日貰った学生証を受付に渡し単位を貰い、報酬を受け取る。
さて、初めての依頼は上手く行ったな・・・
死んで異世界に来てしばらく経つけどなかなか楽しいな。
僕はこの世界をゲームと同じように楽しんでいる、ファンタジーな世界で冒険、僕には無理だと思っていたけど、魔法なんて力も手に入れた、最近では筋トレも始めている・・・
一度死んだ身だからか、生前の僕とは少し考え方が変わっているみたいだ・・・
ま、とことん楽しんでやろう。
さて、キャラ紹介でしようかな・・・
・九薙 ともか 主人公その2
本作、エルリオール〜異界の勇者達Ⅲ〜では高校3年の18歳
エルリオール〜異界の勇者達Ⅰ〜の時にエルリオールには一度来ているけど
その時の事は殆んど覚えていない。
兄、朝日(作中に斬空の英雄として登場、現在は地球で大学生中)のせいで
チート化した弓術、九薙流弓術を使う。
一純の事をエルリオールに来る時に巻き込んでしまったと勘違いしている為
イズミを守り元の世界に無事帰そうと奮闘する。
・夕凪 一純 主人公1
プチ引き篭もりのゲームオタク、高校3年生で18歳
人と接するのは苦手、地球では序章の段階で死んでいるので、トモカの言う
帰れる方法で元の世界に帰ることは不可能だったりする。
既に一度死んでいることを自覚しているので色々吹っ切って、異世界を死
後の世界だと思い込み楽しんでいる。
紹介になっていない気もするけど、こんな所か・・・
エルリオール〜異界の勇者達Ⅲ〜では、その内、魔法とかの説明も入れようか
と思ってます。