二章8話 あれ?決勝は?
なんだ?決勝戦の試合開始と共にリングに1匹の獣が降り立った、当然普通の獣ではなく魔物の類だろう、体は巨大でリングの4分の1を占拠している。
最初は魔法使いが召喚でもしたのかと思ったけど様子がおかしい。
そう思ったいると獣が暴れだした。
「なんなんだ、強制イベントにしても唐突過ぎるよ!!」
リングには試合の参加者や、会場や来賓の護衛についていた騎士達が集まり魔物に対処している。
「イズミ君!上!!」
見ているだけって言う訳にも行かないから、僕たちも援護しようかと思っていたらトモカさんが空を見て叫ぶ。
上、そう言えば、今リングで暴れている魔物、上から降ってきたよね。
空には数十匹の羽を持った魔物、羽が有るって事は、こいつらが空から今リングで暴れている魔物を運んできたのか!?
羽の有る魔物は何処かに戻ろうとする、僕には魔物を1匹放り込んで終わりとは思えない、おそらく次を運んで来る気だ。
「トモカさん、落とすよ!!」
どうやらリングに降りた魔物には魔法が効かないようで、対処には苦労しているようだ。
だからこれ以上増えられる訳には行かない。
「あ、うん!!」
僕は直ぐに魔銃を抜き攻撃に移る。
「無に与えるは紅の戯れ
我銃口の前に張る陣は炎
姿を変えし魔弾は炎に至る」
「朱の欠片を番え弓を鳴らす
破壊の炎よ此処に集いて焼き払え!」
「『フレイムバレット』!」
「『フレイムアロー』!」
放たれた炎は魔物の羽を打ち抜き魔物を落下させる、落ちた所を僕らの行動に気付いた冒険者や騎士が止めを刺した。
羽の魔物はそれほど強くない様で魔法も効いた為直ぐに片付いた。でもリングではまだ巨大な魔物との戦闘が行われている。
「トモカさん、エリス、ちょっとじっとしててね・・・『アースウオォール』!」
羽の魔物が他に居ないか気になり、僕は周囲を確認する為2人と共に足元の地面を隆起させ数十メートルの高さまで上る。
「「な!!」」
「凄い数ですね・・・」
空から羽を持った魔物が大型の魔物をこの街に運んでくるのが見える、今ここで戦ってる一体でも大変なのにこれ以上増えられると不味いんじゃないかな・・・
「イズミ君!下ろして!!」
「う、うん!」
『アースウォール』を元に戻す。
「イズミ君はこのことを皆に伝えて!私は先にあいつらを落としに行く!エリスは・・・」
「アタシも行きます!」
トモカさんとエリスは地に着いた途端駆け出す、取り残された僕は、ナクル先生を発見したのでとりあえず今見たことを伝え、トモカさんたちを追った。
「『フレイムアロー』!」
「風薙!!」
街の外に着くと二人が次々羽の魔物を落としていた。
「でもこれは・・・」
羽の魔物は順調に落としていってるんだけど、不味いな・・・運ばれていた大型の魔物が問題だ。空から落とされたことで怪我を負い、多少機動力は落ちているけど魔物なんて大きいってだけで脅威だ。それが街に向かってゆっくりとだけど進んでいるんだ。
「こっちを止めないとだね、『ゴーレムメイク・大地の巨人』!」
僕に一度に造れるゴーレムは今の所2体、ぐずぐずしている暇は無いので2体共直ぐに造り上げる、いつもより大きく、魔物の大きさに合わせて大型のゴーレムを造り出す。
「止めるんだ!街に入れさせちゃいけない!」
ゴーレムに指示を出し魔物に向かわせる、魔物と組み合い押し返していくけど、魔物の攻撃で身を削られていく、ゴーレムの耐久力でもダメージを受けるのか!
「押し合いをする必要は無いよ、待ち上げて投げろ!」
結構魔力を込めて造っている、投げるための力は十分に備わっている筈だ、でもゴーレムも時間稼ぎにしかならないだろう他の手も考えなきゃ・・・
「イズミ君!もっとゴーレム出せないの!?」
「ごめん、2体が限界!
