二章10話 撃墜、薙ぎ払う雷
イズミ君が『アースウォール』による防壁を築いた。これなら私達がやられても、街は暫く大丈夫ね、この空の魔物を全て撃墜できればだけど……
私は他に遠距離攻撃が出来る者や魔法使いらと協力して羽を持った魔物を撃ち落していく、矢には限りがあるので射撃魔法による攻撃なんだけど、私はそれほど魔力が高い訳ではない、消費の少ない魔法を中心に使い、魔物の羽を狙って中てていく。
運ばれている大型の魔物は魔法が効かないのでこの際無視する、大型の魔物を迎撃している者、エリス達に任せる。
実の所、私のように射撃魔法が使える人間は少ない、射撃魔法とは元々エルフ族に伝わる魔法で、存在自体を余り知られていないと言うのも有るのだけど……
つまり、今私以外に射撃魔法の使える者はいない。
この空の敵を撃ち落すということに関して言えば、射撃魔法はもの凄く効率が良いのだ。通常の魔法を使用する程度の魔力で対象を撃ち落せる。普通の魔法では少しとどかない分魔力を込める必要がある。
多分私の魔力が一番長く持つ……
「おい! そっちに落ちたぞ!」
ッ! 目の前、1メートル程しか離れていない地点に魔物が降って来た。
「雷牙!!」
思わず矢を取り雷牙を放つ、でも魔法って効かないんだったっけ?
「ガアァァァァ!!」
「効いた!?」
魔物は雷牙を間近で受けて吹っ飛んで行く、そうか、雷牙は魔力じゃなくって気とかよく分からない力で行使されている、だから魔法の効かないこの魔物にも効果があるんだ!
「これなら!!」
撃墜が終わったら私も殲滅に回れる。
とっとと片付けて私も大型の魔物の方を倒しに行こう。
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戦場を駆け一体一体魔物を倒していく、相手はアタシよりも遥かに体格の大きい、ダンプカー程の大きさの魔物、攻撃は受けられない、まともに当たれば間違い無く致命傷になるでしょう、でも……
「雷光石火!」
当たらなければ何の問題も無い!
魔物の攻撃は単調、腕を振り回す、噛み付く、体当たり……それらを雷光石火の高速で避け、相手の攻撃後の隙にこっちの攻撃を叩き込む。
一体ずつ倒して次に移る、これを繰り返していますが、アタシの攻撃力不足でしょうか? 一体を倒すのにかなりの時間を要します。
今のアタシは九薙の奥義に達していないため、師匠に見せてもらったあの奥義の威力は期待できません。なら……
「俺に教えられることはもう何も無い!後はお前自身でお前の九薙流を完成させろ!」
師匠の言葉が頭を過ぎります。
アタシの九薙を……
この世界に来てから考えていた1つをやってみることにしましょう。
「トモカさん、その雷を借ります」
「雷牙!」
側に落ちて来た魔物を九薙の技で吹き飛ばすトモカさんを見つけ駆け寄る、雷を一部刀で絡め取り鞘に納める……
雷も本当は自分で出すことが出来ればいいんですけどね、雷光石火をヒントに試してもなかなか上手く行かないので、今は仕方ありません。同じ九薙のトモカさんの雷で代用します。
そう言えば師匠もアタシは覚えが悪いって言ってましたね……
「九薙流『閃』、未完成版雷薙!!」
抜刀、一閃、鞘の中で増幅された雷を一息に魔物に放つ。
「薙ぎ払えぇぇ!!」
解き放たれた雷が魔物を薙ぎ払う、今までの攻撃では大きなダメージを与えられませんでしたけど、今回は違います。雷薙を喰らった魔物はその一撃で動かなくなる。
トモカさんの雷牙にも負けない、いや、それ以上の威力、未完成の状態でこれだけの威力があるなんて予想外です。
でも……
「予想以上に力を持っていかれますね、未完成版では多用は出来そうにありません」
トモカさんの雷牙が無ければ出来ないんですけどね。
っ! 来た! 今の一撃でアタシのことを危険と判断したのでしょうか? 近くに居た3体の魔物が一斉にアタシを目掛けて体当たりを仕掛けてきます。あんなのをまともに喰らったら只じゃ済みませんが……あの巨体で一斉に飛び掛られると、逃げ場が……
「うっるらあぁぁぁぁぁ!!」
「キャ!!」
アタシに向かって来ていた3体の魔物の内の1体が吹き飛んで行きました。アタシはその空いた場所から逃げる事が出来たのですが、先程までアタシの居た場所にいつの間にか銀髪の男の人が立っていました。
「危ない!!」
「おらあぁぁぁぁぁ!!」
その銀髪の男の人は迫る魔物を、サッカーボールでも蹴るような感じで蹴っ飛ばし、直ぐに次の魔物をぶっ飛ばしに行きました。
彼のおかげで魔物達は致命的な傷を負い、動きが鈍く攻撃をするのも避けるのも格段にやりやすくなりました。彼1人が不利な戦況をひっくり返したと言ってもいいでしょう。
終わりが見えてきました。もう少し頑張りましょう。
最後の1体が倒されホッと一息つく、雷薙の使い過ぎですね、アタシには既に技を出す力は残っていません、皆満身創痍、戦況をひっくり返した銀髪の男の人も力を使い果たしたのか? 倒れこんでいますね、一度終わったと気の緩んだ今、これ以上の戦闘は不可能でしょう……なのに。
フリージアに向かって進行してくる魔物の群、先程と同じ位の数が一度に攻めてきている、今のアタシ達に空が黒く染まる程の軍勢に立ち向かう力なんて……
「残っている訳が無い……」
こっちとは全く関係ないですけど、短編を書いてみました。
「機械仕掛けの前奏曲」よかったら読んでみてください。