一章2話 冒険者の学園
森の中で見つけた人の住む場所、昨日は夜で周りがよく見えなかったけど、一晩たち明るくなってから見るとここは何かの学園のように見えた。
今は、建物の1つに入り教員室を目指している(教員室って・・・ここ、やっぱり学校なのかな?)、私たちを案内してくれた男の人が朝はそこに居るらしい。
「・・・字が読めないね」
隣を歩くイズミ君の言うとおり、部屋の扉の上にはプレートが付けられていて、その部屋が何の部屋なのか書かれているんだろうけど、字が私たちの知っている言葉じゃないのでまったく読めない。
「適当に開けて行くしかないわね」
「それじゃここから・・・」
あれ?昨日は私の行動に慌ててたみたいだけど、今日は合わせて来た・・・
「慣れない事はするもんじゃないね・・・」
扉を開けた先では数人の女性が着替えの真っ最中だった。プレートに書かれた字は読めないけど、おそらく『更衣室』とかその辺りね、しかも女性用・・・
「イズミ君、ごめん」
建物内に女の子たちの悲鳴が響き渡った。
「あぁ!もう!自分がゲームの主人公みたいなことするとは思わなかったよ!」
建物内を女の子たちから逃げ回りながらそんなことを叫んでいる、私も適当に開けて行くしかないとか言った手前、責任を感じて一緒に逃げているけど、このままじゃ何も解決しないのよね。
「待てー!!」
武器を持って追いかけられて待つ人なんていないと思う。
「ごめんなさい、間違えたんです!!」
イズミ君は必死に謝りながら逃げているけど追撃の手は緩む事が無い、魔法まで使いだす人が出始めて流石に不味い状況になってきた。
とりあえず魔法は雷牙で迎撃しておこう。
「これは・・・何の騒ぎかな?」
良い所に昨日の男性が出てきてくれた!これで・・・
「先生!覗きです!」
「なに!」
助かるのかなぁ?不味い、女の子たちと一緒になって追いかけてきた!?
「大気を舞わす気まぐれな翠
其は咎を縛る不可視の鎖、
強固なる風にて捕らえよ 『ウィンドチェイン』!」
あ、あの魔法は多分、雷牙でも防げない。
後方から背中を押されるような突風が吹き私たちの身体を持ち上げる、宙に浮いた所で手足が空中に固定された。よく見ると私たちの手首足首に、風の渦が巻き付いているのが分かった。
「おや?君達は昨日の・・・
僕の所に来るように言っておいたと思うのだけど?まぁ詳しい話は教員室で聞こうか。
君達はもう戻りなさい、授業が始まりますよ」
女の子たちを解散させてくれたのは助かったけど、この魔法解いてくれないかな?
私たちは拘束されたまま当初の目的地、教員室まで連行された。
「さて、どうして追いかけられていたのかな?」
字が読めなくて適当に空けた部屋があそこだったと言うことを説明する。
「君達は字も読めないのに旅をしているのか?色々と不便だろう?」
「まぁ、そうですね」
まだこっちに来て二日目だから不便と思うことにも出会っていないけど、確かに字が読めないのは不味いわね、悠にぃを探す旅の途中でも字の読み書きは必要になってくるよね・・・
「ふむ、ここの教師としては君達をそのまま旅に出す訳にはいかないな」
「どういうことですか?」
「ここは、冒険者の学校なのだよ。何の知識も無く冒険者(旅人)になり命を絶つ者が増えていてね、ここは冒険者に必要な知識と経験を与える場所なんだよ」
へぇ、そんな場所があるんだ。
「どうだい?良かったら僕が君達に文字の読み書きを教えようか?」
「ちょっと待ってくださいね」
有り難い申し出だった、でも私1人で決める訳にもいかないのでイズミ君に相談しようと、少し時間を貰う。
「イズミ君、どうする?寄り道になるけど・・・」
「教わって行こう、ここでの寄り道は無駄にはならないと思う」
イズミ君も同じように考えてるのかな?あっさりと文字を教わることを了承した。
「決まったかな?」
「はい」
「よろしくお願いします」
「うん、よろしく、あ、自己紹介がまだだったね、僕はカーム、カーム ベーチェル、元冒険者で今はこの冒険者の学園クレンシスの教師だ」
「あ、僕は一純 夕凪です。よろしくお願いします」
「ともか 九薙です。よろしくお願いします」
「おや?クナギ?」
あ、私の名字に反応した。やっぱりこの世界でこの名字は珍しい、いや、珍しいどころか、私と悠にぃくらいしかいない、悠にぃはいろんな所で有名になってるみたいだし・・・あまり名字は名乗らないほうが良いかもしれないわね。
「あ~忘れてください、ともかです」
「・・・ふむ、まぁいいだろう、それじゃ2人ともよろしくな」
「「はい」」
冒険者達の学園で寄り道することになった。
イズミ君の為にも早く悠にぃを探さなきゃだけど、私がこの世界にもう一度来た理由が世界の救済なら、放っておいても悠にぃは私のところに来るかもしれない。
なんせ悠にぃには未来を予知する預言者の一族、夢見の民のレニィさんが付いているんだもん、きっと私の役割を果たす場に現れる。
そう考えると、イズミ君にはここで待っていてもらうほうが良いのかも知れないわね・・・