ナクル先生に伝えてから来たから直ぐ助けが来ると思う、それまで持ち堪えて!」
今の数なら2体のゴーレムで魔物を投げ返していれば、ゴーレムが壊れるまでは耐えられる。
「イズミさん、空をお願いします」
エリスがゴーレムとぶつかる前の魔物に突っ込んでいく。
「エリス!」
「大丈夫、怪我して動きの鈍っている魔物の攻撃じゃ、九薙の剣士には当たらない」
そうみたいだね、エリスは魔物の攻撃を避けながら僅かずつだけどダメージを与えていっている、でも焼け石に水、魔物の巨体はそれに見合う防御力を備えている。
空の魔物も街に入れるわけには行かない、迎撃しながら、今は耐えるしかないのかな?
「双薙!風薙!伍薙!」
空の魔物を射撃魔法で撃墜しながらエリスの様子を見る、技を遠慮無く使っているけど威力が足りないようだ。
うん、やっぱり耐えるしかないね。
問題は僕達が空の魔物を撃墜すると動ける大型の魔物が増えるてことなんだよね、でも落とさないわけにも行かない、結果地上の戦闘がきつくなって行く・・・
本当、早く助けが来ないと不味いね・・・ま、助けが来てもこの数を相手にできるかどうか分からないけど・・・
羽の魔物を撃ち落し、落ちた事で怪我した大型の魔物をエリスと僕の造ったゴーレムが攻撃して気を引く、でも直ぐに限界が来る。地上に落ちた大型の魔物の数がエリスとゴーレムだけじゃ対応できない数になった。
僕も加勢に?でもそうすると空が手薄になる、どうしたら!?
「大丈夫!援軍、来たよ!」
トモカさんも同じことを思っていたのだろうけど、街の方を窺いそう言って来た。
僕にはまだ見えないけどトモカさんの目はこっちに向かってくる援軍の存在を捉えた様だ。
そこからは順調に魔物を迎撃して行けた。
僕やトモカさんのように遠距離攻撃の可能な者と魔法使を使える者で羽の魔物を落として行った。その際大型の魔物には魔法が効かず、撃墜することは出来なかったけど、落下の際にダメージを負わせる事が出来、怪我で動きの鈍った魔物をエリスが援軍と共に倒して行った。
でもこれ、数が問題だよね・・・
「イズミ君!空はいいからエリスの援護を!」
羽の魔物はそれほど強くない、魔法一発で撃墜出来る位だ、撃墜の方はトモカさん達に任せ、言われた通りエリスの方の援護に向かおう。
今地上に居る大型の魔物の数は6、どれも怪我を負っているため少しずつダメージを与え確実に倒していっているけど・・・倒す速度より運ばれてくる魔物の数の方が多い。どんどん増えていく・・・
「『アースウォール』!エリス!避けて!」
5メートル位の地の壁を作り出す、一人で一体の魔物の相手をしていたエリスが魔物から離れたことを確認し、『アースウォール』を魔物に向け倒す。
よし!上手く潰せた、通常の魔法は効かなくても地属性ならほぼ物理攻撃だろう、そう思ってやってみたけど、上手く行った!
僕は教本に載っている様な攻撃魔法は使えないから『アースウォール』を倒して無理矢理攻撃するぐらいだけど・・・多用はできないね・・・
「イズミさん!」
「エリス!今のは多用出来無いけど、僕が魔物の動きを制限する!その間に皆で攻撃を!!」
再び『アースウォール』を使用する、『アースウォール』で魔物の四方に柱を形成する。
数度の攻撃で壊されるだろうけどしばらくは動きを抑えられるはずだ。
これで少し魔物を倒す速度が上がった、それでもまだ魔物が運ばれてくる速度の方が速い!
羽の魔物も大型の魔物も協力すれば倒せない相手じゃない、でも数が一向に減らない上に少しずつ増えて行く、状況は刻一刻と僕たちに不利な状況に傾いていく、僕達は段々と追い詰められて行った。
「なにか、手を打たないと・・・」
このままじゃ街まで攻め込まれる、何か、何か無いか!?
「駄目だこれぐらいしか思いつかない!!『アースウォール』!!」
魔力をおもいっきり持って行かれる、さすがに広範囲に頑丈な防壁を築くと魔力の消費が激しい。前にゴブリンの迎撃時に造った防壁よりも高く丈夫な物となると、僕の魔力はもう殆んど残っていない。
でも、これで魔物が街に入る事は防げた、後は僕らが魔物を殲滅するだけ・・・
「退路を断っちゃったから、倒すしかなくなったんだけどね・・・」
さぁ、ここからが本番だ、僕の魔力はもう殆んど無いけど・・・何とかやるしかない。