二章9話 防衛 護る者、暴れる者
短め
劣勢、負傷者の数も増えどんどん追い込まれていく、死人が居ないことが唯一の救いだけど、それも時間の問題だろう……
「ゴーレム次はあっちの援護を!」
僕は自動で迎撃させていた2体のゴーレムに指示を出しながら戦場を走り回っている。
魔物の攻撃力が高すぎてゴーレムは次第に装甲を削られていく、僕の残った魔力はゴーレムを何度か造り直せば尽きるだろう、後は予め魔力を籠めておいた弾倉が数個、でも魔法の効かない魔物に魔銃は効かない、実質魔力が尽きれば僕に攻撃手段は無くなる、そうなるともうやられるしかない……でも、まだまだ敵は増えていくんだよね。
「ッ!!」
ゴーレムの1体が崩れる、攻撃を受けていたんじゃまた直ぐに壊される。
「ぶっつけ本番だけど仕方ない、頼む上手く行ってくれ!
巨人は我が意に従い姿を変える
その手に鋼の剣を持ち、この大地を護る者
汝、我に忠誠を誓いし大地の騎士! 『ゴーレムメイク・大地の騎士』」
残ったゴーレムも魔力に戻し改めて呼び出す。
今までの基本的な巨人型のゴーレムではなくもっと人に近い姿、鎧を纏い右手に大地から生成した鋼の剣左手に鋼の盾、術名の通り大地の騎士を2体造り上げた。
成功? この騎士型なら魔物の攻撃を避けながら戦える。
「行け!!」
剣は出来る限り硬くした。慣れてないから斬り裂く鋭い剣は出来なかったけど、叩き斬る丈夫さは十分有る筈だ。
2体の大地の騎士が駆ける、巨人型とは段違いのスピード、魔物の攻撃を避けながら順調に魔物を倒していく。
僕のゴーレムが削られる確率は格段に下がった。こならもう少し修復以外に魔力を回せる。
「なら! 『アースウォール』!」
死人を出さない為、防壁『アースウォール』で退路の無くなった者の避難場所、怪我人の退避場所を造る。
これで本当に僕の魔力はもう本当に残り僅かだ。
戦いながら怪我人の避難を促す。
避難場所で回復魔法の使える者の治療を受けた者が戦線に戻るため、戦況は少し持ち直す。ま、不味い状況なのには変わりないんだけどね。
そこに、戦況を覆す一石が投じられる。
今、自分の見ている光景が信じられない、近くに居た魔物の身体の一部が吹き飛んだんだ。
「な!いったい誰!?」
それを行った者に目を向ける、銀髪の男がサンドバックでも殴るような感じで魔物の身体を吹き飛ばしていた。
「んなことより!どんどん落とせ!俺の力が続いているうちに殲滅するぞ!!」
僕が驚き、上げた声が聞こえていたようだ。それにしてもこの力……
「時間制限付き!?」
長くは持たないようだ、この人が魔物に大ダメージを与え、そこを他の皆で叩き片付ける……次第に魔物の数は減っていく、僕はゴーレムを操りながら魔銃で空の魔物を撃ち落す方を手伝うことにする。
魔物の数も残り僅か、空の魔物は殲滅し終わりトモカさんたち、撃墜を担当していた者も地上戦に回っている。
少し離れたところでさっきの銀髪の人が倒れた……え? やられたのだろうか?
・・・大丈夫みたいだ、どうやらさっき言っていた能力の限界が来て倒れたようだ。
と言うことは、もうあの力には頼れない……と思ったら、男と入れ替わるように銀髪の女性が凄い力で魔物を叩き伏せ始めた。でも、あの人確か来賓席に居たような気が……どこかの国の姫様じゃなかったっけ?
ま、いいや、今の状況で魔物の動きを抑えてくれるのは有り難い、今のうちに1体ずつ確実にしとめていこう。
魔物の数も減り怪我人も回復魔法で徐々に戦線に復帰して行ってる今、状況は僕たちに有利な方に傾いている、もう少しだ、頑張ろう。
「嘘、でしょ?」
魔物の殲滅は無事終わった。怪我人はいるけど、それも回復魔法で治療中だ。
僕の魔力も底を尽きもう魔銃一発分も残っていない。トモカさんも魔力の限界なんだろう、途中から矢に切り替えていたみたいだし、その矢も残り数本といった所か……
僕ら3人の中でエリスだけは肩で息をしている程度、でも最後の方は殆んど技を使っていなかった。もう技を使う気力とかそういった類の物が尽きているんだろう。
そんな状態なのに、これは……
「無理ゲー過ぎるよ……」
『アースウォール』の防壁を背に空を見上げる。
今倒した魔物と同じぐらいの魔物の群が空を黒く染めていた。